【東三河】公立4病院が赤字、設備投資に異なる判断 蒲郡は新棟延期でも機器更新、新城は最大180億円の新病院構想

豊橋市民病院、豊川市民病院、蒲郡市民病院、新城市民病院の外観。東三河4市民病院の赤字決算と設備投資を比較検証

愛知県東三河の公立病院が、厳しい経営環境の中で施設や医療機器の更新を迫られている。豊橋、豊川、蒲郡、新城の4市民病院は2024年度、いずれも純損失を計上した。しかし、老朽化した設備への対応や、新たな医療機能に対する投資の進め方は大きく異なっている。

豊橋市民病院は集中治療室(ICU)の改修を進め、豊川市民病院は既存設備や医療情報システムを更新している。蒲郡市民病院では新棟建設が延期となった一方、必要な医療機器の購入は続く。新城市民病院は移転新築に向け、160億〜180億円という概算事業費を示した。

地域の医療機能を維持するために、何を優先し、その費用をどう確保するのか。週刊TAKAPIは4病院の決算と施設整備計画を比較するとともに、蒲郡市へのこれまでの独自取材結果を改めて検証した。

4病院とも赤字 ただし経営規模は大きく異なる

比較対象とした2024年度の純損失は、豊橋市民病院が約6億260万円、豊川市民病院が約10億2,436万円、蒲郡市民病院が約6億8,091万円、新城市民病院が約3億3,139万円だった。

4病院とも赤字ではあるが、病床数や診療機能、患者数は異なる。高度急性期医療を担う豊橋や豊川と、地域の二次救急を支える蒲郡、人口減少が進む奥三河で医療を提供する新城を、純損失の金額だけで比較することは適切ではない。

その後の2025年度決算では、豊橋市民病院の純損失が約18億8,168万円に拡大した。蒲郡市民病院も約7億6,954万円の純損失を計上しており、前年度より赤字が増えている。

病院の収支が悪化しても、老朽化した医療機器や施設の更新を一律に止めることはできない。診療に必要な設備の故障や、建物の安全性に関わる問題は、患者の治療にも直接影響するためだ。

豊橋はICUの機能強化 改修費の一部に寄付を活用

豊橋市民病院では、ICUを6床から8床に増やす改修が進んでいる。リニューアル費用は約4億円で、重症患者の治療に必要なスペースを広げるほか、医療機器の配置や感染症への対応環境を改善する計画だ。

病院は2026年9月、改修費の一部を募るため初めてクラウドファンディングを開始し、10月26日に第一目標の1,000万円を達成した。その後、第二目標を2,500万円に引き上げている。

ただし、寄付目標額は改修費全体の一部であり、病院は必要額との差額を病院予算で補うとしている。

同院では、救急入院センターの移設などを含めた総事業費15億6,500万円の改修事業も進む。週刊TAKAPIはこれまでに、2025年度の赤字や病床削減、ICU増床後の人員配置について検証してきた。

今回の4病院比較で注目されるのは、豊橋が病院全体の病床再編を進める一方、重症患者の治療に必要な集中治療機能については強化を選んでいる点だ。増床後の維持費や職員配置をどう確保するのかは、引き続き重要な課題となる。

豊川は既存設備を更新 情報システムの安全対策も

豊川市民病院が公表した2024年度の経営強化プラン評価資料には、老朽設備の予防保全と医療機器更新の実績が記されている。

冷温水発生機などの施設設備に加え、薬局部門のアンプルピッカー、多目的デジタルX線テレビシステムなどの更新を進めた。救急時に必要な診療情報を閲覧する機能や、サイバーセキュリティ対策としてのオフラインバックアップ体制の整備にも取り組んでいる。

病院は、施設の予防保全や医療DXへの対応について、計画どおりの進捗が認められると評価した。

これらは新病院の建設と比べれば目立ちにくい投資だが、診療に必要な設備を安定して使い続けるためには欠かせない。医療機器は購入後も保守や更新に費用がかかり、電子カルテなどの情報システムでは安全対策も必要となる。

豊川の事例は、建物を新築しない場合でも、医療提供体制を維持するための継続的な設備投資が求められることを示している。

蒲郡は医業損失17.33億円 新棟延期でも設備投資は続く

蒲郡市民病院の2025年度決算では、診療部門の収支を示す医業損失が17億3,306万9,193円となった。医業外収益などを反映した最終的な純損失は7億6,953万7,961円だった。

医業損失と純損失は異なる指標であり、17億円余りをそのまま病院の年間赤字額や設備投資の財源不足額として扱うことはできない。

病院の設備整備についても、重要な変更があった。

蒲郡市は2026年9月、建設資材や労務単価の高騰を受け、大型投資7事業の見直しを公表した。対象には蒲郡市民病院の新棟等整備事業も含まれ、新棟建設は延期する方針となった。

週刊TAKAPIが市担当者へ独自取材したところ、新棟の具体的な整備時期は決まっていないとの説明だった。ただし、建設そのものの中止が決定したわけではなく、病院機能の維持に必要なエネルギー関連設備については、先行して更新する考えが示された。

さらに、9月18日に可決された2026年度病院事業会計補正予算では、医療機器などの購入費を8,235万円増額し、関連する県補助金7,633万円を計上している。

新棟建設を延期しても、診療に必要な設備の更新まで止めているわけではない。

週刊TAKAPIは、大型7事業の見直しについても市に独自取材している。市が掲げる「25%程度の圧縮」は、各事業の総事業費を一律25%削減するものではなく、2027年度から2036年度までの10年間に必要となる関連費用を、全体として圧縮する目標だという。

建設を延期すれば当面の支出を抑えられる可能性はある。しかし、既存施設を長く使用するための維持費や、新たに必要となる設備更新費は残る。

病院新棟の延期によって将来の建設費と現在の維持費がどう変わるのか。蒲郡市の投資判断を評価するには、こうした費用を区別して検証する必要がある。

新城は160億〜180億円の新病院構想 財源確保が課題

新城市民病院では、施設の老朽化と耐震性が深刻な問題となっている。

市が2026年3月に策定した新病院建設基本構想によると、西病棟は旧耐震基準で建設され、大規模地震に対する安全性に課題がある。2025年度には空調設備のボイラーのトラブルや、配管の老朽化による汚水の逆流なども発生した。

こうした状況を踏まえ、市は移転新築を基本とする整備方針を示した。

新病院は100〜120床を想定し、概算事業費は160億〜180億円と見込む。ただし、基本構想段階の試算であり、建設費が確定したわけではない。

市は、地方債だけで必要な事業費を賄うことは将来の財政負担を大きくするため現実的ではないと説明し、国や県の補助金、交付金などとの組み合わせを検討する考えを示している。

2026年度には基本計画で施設規模や収支見通しを詳しく検討し、2027年度には事業の必要性や妥当性を改めて評価する予定だ。

新城市民病院は、設楽町、東栄町、豊根村を含む東三河北部の医療も担う。人口が減少する地域で、どの規模の病院を維持するべきかという問題は、新城市だけで完結しない。

建設費だけでは判断できない 4病院に共通する将来負担

4病院を比較すると、豊橋は高度急性期医療の機能強化、豊川は既存設備の更新、蒲郡は新棟建設の延期と必要設備の先行整備、新城は移転新築という異なる方針を取っている。

設備を更新するには、病院の自己資金や企業債、一般会計からの負担金、補助金など、複数の財源が関わる。企業債によって建設費を確保した場合でも、将来は償還が必要となり、建物や医療機器の維持管理費も継続して発生する。

クラウドファンディングで設備整備の一部を支える豊橋と、新棟整備の時期を見直す蒲郡では、資金確保の方法も異なる。ただし、それぞれの病院が担う医療機能や整備事業の規模が違う以上、どちらか一方の方法が優れていると単純に判断することはできない。

重要なのは、投資の必要性だけでなく、今後の維持費や企業債の償還、自治体の負担を含め、長期的に医療を提供できる見通しを示すことだ。

4病院の設備投資の全体像を比較するには、今後5〜10年間の整備計画と財源構成を、同じ基準で確認する必要がある。

編集部まとめ

東三河の4市民病院は2024年度、いずれも純損失を計上した。しかし、投資の進め方は異なる。豊橋はICUを増床し、豊川は既存設備の更新を続ける。蒲郡は新棟建設を延期しながら必要な設備投資を進め、新城は最大180億円の新病院構想を示した。

公立病院には、経営状況が厳しくても地域に必要な医療機能を守る責任がある。そのための費用をどの財源で賄い、将来の運営負担をどう抑えるのか。各病院と自治体の判断が問われる。

特記事項

本記事は4市民病院の決算資料、経営強化プラン、施設整備計画、および週刊TAKAPIによる蒲郡市担当者への独自取材結果を基に構成した。純損益の比較は2024年度で統一し、蒲郡の2025年度決算と2026年度補正予算は別途反映した。

Q東三河の4市民病院はすべて赤字ですか?
A2024年度決算では、豊橋、豊川、蒲郡、新城の4病院がいずれも純損失を計上しました。ただし、病院の規模や診療機能は異なります。
Q蒲郡市民病院の2025年度の赤字は17億円ですか?
A17億3,306万円余りは医業損失です。医業外収益などを反映した当年度純損失は7億6,953万円余りとなっています。
Q蒲郡市民病院の新棟建設は中止されたのですか?
A中止は決まっていません。新棟建設は延期されましたが、病院機能を維持するための必要な設備更新は先行して進める方針です。
Q新城市民病院の新築には180億円かかるのですか?
A基本構想で示された160億〜180億円は概算事業費であり、確定した建設費ではありません。基本計画で費用を精査し、2027年度に事業の妥当性などを再評価する予定です。
Q公立病院の設備投資はクラウドファンディングで賄えますか?
A寄付は設備整備の一部を支える方法となりますが、大規模な建設や継続的な運営に必要な費用をすべて賄うものではありません。自己資金、企業債、一般会計負担金、補助金などの財源確保が必要です。

週刊TAKAPI 編集部/成田

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