市内8か所に約3万2,000トン 市は「廃棄物と判断できない」、議会で問われた説明責任
愛知県豊橋市内の8か所に、約3万2,000トンのプラスチック梱包体が野積みされている問題で、市による住民説明会の開催を求める声に対し、長坂尚登市長が「環境部長が答弁したとおり」と回答していたことが、2026年6月の豊橋市議会での一般質問から分かった。
市は、事業者が保管する梱包体について、現時点では廃棄物と判断できないとの立場を維持している。
一方、住民側は、長期間にわたる野積みや悪臭、飛散、崩落などへの不安を訴えており、市自身による説明を求めている。
議会では、事業者の説明責任と、市が廃棄物該当性を判断する行政機関としての説明責任が問われた。
住民100人超が参加した説明会 市による説明を求める声
2026年5月9日、住民団体「野積み廃プラから町民を守る会」は、豊橋市西山町で住民説明会を開催した。
説明会には100人を超える住民らが参加。環境問題に詳しい名古屋E&J法律事務所の籠橋隆明弁護士が、野積みの現状や廃棄物該当性、市による調査の必要性について説明した。
住民側が問題視しているのは、プラスチック梱包体が長期間にわたって保管され、量が増加してきたことだ。
また、5月26日には西山町の保管場所で梱包体の一部が崩落。プラスチックなどが道路側にはみ出す事態も発生した。
市は現地確認後、事業者に撤去や点検を指示し、翌朝には道路や水路に散乱したものが撤去されていたことを確認したと説明している。
こうした状況を受け、住民団体は市に対して調査や行政対応を求めるとともに、市自身による住民説明会の開催も要望していた。
山田隆司議員「市の答弁内容について説明を求めている」
6月8日の豊橋市議会一般質問では、豊橋維新の会の山田隆司議員が、市による住民説明会の開催について質問した。
山田議員は、住民団体が開催した説明会で市主催の説明会を求める声が多数あったことを紹介し、市として開催する意向があるかを尋ねた。
これに対し環境部長は、次のように答弁した。
「事業活動の説明は事業者がすべきものと考えておりますので、市が説明会を開催するような事案ではありません」
山田議員は、住民が求めている説明は事業者の事業活動についてだけではないと指摘した。
市が約3万2,000トンの梱包体について「廃棄物と判断できない」としていること、その判断に至った理由について、市民は説明を求めているという趣旨の再質問を行った。
しかし、環境部長は再び、事業活動の説明は事業者が行うべきであり、市が説明会を開催する事案ではないとの認識を示した。
長坂市長に直接質問 「部長答弁のとおり」
環境部長との質疑を終えた山田議員は、長坂尚登市長に直接質問した。
まず、環境省に相談する意思や、外部有識者を交えた第三者委員会を設置する意思があるかを尋ねた。
これに対して長坂市長は、
「これまで環境部長が答弁したとおりです」
と回答した。
続いて山田議員は、市による住民説明会の開催を前向きに検討する考えがあるか、改めて市長に質問した。
長坂市長は、
「住民向け説明会についても先ほど環境部長が答弁したとおりです」
と答えた。
市長は環境部長の説明を踏襲し、市主催の説明会を開催するという新たな方針は示さなかった。
一方、環境省への相談については、環境部長が必要に応じて相談や助言を求める可能性に言及しており、市が相談そのものを否定したわけではない。
市は「廃棄物と判断できない」 判断根拠も議会で争点に
今回の議会で問われたのは、住民説明会の開催だけではない。
山田議員は、野積みされたプラスチック梱包体が廃棄物なのか、有価物なのかという判断の根拠についても追及した。
環境部長は、事業者から売買契約書や納品書などの提示を受けていること、事業者が再利用を目的とした事業計画を説明していることなどを挙げ、現時点では廃棄物と判断できないとの認識を示した。
その一方で、搬出の状況については2020年5月以来確認できていないとの答弁があった。
さらに、事業者名、売買契約の相手方、具体的な事業計画などについては、個別の事業活動に関する情報であるとして回答を控えた。
山田議員は、明確に有価物と判断できる根拠が示されていないと批判し、迅速な調査を求めた。
ただし、廃棄物該当性は、物の性状、排出状況、通常の取扱い形態、取引価値、占有者の意思などを総合して判断するものであり、長期保管や搬出実績の乏しさだけで直ちに廃棄物と確定するものではない。
市は年間53回巡視 「何もしていない」わけではない
別の一般質問では、市の調査・指導実績も明らかになっている。
市によると、2025年度には環境部門が53回の巡視、20回の立入調査、10回の行政指導を実施した。
また、消防部門でも13回の立入検査を行い、火災予防上の管理方法について指導している。
市は現行法令の範囲内で必要な対応を行っているとの立場だ。
そのため、市が全く調査や指導を実施していないというわけではない。
一方、伊藤哲朗議員の一般質問では、梱包体について科学的な分析をこれまで実施していないことも明らかになった。
市が実施してきた調査の内容と、住民側が求める調査・説明との間には、なお隔たりがある。
10月には住民側が行政処分を求める申出書を提出
問題は6月議会後も続いている。
10月9日、住民団体は弁護士とともに、行政手続法に基づく処分などを求める申出書を豊橋市に提出した。
住民側は、梱包体の取引実態や再資源化事業の実現性について調査を求め、廃棄物処理法に基づく行政処分を求めている。
また、状況が改善されなければ、事業者に対する刑事告発なども検討する方針を明らかにした。
一方、事業者側は、梱包体を油化するための原料と説明しており、油化装置の開発が計画より遅れていることを認めている。
10月15日の東海テレビの取材に対しても、事業者側は再資源化を目指す方針を説明した。
現時点で、事業者の主張する有価物としての利用可能性と、住民側が訴える廃棄物該当性について、見解の隔たりは埋まっていない。
市が説明すべきなのは「事業内容」だけなのか
民間事業者が自らの事業活動や周辺環境への影響について住民に説明することは重要だ。
一方、廃棄物該当性を判断し、必要に応じて行政権限を行使する立場にある市が、その判断根拠をどのように市民へ説明するのかは、別の論点である。
市が住民説明会を開催する法的義務があると直ちに断定することはできない。しかし、開催義務の有無と、市民への説明機会を設けることの是非も区別して考える必要がある。
約3万2,000トンのプラスチック梱包体が市内各地に保管され、崩落も発生しているなか、住民が求めるのは、現状の説明だけではなく、今後の見通しでもある。
市がどのような資料に基づいて判断し、どのような条件がそろえば対応を変更するのか。
そして、住民に対する説明を今後どのような形で行うのか。
長坂市政の対応は、引き続き検証が必要だ。
読者向けQ&A
取材・資料確認日: 2026年10月19日
記事更新日: 2026年10月19日
取材資料: 豊橋市議会2026年6月定例会一般質問、関連報道
担当記者: 週刊TAKAPI編集部
※議会発言は提供された動画の文字起こしに基づいて整理しています。
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