愛知県豊橋市の豊橋総合動植物公園「のんほいパーク」で検討されている入園料の引き上げについて、週刊TAKAPIは市の担当者に取材を行った。
市が示した料金改定案では、大人の入園料を現行の600円から900円へ50%引き上げるほか、豊橋市内在住の70歳以上の入園料も100円から400円へ4倍とする。
市の担当者は取材に対し、料金改定によって入園料や駐車場料金などの収入を、2025年度(令和7年度)と比較して約1.5倍に増やすことを想定していると説明した。
一方、増収分を動物の飼育環境改善や施設整備などにどの程度配分するかについては、現段階で具体的な金額や優先順位を決めていないことも明らかになった。
なお、料金改定は現時点では市当局の提案段階であり、正式決定ではない。実施には2027年3月の市議会で条例改正案が可決される必要がある。
のんほいパークの入園料はなぜ900円に?市が説明した値上げの理由
動物園の役割が変化、教育や絶滅危惧種の保全にも費用
今回の料金改定について、市の担当者は動物園が担う役割の変化を理由に挙げた。
従来の動物園は、珍しい動物を観察するレクリエーション施設としての役割が中心だった。しかし現在では、動物の生態や生息環境について学ぶ教育普及活動、絶滅危惧種の繁殖・保全活動なども重要な役割になっているという。
さらに、動物の習性や生態に適した飼育施設を整備するため、今後も継続的な投資が必要になると説明した。
市は料金改定によって得られる収入をこうした活動に活用し、施設の魅力を高めることで来園者の増加につなげたい考えだ。
なぜ1000円ではなく900円なのか
週刊TAKAPIは、料金を900円に設定した具体的な根拠について質問した。
担当者によると、名古屋市の東山動植物園をはじめ、近隣や国内の動物園で実施された料金改定を参考にしたという。
また、動物園の運営には税金が投入されているため、公費負担の割合を引き下げることも料金設定の理由とした。
ただし、900円という金額を算出するための詳細な計算式や、他施設との比較資料については、今回の取材で具体的な説明は得られなかった。
入園料・駐車場収入は約1.5倍に 年間105万人の来園を想定
現在の収入約5億6300万円から約8億4450万円へ
今回の取材で明らかになった重要な数字が、料金改定後の収入見込みだ。
市の担当者は、2025年度の入園料や駐車場料金などの収入について、概算で約5億6300万円と説明した。
料金改定後は、これを約1.5倍に増やすことを想定しているという。
取材で示された概算額を基に単純計算すると、次のようになる。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 2025年度の料金収入 | 約5億6300万円 |
| 改定後の想定収入 | 約8億4450万円 |
| 想定増収額 | 約2億8150万円 |
| 増収率 | 約50% |
※改定後の金額と増収額は、取材で示された概算値から週刊TAKAPIが計算した参考値。市が正式に提示した予算額ではない。
来園者数は105万人を想定
市は料金改定後の年間来園者数について、約105万人を想定していると説明した。
担当者によると、2025年度の来園者数は約104万人で、改定後はおおむね1万人の増加を見込んでいる。
一方、入園料の値上げが来園者数に与える影響については、市も一定程度の影響を認識している。
担当者は、すでに料金改定を実施した他の動物園から話を聞いた結果、改定直後には来園者数への影響が見られるものの、その後は大きな影響が続かないとの説明を受けたという。
市はこうした事例も踏まえて収入を試算している。
ただし、来園者数が想定を下回った場合の収入減少額や、複数の来園者数を設定した試算については、今回の取材では確認できなかった。
増収分は何に使う?具体的な配分額や優先順位は未定
動物福祉・教育・施設整備への活用を想定
値上げによって得られる収入が何に使われるのかは、利用者にとって重要な問題だ。
週刊TAKAPIは、増収分を動物の飼育環境改善、老朽化した施設の改修、人件費などにどの程度配分する予定なのか質問した。
担当者は、現時点では具体的な配分額を決めていないと説明した。
主な活用分野として挙げたのは、教育普及活動、絶滅危惧種などの保全活動、動物の生態に適した飼育施設の整備だ。
また、どの分野を最優先するかについても、現段階で明確な順位は設けていないという。
予算の中で使い道を公表へ
増収分の使途を市民に公表する予定についても確認した。
担当者は、増収分だけを切り分けた公表ではないものの、毎年度の予算を通じて、どのような事業に費用を充てるかを示していくと説明した。
料金改定による収入増が、実際にどのような施設改善や動物福祉の向上につながるのか。
今後は予算だけでなく、事業の実施状況や成果についても検証が必要になる。
豊橋市内の70歳以上は100円から400円へ 4倍になる理由
大人料金との500円差を維持
今回の料金改定案では、豊橋市内在住の70歳以上の入園料が、現行の100円から400円に引き上げられる。
値上げ幅は300円だが、料金は従来の4倍となる。
なぜ400円なのか。
担当者は、現在の大人料金600円と高齢者料金100円の差額が500円であることを説明した。
改定後もこの500円の差を維持するため、大人料金900円に対して高齢者料金を400円に設定したという。
つまり、高齢者料金400円は、大人料金から500円を差し引く従来の優待幅を維持した結果ということになる。
高齢者の年間パスポートは2000円から1400円に値下げ
一方、豊橋市内在住の70歳以上を対象とした年間パスポートは、値下げする方針だ。
現在は2000円だが、改定案では1400円となる。
市によると、年間パスポートは通常入園料の約3.3倍を基本に、100円単位で端数を切り上げて設定する。
70歳以上の新料金400円にこの計算方法を適用すると、1400円になるという。
通常入園料は4倍になる一方、年間パスポートは600円の値下げとなるため、繰り返し利用する高齢者に配慮した料金設定としている。
子どもの入園料は据え置き 家族連れの負担はどうなる?
東三河の小中学生は従来の無料制度を維持
子育て世帯への影響についても質問した。
市によると、今回の料金改定案では小中学生の料金は変更しない。
東三河地域の小中学生が「ほの国こどもパスポート」を利用して無料で入園できる制度も維持する方針だ。
また、東三河地域以外の小中学生についても、現行の100円を据え置くという。
ただし、大人の料金は600円から900円に引き上げられるため、保護者の人数に応じて家族全体の負担は増えることになる。
例えば、大人2人と無料対象の小学生2人が入園する場合、入園料は現行の1200円から1800円へと600円増える計算だ。
※駐車場料金などは含まない。
学校の遠足などの減免制度は今後の検討事項
学校行事や教育目的での団体利用についても確認した。
現在は遠足などに対する減免規定が設けられている。
ただし、市の担当者によると、今回の議会への説明では、減免制度を今後どう取り扱うかまでは示していないという。
教育目的の利用に対する減免制度がどのような形で維持されるのか、今後の説明が待たれる。
値上げしなかった場合はどうなる?市は税負担の改善を重視
週刊TAKAPIは、料金改定を行わなかった場合、運営やサービスにどのような影響が生じるのか質問した。
担当者は、動物園が税金によって一部運営されていることを挙げ、料金改定をしなければ公費負担の状況が改善されないと説明した。
また、絶滅危惧種の保全活動や教育普及活動、飼育施設の整備などを進めるためには、必要な財源を確保することが重要だとの認識を示した。
一方、料金改定を行わなかった場合に、具体的にどの事業が延期・縮小されるのかについては、今回の取材で明確な説明はなかった。
料金改定はまだ決定していない 2027年3月議会で判断へ
今回の取材で、市の担当者が特に強調したのが、料金改定の決定時期だ。
現在示されている料金は、市当局が議会に説明した改定案であり、正式に決まったものではない。
市は今後、2027年3月の市議会に条例改正案を提出する方針だ。
条例改正案が可決されなければ、今回示された料金への変更は実施できない。
また、委員会での説明や報道を受けた市民からの反応について尋ねたところ、取材時点では担当部署に電話やメールによる意見は寄せられていないとの回答だった。
これは担当部署が把握している範囲の状況であり、市民全体に賛否の意見がないことを意味するものではない。
編集部まとめ
値上げの是非だけでなく、何が改善されるかが重要
今回の料金改定案で注目すべき点は、単に大人の入園料が300円上がることだけではない。
市は料金収入を約1.5倍に増やすことを想定し、その財源を教育普及活動や動物の保全、飼育施設の整備などに活用する考えを示している。
動物福祉の向上や絶滅危惧種の保全には継続的な投資が必要であり、安定した財源の確保は重要な課題といえる。
しかし、今回の取材では、増収分の具体的な配分額や優先順位が現段階で決まっていないことも分かった。
約2億8000万円の増収が見込まれるのであれば、それによって何が、いつ、どの程度改善されるのか。
市民が料金改定を判断するためには、こうした説明も重要ではないだろうか。
また、年間105万人という来園者数の想定が実現するかどうかも、今後の収支に影響する。
料金改定後の来園者数や収入、動物福祉への投資状況などを継続的に公表し、実際の効果を検証できる仕組みが求められる。
週刊TAKAPIでは、今後の市議会での審議や予算の具体化についても引き続き確認していく。
取材概要週刊TAKAPI 編集部/黒木
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