東京都千代田区の学校法人暁星学園は、2025年7月にフランス・カンヌで行われたフランス語語学研修中に高校1年の生徒が亡くなった事故について、詳細調査委員会がまとめた65ページの報告書全文を公表しました。
事故当日、研修に参加していた生徒20人のうち17人が海水浴に参加し、引率教員は2人でした。
報告書は、当時の海が遊泳には危険性の高い自然条件だったと評価。そのうえで、引率教員が海の危険性を十分に認識せず、遊泳範囲や沖の浮き島へ向かうかどうかなどの判断を生徒側に委ねる結果になったと指摘しています。
しかし、事故原因は2人の引率教員の判断だけに限定されていません。
過去の研修で起きたトラブルやヒヤリハットが体系的に共有されていなかったこと、危険を予測して事故を防ぐ意識が十分に形成されていなかったこと、さらに学校全体で安全管理を統括する体制が不十分だったことも事故の背景として指摘されました。
事故当時、暁星高校では学校安全計画が策定されておらず、危機管理マニュアルも十分ではなかったとされています。
学園側は今回の公表にあたり、「本法人の危機管理意識、危機管理体制が不十分だった」と認め、「本件事故は本法人に全ての責任がございます」としています。
2025年7月21日 生徒17人が海水浴へ
事故が起きたのは2025年7月21日です。
フランス語語学研修には生徒20人が参加していました。
事故当日の夕方、体調不良などで学生寮に残った3人を除く17人が海水浴に向かいました。
報告書によると、引率教員は生徒に対し、海水浴に参加したい生徒だけが参加し、疲れている場合は寮で休んでもよいと説明していました。
また、無理をしないよう注意もしていました。
しかし、実際に海へ入った後の安全管理について、詳細調査委員会は複数の問題を指摘しています。
風速7メートル、波高0.7メートル 遊泳には危険性の高い状況
詳細調査委員会が確認した気象データでは、事故当日の午後5時ごろ、現場付近の風速は毎秒7メートル、瞬間風速は毎秒11メートルでした。
波高は0.7メートル、有義波高は0.9メートル。
さらに沖合から斜めにカンヌ市街地側へ向かう強い潮の流れも生じていました。
現場にはライフセーバーや監視員も配置されていませんでした。
報告書は、こうした自然条件などを踏まえ、当時のビーチは遊泳には危険性が高く、管理者によっては遊泳禁止と判断しても不自然ではない状況だったと評価しています。
沖の浮き島まで少なくとも約50メートル 足が着かない区間も
生徒の一部は、沖合に設置されていた浮き島を目指しました。
報告書によると、波打ち際から浮き島までは少なくとも約50メートルあり、60メートルを超えていた可能性もあります。
岸から約10メートル進むと水深はおよそ2メートルとなり、浮き島へ向かう場合、約40メートルにわたって足が着かない状態で泳ぐ必要がありました。
浮き島を目指したのは11人。
このうち5人は往復できた一方、4人は危険を感じて途中で引き返し、別の1人は溺れかけました。
亡くなった生徒は、浮き島へ向かう途中で溺れたと報告書は整理しています。
別の生徒も溺れかける 周囲にいた人が救助
事故当時、危険な状態になったのは亡くなった生徒だけではありませんでした。
報告書によると、別の生徒も浮き島から岸へ戻る途中、強い潮の流れによって進行方向から外れ、波をかぶって何度も水を飲み、砂浜へ戻れない状態になりました。
この生徒は助けを求め、周囲にいた人たちによって救助されています。
ほかにも複数の生徒が、浮き島へ向かう途中や帰る際に危険を感じたとされています。
詳細調査委員会は、当時の波や潮流、足が着かない水深などが重なり、高い溺水リスクが存在していたと判断しました。
「浮き島へ行くか」を生徒側に委ねる結果
なぜ、こうした海況の中で生徒が沖の浮き島を目指すことになったのでしょうか。
報告書は、引率教員2人が当時の海の危険性を十分に認識していなかったとしています。
遊泳可能な範囲を明確に限定せず、それぞれの生徒の泳力や海で泳いだ経験も十分に確認しないまま、浮き島へ行くかどうかの判断を生徒側に委ねる結果になりました。
亡くなった生徒には一定の泳力があったとみられています。
しかし報告書は、プールで泳げることと、波や潮流がある海で安全に泳げることは別だと指摘しています。
亡くなった生徒についても、厳しい自然条件の海で泳いだ経験は確認されていませんでした。
