台風25号による記録的な大雨の影響で、千葉県北部の北印旛沼で堤防が決壊し、成田市や栄町などで住宅や農地への浸水被害が広がった。
水資源機構によると、印旛沼の堤防が決壊したのは1968年の管理開始以降初めて。22日午前4時半ごろには、佐倉市の水位計で5.04メートルを観測し、管理開始後の最高水位となった。
大雨のピークを過ぎたあとも周辺河川から水が流れ込み続けたことで、水位が高い状態が長時間続いたとみられている。台風通過後に被害が拡大する、いわば「時差」のある災害となった。
北印旛沼で2カ所決壊 幅はいずれも約100メートル
決壊が確認されたのは22日朝。
北印旛沼では2カ所で堤防が切れ、いずれも決壊幅は約100メートルとされる。
23日午後、上空からは濁った水が田んぼや住宅地へ広がり、道路や農地が広範囲に冠水している様子が確認された。
農業関係団体から連絡を受け、県や関係機関が現地を確認したという。
現時点で、この堤防決壊そのものによる人的被害は確認されていないとされるが、住宅や農業、養殖業への被害は広がっている。
水位5.04メートル 計画高水位を大幅に上回る
22日午前4時半ごろ、佐倉市の水位計では5.04メートルを観測した。
印旛沼の計画高水位は4.25メートルで、ピーク時にはこれを約80センチ上回った。
東京理科大学の二瓶泰雄教授は、高い水位が少なくとも1日以上続いたことが、堤防に大きな負荷を与えた可能性を指摘している。
過去の大雨でも計画高水位を上回ったことはあったが、堤防は決壊しなかった。今回は水位の高さに加え、高水位が長時間続いたことが特徴となった。
台風前から予備排水 それでも追いつかず
水資源機構は台風の接近を前に、17日から印旛沼の水位を下げる予備排水を実施していた。
さらに水位が上がった20日夜からは、利根川や東京湾方向へポンプを使った排水を続けていた。
それでも水位上昇を抑え切れなかった。
関係機関は、台風25号による大量の雨に加え、それ以前から続いた雨によって流域の土壌に多くの水分が残っていたことも影響した可能性があるとみている。
高崎川氾濫 周辺河川から流入続く
決壊の背景には、印旛沼そのものへの雨だけでなく、周辺河川からの流入もあった。
21日には高崎川が氾濫し、佐倉市の一部で警戒レベル5の「緊急安全確保」が出された。
台風が通過したあとも河川から印旛沼への流入は続いた。
印旛沼から外へ水を排出していても、それ以上の水が流れ込めば水位はすぐには下がらない。
今回の被害は、大雨のピークが過ぎても水害の危険が残り続けることを改めて示した。
「床下くらい」と避難 戻ると家が水に
浸水地域では、決壊が判明した直後より、その後に水位が上昇した場所もあった。
成田市の女性は22日朝、近所から「決壊した」と連絡を受けたものの、その時点では周辺の水位が低かったため、「床下くらいだろう」と考えて一度息子の家へ避難したという。
しかし戻った時には自宅が水につかっていた。
別の住宅では座敷やリビングまで浸水し、冠水した道路のため外出できず、家族が食料などを届ける状況もあった。
「雨がやんだ」「台風が離れた」という時間と、実際に浸水が拡大する時間にずれがあったことが、今回の被害の大きな特徴となった。
田んぼ、道路、養魚場にも被害
浸水は住宅だけでなく、農地や地域産業にも及んだ。
栄町などでは田んぼが広範囲に水没し、道路の損傷やガードレールの破損も確認されている。
成田市内の養魚場では、浸水によって錦鯉など約10万匹が流出したと報じられている。事業者は被害額が約10億円規模に達する可能性を見込んでいるが、現段階での試算であり、確定した金額ではない。
別の養魚施設でも機械設備が水没し、数千万円規模の被害になる可能性があるとされる。
同じ印旛沼周辺でも施設によって被害内容は異なっており、地域全体の被害額が確定するまでには時間がかかるとみられる。
23日夕方も水位4メートル超
23日午後4時40分時点で、北印旛沼の水位は4.06メートルだった。
ピークの5.04メートルからは低下したものの、この時期の平常水位とされる約2.3メートルを大幅に上回っている。
決壊していない堤防にも大量の水が染み込んでいる可能性があり、専門家は追加の雨によって別の場所で損傷が起きる危険にも注意を促している。
水位が下がり始めたからといって、周辺へ不用意に近づける状況ではない。
国のTEC-FORCEも現地入り 復旧時期は未定
千葉県は堤防の復旧に向けて国へ支援を要請した。
国土交通省の緊急災害対策派遣隊「TEC-FORCE」も現地に入り、排水や応急復旧に向けた対応が進められている。
ただ、周辺では依然として高い水位が続き、冠水地域も残っている。
完全な復旧時期は現時点で決まっていない。
管理開始から58年で初の決壊
印旛沼は農業用水や水道用水、工業用水の供給だけでなく、洪水対策のため長年にわたり水位管理が続けられてきた。
現在の管理体制が始まったのは1968年。
それから58年となる2026年、初めて堤防決壊が確認された。
排水施設や事前の水位調整を行っていても、記録的な降雨と周辺河川からの流入が重なれば、水位上昇を完全には抑えられないことが今回の災害で示された。
編集部まとめ
台風25号による大雨で北印旛沼の堤防2カ所が決壊し、成田市や栄町などで住宅、道路、農地への浸水が広がった。堤防の決壊は1968年の管理開始後初めてとされる。
22日早朝には水位5.04メートルを観測。台風通過後も周辺河川から水が流れ込み続け、高い水位が長時間続いたことが被害拡大の背景にある。
23日夕方も水位は平常時を大幅に上回っており、国と県が排水と応急復旧を進めている。完全な復旧時期は決まっておらず、追加の雨や新たな堤防損傷への警戒も続く。
週刊TAKAPI 編集部
特記事項
この記事は2026年9月23日夜までに確認された水資源機構、千葉県、国土交通省などの公表内容と現地報道をもとに構成しています。
印旛沼の堤防決壊による人的被害は現時点で確認されていません。台風25号全体による死者・行方不明者とは区別しています。
避難者数、農業・養殖業の被害額、流出した魚の数などは確認時点や事業者の見込みを含み、今後更新される可能性があります。

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