島根県松江市の市立小学校3校で2026年10月29日、学校給食を食べた児童と教職員の計293人が、顔の赤みやかゆみ、口やのどの違和感、嘔吐などの体調不良を訴えた。このうち出雲郷小学校の児童10人が救急搬送され、2人が入院した。搬送された児童については、命に別状はないと報じられている。
3校には市立東出雲学校給食センターが調理した給食が提供されていた。当日の献立に含まれたハマチによるヒスタミン食中毒が疑われており、医師がその可能性を指摘したという。松江市教育委員会は30日、3校を臨時休校とし、松江保健所が給食センターへの立入調査を進めている。原因となった食品や物質は、30日夕方時点では確定していない。
出雲郷・揖屋・意東の3小学校で相次ぎ体調不良
松江市によると、体調不良が確認されたのは、東出雲町にある出雲郷小学校、揖屋小学校、意東小学校の3校だった。29日の昼食後、児童や教職員から顔の赤みやかゆみ、口やのどの違和感、吐き気、嘔吐などの症状が相次いで報告された。
出雲郷小学校では午後1時ごろから体調不良を訴える児童が確認され、消防への通報を受けて救急隊が対応した。3校の体調不良者は合計293人に達し、このうち出雲郷小学校の児童10人が病院に搬送された。3校で給食を食べた児童と教職員は合わせて約1,000人とされ、体調不良を訴えた人は全体のおよそ3割に相当する。
搬送された児童については、29日夜の初期情報で全員が帰宅したとする説明も伝えられていた。しかし、30日に市が明らかにした内訳では、8人が29日中に帰宅し、2人が入院していた。入院した児童の詳しい症状や退院の見通しについては、確認できる情報が限られている。
献立にはハマチのゆずこしょう焼き 医師がヒスタミン中毒の可能性指摘
3校の給食を調理したのは、市立東出雲学校給食センターだった。松江市が公表している2026年10月の献立表によると、29日には麦ごはん、ハマチのゆずこしょう焼き、和風ポテトサラダ、にんじん・大根・ごぼうの汁物、牛乳が提供されていた。
30日には、出雲郷小学校が、搬送された児童について医師からヒスタミン中毒が疑われると指摘されたことを明らかにした。ハマチはヒスタミン食中毒の原因となり得る魚種の一つで、今回の症状との関連が調べられている。
ただし、医師による可能性の指摘と、保健所による原因の確定は別のものだ。現時点でハマチから高濃度のヒスタミンが検出されたという結果は確認できておらず、食材の仕入れ先や保管状況、調理工程に問題があったとする事実も明らかになっていない。
給食後に多くの児童や教職員が似た症状を訴えたことから、共通して提供された食品との関連が疑われるが、原因食品の特定には検査結果などによる裏付けが必要となる。
ヒスタミン食中毒は加熱しても防げない場合がある
厚生労働省によると、ヒスタミン食中毒は、ヒスタミンが高濃度に蓄積された食品を摂取することで発症する、アレルギーに似た症状を示す食中毒だ。魚に含まれるヒスチジンというアミノ酸が、細菌の働きによってヒスタミンに変化することで生じる。
主な原因食品には、マグロ、カツオ、サバ、イワシ、ブリなどの魚類や、その加工品が挙げられる。顔の赤み、頭痛、じんましんなどの症状が出ることがあり、口に入れた際に舌や唇へ刺激を感じる場合もある。
ヒスタミンは熱に強く、一度食品中で生成されると、通常の加熱調理では分解されない。魚を十分に焼いたとしても、調理前にヒスタミンが蓄積していれば、食中毒を防げない可能性がある。
このため、厚生労働省は、魚の漁獲後から保管、加工、流通、調理、提供に至るまで、一貫した温度管理が重要だとしている。今回の原因がヒスタミンと確定した場合には、給食センター内の調理だけでなく、原材料が納入される以前の取り扱いも確認する必要がある。
給食センターは稼働停止 3小学校を30日に臨時休校
松江市教育委員会は、多数の体調不良者が発生したことを受け、30日は出雲郷、揖屋、意東の3小学校を臨時休校とした。また、給食センターの稼働を停止して調査を進めており、松江保健所は施設への立入調査を行っている。
市の公式資料によると、東出雲学校給食センターは今回の3小学校に加え、東出雲中学校にも給食を提供している。29日夜の情報では、同中学校で同様の症状を訴えた生徒や教職員はいないとされていた。
同じ施設から給食の提供を受ける学校でも、体調不良者の発生状況に違いがあることから、実際に提供された食品や食材の使用状況などを確認することが重要になる。ただし、学校ごとの症状の違いだけで原因を特定することはできない。
また、今回の事案を受けた給食再開の具体的な時期や、停止期間中の給食提供方法については、30日夕方までに確認できる情報が限られている。市には原因究明の進捗とともに、児童の健康状態や今後の学校運営について、保護者に適切な説明を行うことが求められる。
原因はどの段階にあるのか 食材調達から配送まで調査が必要
今回の事案で重要なのは、原因となった食品を特定することに加え、問題がどの段階で発生したのかを明らかにすることだ。
仮にハマチによるヒスタミン食中毒と判明した場合、魚の保管温度や保存期間、解凍方法、納入時の状態などが重要な確認事項となる。ヒスタミンは加熱しても除去できないため、調理工程だけを調べても原因を十分に解明できない可能性がある。
一方、給食センターが複数の学校へ同じ献立を提供する仕組みでは、共通する食材に問題が生じた場合、被害が広がる可能性もある。食材の受け入れから各校への配送、提供までの記録を確認し、どの食品がどの学校へ届けられたかを追跡できることが重要だ。
29日の給食後には、多数の児童や教職員が短時間に体調不良を訴えた。学校が症状を把握してから消防や保健所へ連絡するまでの対応、児童の救護、保護者への連絡などについても、今後の検証対象となる。
ただし、現段階で給食センターや納入業者に過失があったとする事実は確認されていない。まずは保健所の調査によって原因を明らかにし、その結果に基づいて衛生管理上の改善点を整理する必要がある。
松江市には、原因食品や発生経路が判明した場合、その内容を速やかに公表するとともに、再発防止策と給食再開の判断根拠を示すことが求められる。
編集部まとめ
松江市の市立小学校3校で10月29日、学校給食後に児童と教職員293人が体調不良を訴え、児童10人が救急搬送された。30日に確認された内訳では、2人が入院し、8人は29日中に帰宅している。献立に含まれたハマチによるヒスタミン食中毒が疑われているものの、原因は確定していない。市教委は3校を臨時休校とし、給食センターの稼働を停止。今後は保健所による原因究明と、食材調達から調理・配送に至る管理状況の検証、安全な給食再開に向けた説明が焦点となる。
特記事項
2026年10月29日の松江市発表に関する報道、30日の搬送・入院状況の続報、市公式の東出雲学校給食センター献立表、厚生労働省のヒスタミン食中毒資料を照合した。原因食品や原因物質は未確定であり、医師によるヒスタミン中毒の指摘と保健所の正式な認定を区別している。29日の搬送者に関する初期情報は30日に確認された内訳に更新した。
週刊TAKAPI編集部/成田
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