愛知県蒲郡市の県立三谷水産高校の生徒らが、豊橋市の汐川干潟で行っているニホンウナギの調査で、黄色い体に黒っぽいまだら模様が入った珍しい個体、通称「バナナウナギ」を捕獲した。
バナナウナギは、色彩変異によって熟したバナナのような黄色と黒の模様を持つニホンウナギの通称。出現する割合は数万~10万匹に1匹程度ともいわれている。伊勢シーパラダイスも、色彩変異のバナナウナギについて「10万匹~数万匹に一匹」と紹介している。
今回注目されるのは、珍しい体色だけではない。産卵に向かう段階まで成長したとみられる個体である点だ。目立つ体色を持ちながら自然界で成長を続けてきたとすれば、極めて興味深い発見となる。
「バナナウナギ」とは?黄色と黒のまだら模様
一般的なニホンウナギは背側が黒褐色系だが、「バナナウナギ」と呼ばれる個体は、黄色を基調に黒いまだら模様が現れる。
独立した「バナナウナギ」という種類が存在するわけではなく、ニホンウナギにみられる珍しい色彩変異だ。
過去には千葉県でも黄色と黒のまだら模様を持つ個体が捕獲され、「10万匹に1匹」と報じられた例がある。近年も島根県や青森県などで同様の個体が確認されている。
ただし、「10万分の1」という数字について厳密な全国個体群の統計に基づく発生確率とまでは今回確認できなかった。このため週刊TAKAPIでは、「約10万匹に1匹ともいわれる」として扱う。
なぜ産卵を控える段階まで生き残ったことが珍しいのか
黄色い体は、人間にとっては目を引く美しい特徴だが、自然界では必ずしも有利とは限らない。
通常とは異なる目立つ体色の場合、捕食者から発見されやすくなる可能性が指摘されている。一方、ウナギは夜行性で物陰などに隠れる習性があり、過去に大型のバナナウナギが確認された際には、こうした習性が成長まで生き残れた一因ではないかとの専門家の分析も報じられている。
今回の個体が産卵に向かう「銀ウナギ」の段階にあることが専門的な観察で確認されているのであれば、「希少な色彩変異の個体が、産卵回遊に向かう段階まで自然界で生き残った」という二重の意味で注目される。
汐川干潟は天然ウナギ研究のフィールド
今回の舞台となった汐川干潟では、以前から天然ニホンウナギのモニタリングが続けられている。
2020年には「豊橋市天然うなぎ資源保護再生プロジェクト協議会」が、伝統漁法を応用した「石倉かご」を使った生息調査を実施。三谷水産高校が蒲郡市の西田川で行っていた調査をきっかけとして、豊橋でも取り組みが始まった。
現在も三谷水産高校は調査に関わっており、2025年11月の調査では、同校と桜丘高校の生徒が汐川干潟でモニタリングを実施。採捕したウナギ19個体のうち8個体が再捕獲、さらに銀化個体2個体が確認されている。個体を測定・標識した後に再放流し、干潟でウナギがどのように成長・変態していくのかを継続的に調べている。
単なる「珍しいウナギが見つかった」という話だけではなく、長期間続けてきた地域のモニタリング調査だからこそ得られた発見として見る必要がありそうだ。
三谷水産高校はウナギの研究にも力 愛知県唯一の水産高校
三谷水産高校は蒲郡市にある県立高校で、愛知県唯一の水産高校として海洋・水産分野の専門教育を行っている。
ウナギとの関わりも深い。
天然ウナギのモニタリングだけでなく、過去には生徒がニホンウナギの完全養殖を目指した研究にも挑戦。2019年には海洋資源科の生徒らが、親ウナギから得た卵をふ化させ、シラスウナギまで育てることを目標とした研究に取り組んでいた。
2026年3月の日本水産学会の高校生研究発表プログラムでも、三谷水産高校の生徒による「ニホンウナギふ化仔魚育成への挑戦」が発表されている。
今回のバナナウナギの発見は、こうした学校の継続的なウナギ研究の延長線上にある。
実は朝倉未来さんが在籍した高校としても知られる
三谷水産高校には、もう一つ全国的に知られる意外な接点がある。
総合格闘家の朝倉未来さんが高校時代に在籍していた学校だ。
東愛知新聞は朝倉さんの経歴を紹介した記事で、朝倉さんが県立三谷水産高校に在籍し、その後退学処分となったと報じている。格闘家として全国的な知名度を持つ朝倉さんがかつて通った学校で、現在の高校生たちが地域の自然環境と向き合い、全国的にも珍しいウナギを発見したことになる。
「珍しい」で終わらない発見 汐川干潟の環境を知る手掛かりに
今回の発見は、黄色い珍しいウナギという話題性だけでも目を引く。
しかし、より重要なのは、三谷水産高校をはじめとする地域の学校や研究者、行政、関係団体が天然ウナギの生息状況を継続して追跡してきたことだ。
汐川干潟では、同じ個体を再び捕獲する「再捕獲」や銀化個体も確認されており、天然ウナギが干潟をどのように利用しているのかを知るデータが積み重なりつつある。
約10万匹に1匹ともいわれる「バナナウナギ」。
その一匹が東三河の汐川干潟で確認されたことは、地域の豊かな生態系と、長年続けられてきた調査活動の双方に改めて目を向けるきっかけになりそうだ。
※「約10万匹に1匹」は過去の水族館・報道等で紹介されている目安であり、全国のニホンウナギ個体群を対象とした厳密な発生確率として確認された数値ではありません。また、今回捕獲された個体の詳細な判定については、調査主体による正式発表を優先します。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
独立メディアだからこそできる、忖度しない報道を。

コメント
0件まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか。
この記事のコメント投稿は締め切られています。