法律はある、それでも子どもは守られない――「疑いで動け」から13年、学校と文科省は何をしてきたのか

いじめを受けた子どもが学校へ行けなくなる。

保護者は学校へ訴える。何が起きたのかを説明し、メールやLINEを保存し、欠席日数を数え、場合によっては診断書を取り、学校や教育委員会との面談を重ねる。

その過程で、保護者自身が「いじめ防止対策推進法」や文部科学省の重大事態ガイドラインを読み込み、「これは重大事態ではないのか」と学校側に訴えるケースもある。

だが、本来これは誰の仕事なのか。

重大事態制度は、被害児童生徒やその保護者に、いじめの存在を完成された形で証明させるための制度ではない。

文科省のガイドラインは、生命、心身、財産への重大な被害や、不登校を余儀なくされている「疑い」が生じた段階から重大事態として扱うことを求めている。

それでも、学校や教育委員会の対応が遅れたとして、後に第三者委員会や自治体自身から問題を指摘される事例はなくならない。

一方、文科省は繰り返し通知を出し、ガイドラインを改訂し、「対応の徹底」を求め続けている。

それで十分なのか。

週刊TAKAPIの調べによると、文科省自身が公表した全国統計や自治体の重大事態調査報告書を追うと、問題は単純な「いじめの見落とし」だけではない。

学校がいじめを認知した後、本当に組織として動いたのか。

そして国は、通知を発出した後、本当に現場が変わったのかまで確認しているのか。

連載「いじめ重大事態を追う」第2回では、被害児童生徒と保護者の側から、学校、教育委員会、そして文部科学省の対応を検証する。

重大事態の65.1%、学校はすでに「いじめ」と認知していた

文科省の訂正後の公表値によると、令和6年度に発生したいじめ重大事態は1,404件だった。

このうち、重大な被害を把握する以前から学校側が「いじめとして認知していた」事案は、914件、65.1%に上る。

その内訳を見ると、844件は「解消に向けて取組中」、70件はすでに「解消した」と判断されていた事案だった。

この数字は重い。

重大事態のおよそ3件に2件では、学校側が重大な被害を把握する以前から、すでに「いじめ」と認知していたことになる。

つまり、重大事態を巡る問題を、

「学校がいじめに気付けなかった」

だけで説明することはできない。

認知した。その後、何をしたのか。

被害児童生徒の安全をどう確保したのか。

加害側への対応は十分だったのか。

学校いじめ対策組織で情報を共有したのか。

保護者に説明したのか。

教育委員会へ報告したのか。

そして、重大な被害の疑いが生じた段階で「重大事態」として動いたのか。

単に認知件数を増やすだけでは、子どもを重大事態から守ったことにはならない。

未認知490件、そのうち206件では「情報」があった

一方、重大な被害を把握する以前に「いじめとして認知していなかった」ものは490件、34.9%だった。

ただし、この490件をすべて「学校が何も知らなかった事案」と考えるのも正確ではない。

文科省資料によると、このうち206件では「いじめに該当し得るトラブル等の情報があった」。

そうした情報自体がなかったものは284件だった。

つまり、一部では学校側に何らかの情報が入っていたにもかかわらず、重大な被害を把握する以前には「いじめとして認知」されていなかった。

ここで重要なのは、「先生が知っていたかどうか」だけではない。

担任が知った。

学年主任へ報告した。

管理職へ上げた。

学校いじめ対策組織で共有した。

教育委員会へ報告した。

重大事態として設置者や首長へ報告した。

これらはすべて別の段階だ。

情報が学校内のどこかに存在していても、そこで止まれば、被害児童生徒にとって必要な支援につながらない可能性がある。

「把握していた」と「組織として動いた」は同じではない。

この違いを、重大事態の数字は見えにくくしている。