【愛知・豊橋】看護師養成に64.2%が地域医療への貢献を期待 卒業生52人が市内就職、第2科は募集終了へ

豊橋市立看護専門学校の校舎外観。市民意識調査で64.2%が地域医療への貢献を期待し、卒業生52人が市内就職したことを伝える報道画像

豊橋市が公表した2026年度の市民意識調査で、回答者の64.2%が、市内の医療機関など地域医療に貢献できる看護師を養成してほしいと考えていることが分かった。看護学校に求める条件では、実習施設の充実が42.7%、授業料など経済的負担の軽さが42.2%を占めた。地域で働く看護師の育成と、そのための教育環境に対する市民の期待が数字となって表れた。

一方、市立看護専門学校では、2025年度の卒業生73人のうち52人が豊橋市内の医療機関に就職したものの、准看護師が看護師資格を目指す看護第2科の2026年度入学者は17人にとどまった。同科は2027年度入学者を最後に募集を終了し、2029年度末で廃止することが決まっている。新たな市民意識調査は、看護教育の再編が進むなか、地域に必要な人材を今後どのように育てていくかという課題を改めて示している。

「地域医療に貢献できる看護師を」64.2%が回答

市民意識調査は、豊橋市内に住む15歳以上の日本国籍を持つ人から5000人を抽出し、6月16日から7月15日まで実施した。郵送とインターネットで回答を受け付け、有効回答は2792人、回収率は55.8%だった。

看護師養成について尋ねた設問では2688人が回答し、「市内医療機関など地域医療に貢献できる看護師を養成してほしい」が64.2%で最も多かった。次いで「訪問看護など自宅での看護に精通した看護師」が16.5%、「最新医療に対応した高度な看護を実践できる看護師」が13.2%となり、「必ずしも豊橋市が養成する必要はない」は4.7%だった。

地域医療への貢献を求める回答は、すべての年代で最多となった。これに対し、訪問看護を重視する割合は年齢が高いほど増える傾向にあり、70歳以上では27.3%に上った。医療機関で働く看護師の確保だけでなく、在宅医療や高齢者を支える人材への関心も見えてくる。

ただし、この設問は看護師養成に期待する役割を1つ選ぶ形式で、市立看護専門学校の規模拡大や予算増額への賛否を尋ねたものではない。今回の64.2%を、学校の拡充を求める市民の割合と解釈することはできない。

卒業生73人のうち52人が市内就職 豊橋市民病院には42人

市立看護専門学校の実績を確認すると、2025年度の卒業生は看護第1科が36人、第2科が37人の計73人だった。

第1科からは30人が豊橋市民病院に就職。第2科では12人が同病院に、10人が市内の別の医療機関に就職した。合わせると、市内医療機関への就職者は52人で、卒業生全体の約71.2%を占める。

豊橋市民病院は東三河の高度急性期医療を担う中核病院であり、市立の看護教育機関から人材が送り出されていることには地域医療上の意味がある。さらに、卒業生は市内のほかの医療機関にも就職しており、学校が特定の病院だけでなく地域の医療人材を支える役割を果たしていることが分かる。

もっとも、この数字は卒業時点の就職実績だ。就職後に何年間勤務しているのか、離職した人がどれほどいるのか、市内の医療機関が必要とする看護師数にどの程度対応できているのかまでは示していない。

市民が期待する地域医療への貢献を長期的に評価するには、就職者数だけでなく、卒業後の定着状況も確認する必要がある。

第2科の入学者は17人 2027年度を最後に募集終了

一方、今後の看護師養成体制には大きな変化が予定されている。

市立看護専門学校の2026年度入学者は、第1科が定員40人に対して40人だったのに対し、第2科は定員40人に対して17人にとどまった。第2科は前年度の36人から19人減少したことになる。

第2科は、准看護師の資格を持つ人などが、看護師国家試験の受験資格を得るために学ぶ課程で、現在は3年間の定時制昼間課程として運営されている。

学校はすでに、2027年度入学者を最後に第2科の募集を終了し、2029年度末で同科を廃止すると公式に案内している。2027年度に入学する学生については、3年間の教育課程が確保される。

ただし、2026年度の入学者17人という数字だけで、募集終了の原因を判断することはできない。准看護師を取り巻く進学需要や養成体制の変化など、再編に至った判断については別途検証が必要だ。

今後の課題の一つは、准看護師が資格取得後に学び直し、看護師を目指す機会をどのように確保するかという点にある。地域で働きながら学ぶ人にとって、教育課程の選択肢が変わることは進路や就業計画にも関わる。

実習施設42.7%、経済的負担42.2% 看護学校に求める条件

今回の調査では、看護学校に求める教育環境についても尋ねている。

2637人が3項目まで選んだ結果、豊橋市民病院をはじめとする実習施設の充実が42.7%で最多となった。授業料など経済的負担の軽さが42.2%、優秀な講師や教員による質の高い授業が41.5%で続いた。

特に20歳代では、教員による質の高い授業を重視する回答が47.8%となった。一方、70歳以上では実習施設の充実を選んだ人が54.5%を占め、年代によって学校に期待する条件が異なっている。

市立看護専門学校では、豊橋市民病院を主要な実習先とし、豊川市民病院や訪問看護ステーション、福祉施設などでも実習を行っている。年間授業料は15万6000円、入学金は3万円で、参考書、実習用品、教材などには別途費用がかかる。

このため、授業料の金額だけで経済的負担が軽いと判断することはできない。学費全体や必要な学習機器、奨学金の利用条件まで含めて、学生が学び続けられる環境を検証する必要がある。

20歳代の43.9%が学校を知らず 進学対象層への情報発信も課題

市民意識調査では、豊橋市立看護専門学校の認知度についても結果が示された。

「知っている」が47.7%、「聞いたことはある」が22.5%、「知らない」が29.8%だった。年代別では20歳代の43.9%、30歳代の42.1%が学校を知らないと回答しており、15~19歳でも38.9%に上った。

看護師を目指す人が必ずしも地元の学校に進学するとは限らず、学校の認知度がそのまま入学希望者数を決めるわけではない。それでも、地域に看護教育の機会があることを進路選択の段階で知ってもらう取り組みには意味がある。

とりわけ第2科の募集終了が決まっている今、これまで准看護師から看護師への進学を目指してきた人に、今後どのような学びの機会が残されるのかを分かりやすく伝える必要がある。

市民の期待と学校再編 地域医療を支える人材をどう確保するか

豊橋市の市民意識調査は、地域に貢献する看護師の養成を望む回答が多いことを示した。その一方、市立看護専門学校では学科再編が進み、従来の教育課程の一部が数年後に終了する。

両者は必ずしも矛盾するものではない。市民が期待しているのは地域医療に必要な人材を育てることであり、特定の学科を現状のまま存続させることへの賛否が示されたわけではないからだ。

だからこそ、再編後にどのような看護師を育成し、何人を地域の医療機関に送り出すのかという目標が重要になる。教育内容の充実に加え、入学機会の確保、学生の経済的負担、卒業後の就職と勤務継続を、一体として検証していく必要がある。

地域の医療を支える人材の育成は、学校を卒業するまでで完結するものではない。市民が求める地域医療への貢献を、実際の医療現場で継続的に実現できるかどうか。今回の調査は、看護教育の再編を考えるうえで、その原点を示している。

編集部まとめ

豊橋市の市民意識調査では64.2%が地域医療に貢献する看護師の養成を期待し、実習施設の充実や学費負担の軽さも重視された。市立看護専門学校は2025年度に卒業生73人のうち52人を市内の医療機関へ送り出したが、2026年度の第2科入学者は17人に減少。同科は2027年度を最後に募集を終了する。今後は教育課程の再編を進めながら、准看護師の学び直しの機会と、地域で働き続ける看護師の確保をどう実現するかが課題となる。

特記事項

豊橋市の2026年度市民意識調査の問48~50、調査概要、市立看護専門学校の入学・卒業・就職実績、教育内容・学費、2027年度学生募集案内を確認した。調査は15歳以上の日本国籍住民を対象とする標本調査であり、全市民への悉皆調査ではない。市内就職者数と長期定着者数を区別し、学科廃止の理由や再編後の人材供給について未確認事項は断定していない。

FAQ

Q豊橋市民の64.2%は何を期待しているのですか?
A市の看護師養成について、市内医療機関など地域医療に貢献できる人材を育ててほしいと回答した割合です。学校の拡充を支持した割合ではありません。
Q豊橋市立看護専門学校の卒業生は何人が市内に就職していますか?
A2025年度は卒業生73人のうち52人が市内医療機関に就職しました。そのうち42人が豊橋市民病院に就職しています。
Q看護第2科は廃止されるのですか?
Aはい。2027年度入学者を最後に募集を終了し、2029年度末に廃止する予定です。
Q市民が看護学校に求める条件は何ですか?
A実習施設の充実が42.7%、授業料など経済的負担の軽さが42.2%、質の高い授業が41.5%でした。最大3項目まで選べる設問の結果です。
Q看護第2科の2026年度入学者は何人ですか?
A定員40人に対して17人です。前年度の36人から19人減少しました。ただし、この減少だけで募集終了の原因を判断することはできません。

週刊TAKAPI編集部/松本

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