豊川市が発注するJR東海(東海旅客鉄道)管理線路の跨線橋点検業務の入札をめぐり、独占禁止法に違反する行為があったとして、市が日本交通技術名古屋支店など3社を指名停止としていることが、市と公正取引委員会の公表資料から分かった。
公取委が認定したのは、入札参加業者だけによる受注調整ではない。JR東海が点検予定の跨線橋などを記載した「点検リスト」を5社に提供し、各社から受注希望を集めるなどして受注予定者を決定。受注予定者以外の会社は入札を辞退したり、予定者より高い価格を提示したりすることで受注に協力していたとされる。
豊川市、3社を指名停止
豊川市が公表した「建設工事請負等の契約に係る指名停止措置状況」によると、市が発注するJR東海管理線路の跨線橋点検業務をめぐって指名停止となったのは、日本交通技術名古屋支店、トーニチコンサルタント中部支社、ジェイアール東海コンサルタンツの3社。
日本交通技術名古屋支店は2026年1月19日から2027年1月18日までの12カ月。トーニチコンサルタント中部支社とジェイアール東海コンサルタンツは、2026年1月19日から同年7月18日までの6カ月となっている。
市はいずれも、豊川市が発注する跨線橋点検業務の入札で独占禁止法に違反する行為を行い、2025年12月19日に公取委から排除措置命令や課徴金納付命令を受けたことを処分理由としている。
なぜ「12カ月」と「6カ月」に分かれたのか
日本交通技術の措置は、豊川市の指名停止措置要綱「別表第2中4号(独占禁止法違反行為)」に基づく。
一方、トーニチコンサルタントとジェイアール東海コンサルタンツには、同じ独占禁止法違反行為に加えて、要綱第5条第3項が適用されている。
第5条第3項では、事業者について「情状酌量すべき特別の事由」があり、通常の指名停止期間より短くする必要がある場合、基準となる短期の2分の1まで短縮できるとしている。
このため2社は6カ月となったが、市が今回、具体的に何を「情状酌量すべき特別の事由」と判断したのかについては、公表資料では詳細が示されていない。
なお、公取委資料では、ジェイアール東海コンサルタンツとトーニチコンサルタントはいずれも課徴金減免制度の適用を受けている。ただし、これが豊川市による指名停止期間短縮の直接の理由だったかどうかは、市の公表資料だけでは確認できない。
JR東海が「点検リスト」 希望する橋にイニシャル
公取委によると、日本交通技術、ジェイアール東海コンサルタンツ、大日コンサルタント、トーニチコンサルタント、丸栄調査設計の5社とJR東海は、遅くとも2021年2月19日以降、対象となる跨線橋点検等業務について受注予定者を決め、予定された会社が受注できるようにする行為を行っていた。
その方法は具体的だった。
公取委の認定では、JR東海が5社に「点検リスト」を提供。そこには、点検予定の跨線橋の名称や、業務を発注する自治体などが記載されていた。
5社は受注を希望する跨線橋に対応する欄へ自社のイニシャルを記載して返送するなどして、希望する案件をJR東海に伝えていた。
JR東海は各社の希望を取りまとめ、その内容を反映した点検リストを5社へ提供するなどして、受注予定者を決定していたとされる。
辞退、不参加、高い価格を提示
受注予定者が決まった後は、その会社自身が提示する入札価格や見積価格を決定。
それ以外の会社は、競争入札などに参加しない、入札を辞退する、あるいは受注予定者が設定した価格より高い価格を提示することで、予定された会社が受注できるようにしていたと公取委は認定している。
公取委の排除措置命令書には、こうした方法によって5社が対象となる跨線橋点検等業務の「ほとんど全て」を受注していたと記載されている。
公取委は2024年10月22日に立入検査を実施。同委員会は、この日以降、受注予定者を決定し、その会社が受注できるようにする行為は取りやめられていると認定した。
豊川だけではない 東三河4市が対象に
公取委の排除措置命令書では、対象となる「特定地方公共団体等」として44の自治体や団体、企業などを列挙している。
その中には豊川市だけでなく、東三河の豊橋市、蒲郡市、新城市も含まれている。
対象となったのは、これらの自治体などが一般競争入札、指名競争入札または見積り合わせによって発注した、JR東海の東海鉄道事業本部(静岡支社管内を除く)が管理する線路を跨ぐ橋の点検業務など。
ただし、命令書の別表に自治体名が記載されていることだけから、その自治体が発注した個々の入札すべてについて違反行為が行われたと判断することはできない。個別案件については、それぞれの入札記録などとの照合が必要となる。
5社に課徴金1億225万円
公取委が5社に命じた課徴金は、日本交通技術が3709万円、ジェイアール東海コンサルタンツが3477万円、大日コンサルタントが1359万円、トーニチコンサルタントが918万円、丸栄調査設計が762万円。総額は1億225万円となった。
納付期限は2026年7月21日。
JR東海も独占禁止法違反として排除措置命令の対象となっているが、対象業務を受注しておらず、違反行為に係る実行期間中の売上額がなかったため、課徴金納付命令の対象にはなっていない。
指名停止中は随意契約も原則できず
豊川市の指名停止措置要綱では、指名停止となった事業者を新たに指名することはできず、すでに指名している場合には取り消すとしている。
落札者となっていても、契約締結前に指名停止となれば落札決定を取り消す。
また、地方自治法施行令に定める一定の例外を除き、指名停止期間中の事業者を随意契約の相手方とすることもできない。市の契約の一部を下請け、または受託させることについても承認できないとしている。
さらに、指名停止の理由が豊川市自身の発注した契約に関する場合、市長は必要に応じて事業者から改善措置の報告を求めることができる。
公取委も今回の排除措置命令で、6社に対して再発防止措置などを対象となった地方公共団体などへ通知するよう命じている。
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