【愛知・豊川】救急出動減少も受入照会の不成立2068回、前年比21%増 消防年報の割合にも不整合、搬送先の確保を検証

豊川市民病院のドクターカーと医療スタッフ。豊川市の2025年救急搬送で受入照会不成立が2,068回となった実態を検証

愛知県豊川市で、救急車の出動件数が減る一方、患者を受け入れる医療機関への照会が成立しなかった回数は増加している。豊川市消防本部の2025年救急救助年報によると、救急出動は前年より112件少ない9,389件だったが、受入れに至らなかった照会は2,068回と、前年から21.3%増えた。

医療機関への照会を4回以上必要とした搬送も、120件から183件に増加した。搬送先を決めるまでの過程で、複数の医療機関に対応を求めなければならない事案が増えている。

同市では搬送患者の約8割を豊川市民病院が受け入れ、医師を現場へ派遣するドクターカーも運用している。2025年4月には日勤救急隊が新たに導入され、救急現場の体制強化が図られた。

一方、消防本部の年報を前年の資料と比較したところ、医療機関への受入照会回数を示す割合に、計算上の不整合が確認された。

週刊TAKAPIは、2024年と2025年の救急救助年報、豊川市民病院の診療実績、2026年10月までの公表情報を照合し、救急現場から医療機関につなぐ仕組みを検証した。

救急出動は112件減少 受入照会が成立しなかった回数は363回増加

豊川市消防本部によると、2025年の救急出動は9,389件で、前年の9,501件から1.2%減少した。救急車で搬送された人数も8,796人から8,609人へ187人減少している。

しかし、医療機関への受入照会が成立しなかった回数は、前年の1,705回から2,068回へ増えた。患者を搬送する件数が減っても、受入先を確保する過程の負担が必ずしも軽くなるわけではないことがうかがえる。

ただし、この2,068回は搬送できなかった患者の人数ではない。一人の患者について複数の医療機関へ照会した場合、それぞれの不成立が計上される。また、豊川市民病院だけが受入れを断った件数でもなく、消防本部が市内外の医療機関へ行った照会の合計である。

増加の原因について、年報は具体的に分析していない。患者の病状が変化したのか、医療機関側の受入条件が厳しくなったのか、特定の診療科や時間帯に照会が集中したのか。公表された数字だけでは判断できない。

4回以上の照会が183件 前年から52.5%増加

2025年、豊川市消防本部が医療機関へ救急搬送した件数は8,563件。このうち、1回の照会で搬送先が決まったのは7,253件だった。

一方、2回の照会を必要としたのは949件、3回が178件、4回以上が183件となっている。4回以上の事案は、前年の120件から63件増加した。

全体から見れば少数だが、救急医療では搬送先が決まるまでの時間も重要になる。心筋梗塞や脳卒中など、早期の診断・治療が求められる疾患では、患者の状態に対応できる医療機関へ速やかにつなぐことが欠かせない。

ただし、今回の統計では、4回以上の照会を必要とした患者の診断名や重症度、照会に費やした時間は明らかになっていない。

照会回数が増えたことをもって、治療が遅れた患者が増加したと断定することはできないものの、こうした事案を個別に分析する意義は大きい。

消防年報の「83.1%」に計算上の不整合 前年の分母と一致

今回、週刊TAKAPIが2024年と2025年の消防年報を比較したところ、受入照会回数の構成比に確認すべき問題が見つかった。

2025年の年報は、医療機関への搬送8,563件のうち、7,253件が1回の照会で決定したと記載している。ところが、本文とグラフに示された割合は83.1%となっている。

実際に7,253件を8,563件で割ると、84.7%となる。

さらに、2024年の搬送件数8,731件を分母にして計算すると、2025年の公表割合と同じ83.1%になることが分かった。

同様に、2回の照会を要した949件も、2025年の8,563件を分母にすると11.1%だが、前年の8,731件で計算すると、公表値の10.9%と一致する。3回の照会を要した178件についても、前年の分母を使った場合に公表値と一致した。

これらの一致から、2025年の構成比を算出する際、前年の搬送件数が分母に使われた可能性が考えられる。

ただし、資料作成時の計算や転記に誤りがあったと確定するには、消防本部への確認が必要だ。

仮に2025年の1回照会による決定割合を84.7%とした場合でも、前年の86.8%から約2.1ポイント低下したことになる。搬送先の決定に複数回の照会を要する事案が増えたという傾向自体は変わらない。

公的統計は、行政の施策や地域の医療体制を評価するための基礎となる。件数だけでなく、その割合がどのような方法で算出されているかも、正確に説明される必要がある。

「処置困難」が954回 満床を理由とした照会不成立も倍増

受入照会が成立しなかった理由を詳しく見ると、2025年は「処置困難」が954回で、全体の46.1%を占めた。前年の750回から204回増えている。

次いで「手術中」が344回、「ベッド満床」が295回、「専門外」が199回、「医師不在」が57回などとなっている。

特にベッド満床は、前年の147回から295回へ倍増した。処置困難と満床の増加が、全体の照会不成立件数の増加に影響している。

ただし、どの医療機関で満床が発生したのか、どの診療科で処置が困難だったのかは、今回確認した資料からは分からない。

医療機関が患者の受入れに応じられない理由には、必要な専門医がいない場合や、手術中で直ちに対応できない場合などがある。個々の病院の診療体制や患者の状態を確認せずに、不適切な受入拒否と評価することはできない。

一方、救急搬送を支える体制としては、処置困難や満床がどのような時間帯、どの診療科で多く発生しているのかを把握することが重要になる。

搬送患者の79.3%が豊川市民病院へ 豊橋への搬送は増加

豊川市消防本部が2025年に搬送した8,609人のうち、6,828人が豊川市民病院へ運ばれた。全体の79.3%を占めている。

前年は8,796人のうち7,158人、81.4%だった。市民病院への搬送人数は330人減少し、割合も2.1ポイント低下している。

一方、豊橋市民病院への搬送は350人から406人に増加。市外医療機関への搬送全体も708人から823人となり、115人増えた。

この変化について、豊川市民病院の受入能力が低下したと判断することはできない。患者の疾患や重症度、専門診療科の対応状況、医療機関の受入条件などが関係するためだ。

豊川市民病院は、2019年12月から救命救急センターとして三次救急医療を担っている。病院が公表した2025年度の救急搬送受入数は7,986人、救急応需率は95.2%だった。

なお、病院側の7,986人は年度単位、消防本部の6,828人は暦年単位の統計であり、集計対象も異なる。両者を直接比較し、差を市外からの搬送数とみなすことはできない。

2025年4月に日勤救急隊を導入 救急体制の強化を進める

豊川市消防本部は、2025年4月1日から日勤救急隊の運用を開始した。

消防年報によると、救急需要が高まる時間帯の出動体制を強化するとともに、職員を効率的に配置することなどを目的としている。

2026年1月1日時点では、高規格救急車7台を配備し、救急救命士の資格を持つ消防職員63人を確保している。2025年の救急出動9,389件すべてに救急救命士が搭乗したと公表した。

こうした体制の下、救急隊が119番通報から現場に到着するまでの平均時間は、前年の8.5分から8.1分に短縮した。

一方、通報から患者を病院の医師へ引き継ぐまでの平均時間は、前年の32.0分から32.3分へわずかに延びている。

日勤救急隊の導入がこれらの変化にどの程度影響したかは、年報からは確認できない。現場到着までの時間と、搬送先が決まって病院へ到着するまでの時間は別の指標であり、両者を分けて評価する必要がある。

ドクターカー203件出動 病院到着前の医療介入を担う

豊川市民病院では、救急車による搬送とは別に、医師や看護師を現場へ派遣するドクターカーを運用している。

2022年10月に試行運用を始め、2023年1月から本格運用に移った。119番通報などから重症度や緊急度が高いと判断された場合に、消防本部の要請を受けて出動する。

2025年の出動は203件で、前年の212件から9件減少した。このうち152件で患者が豊川市民病院へ収容され、重症22件、中等症43件と記録されている。

消防年報では、運行時間を水曜日を除く平日の午前9時から午後4時15分までとしている。

一方、豊川市民病院の救命救急センター自体は24時間体制で診療を続けている。ドクターカーの運行時間が限られていることと、病院の救急診療時間は区別する必要がある。

ドクターカーの目的は、救急車が病院へ到着する前から医師が患者に接触し、治療を始められるようにすることだ。

ただし、ドクターカーが出動したことで医療介入が何分早まったのか、患者の予後にどのような影響があったのかについては、今回の統計だけでは評価できない。

豊川市消防本部は、救急車から心電図などを病院へ送信する画像連携システムも運用している。2025年の利用実績は264件で、そのうち236件が心電図の画像送信だった。

現場への医師派遣と画像による情報共有は、いずれも患者が病院に到着する前の時間を医療に活用する取り組みとなっている。

2026年も救急需要は続く 求められる地域全体の検証

豊川市が2026年10月16日に更新した災害発生統計によると、同年1月から9月末までの救急出動は7,022件だった。

これは2026年の途中経過であり、2025年通年の9,389件と単純に比較して増減を判断することはできない。

ただ、地域の救急医療を維持するには、救急隊の出動体制を整えるだけでは十分ではない。患者の病状に応じて受入先を確保できる医療機関の体制も欠かせない。

豊橋市民病院では集中治療室の改修が進み、東三河の重症患者を受け入れる機能の再編が計画されている。各病院の機能を維持するうえでは、医師や看護師の確保も重要になる。

関連記事: 【独自検証】豊橋市民病院18.81億円赤字、改修費15.65億円 50床削減と蒲郡の看護師育成を比較

また、週刊TAKAPIの独自取材では、2027年4月に開設する名古屋市立大学蒲郡校の準備担当者が、豊川市民病院を地域の看護人材育成に関わる連携先の一つとして挙げていた。

関連記事: 【独自】名市大「蒲郡校」、地域就職「25人」を一つの成功像に 豊川市民病院も連携

豊川市の救急統計が示しているのは、救急車の出動件数だけでは地域の救急医療の実情を測れないということだ。

患者を搬送する手段と、必要な診療を提供できる医療機関。その双方が機能して初めて、救急医療は成り立つ。

受入照会が成立しなかった回数や、複数回の照会を要した事案が増えた背景について、消防と医療機関の双方から実態を把握することが重要になる。

編集部まとめ

豊川市消防本部の2025年統計では、救急出動件数が前年より減少する一方、医療機関への受入照会が成立しなかった回数は2,068回に増えた。4回以上の照会を必要とした搬送も183件となっている。

また、週刊TAKAPIが両年の年報を比較したところ、2025年の受入照会回数の構成比に計算上の不整合が確認された。公表された83.1%は前年の搬送件数を分母とした場合に一致し、正しい算出方法の確認が必要だ。

救急医療の機能を評価するには、出動件数だけでなく、搬送先の確保と患者への医療介入の実態を継続的に検証する必要がある。

特記事項

本記事は、豊川市消防本部が2026年3月に公表した「令和7年救急救助年報」、前年の「令和6年救急救助年報」、豊川市民病院の救急科公表実績、豊川市が2026年10月16日に更新した災害発生統計を照合して構成した。

受入照会回数の構成比については、両年の原資料に記載された件数を用いて週刊TAKAPIが独自に再計算した。前年の搬送件数を分母にすると公表割合と一致するものの、資料作成上の誤りかどうかは消防本部への直接確認が必要である。

受入照会の不成立回数は、患者数や特定の医療機関による受入拒否件数を示すものではない。病院側の救急実績は年度単位、消防統計は暦年単位であり、集計期間と対象が異なる。

Q豊川市の2025年の救急出動件数は何件ですか?
A9,389件で、前年より112件減少しました。救急車による搬送人員は8,609人です。
Q受入照会が成立しなかった2,068回とは何を意味しますか?
A消防が市内外の医療機関へ行った照会のうち、受入れに至らなかった回数の合計です。2,068人の搬送が拒否されたという意味ではありません。
Q消防年報の83.1%という数字は誤りですか?
A年報にある7,253件と搬送総数8,563件から計算すると84.7%になります。一方、前年の搬送総数を分母にすると83.1%と一致します。算出過程に不整合があると考えられますが、誤記かどうかは消防本部の確認が必要です。
Q豊川市民病院のドクターカーは24時間運行していますか?
A2025年の消防年報では、水曜日を除く平日の午前9時から午後4時15分までとされています。救命救急センターは24時間体制で診療しています。
Q2026年の救急出動状況はどうなっていますか?
A豊川市が10月16日に更新した統計では、2026年9月末までに7,022件の救急出動が記録されています。通年の搬送先や受入照会の詳細な実績は、まだ確認できていません。

週刊TAKAPI 編集部/成田

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