学年末テスト中に居眠りをしていた中学生の頭を、教師が平手で1回叩いた。生徒にけがはなかった。それでも教師は減給処分を受け、校長も戒告となった。
北海道教育委員会は11月5日、石狩管内の中学校に勤務する58歳の男性教諭を減給10分の1(1か月)の懲戒処分にしたと発表した。
同じ学校の58歳の男性校長も、体罰を把握しながら教育委員会への報告を怠ったとして戒告処分となった。
体罰は法律で禁止されている。一方、今回の行為は平手打ち1回で、生徒にけがはなかった。
教師への処分は妥当だったのか。それとも重すぎるのか。
さらに、保護者が学校から説明がないと教育委員会に連絡したことで事態が表面化した経緯も、学校と家庭の関係を考えさせる。
テスト中に居眠り 「起こそうと思って叩いた」
道教委によると、問題が起きたのは2025年2月ごろ。
石狩管内の中学校で学年末テストが行われていた際、中学2年の男子生徒が自席で居眠りをしていた。
これを見た男性教諭は感情的になり、生徒の頭頂部を右手の平手で1回叩いたという。
生徒にけがはなかった。
教諭は道教委の調査に対し、「起こそうと思って叩いた」と説明。体罰に至ったことを深く反省していると話している。
もちろん、試験中の居眠りは望ましいことではない。教師が生徒に注意し、試験に集中するよう促すこと自体は必要な指導だろう。
ただ、その方法として頭を叩く必要があったのか。
道教委は今回の行為を体罰として処分した。
平手打ち1回で減給 道教委の標準処分は「戒告」
今回の処分で注目したいのは、減給という判断だ。
北海道教育委員会の懲戒処分指針では、体罰によって児童生徒に傷害を負わせた場合の標準処分は停職または減給。一方、傷害を伴わない体罰については戒告が標準とされている。
今回、生徒にけがはなかった。それでも教諭には戒告より重い減給10分の1(1か月)が科された。
指針は一律に処分を決めるものではなく、行為の動機や態様、生徒への影響、職員の対応、過去の非違行為歴などを総合的に考慮する仕組みになっている。
したがって、けががなかったから減給にできないというわけではない。
ただし、今回の個別処分資料には、どの事情を重視して標準より重い処分にしたのか、具体的な説明は記されていない。
平手打ち1回という行為の重さをどう評価したのか。処分の妥当性を判断するには、その理由も必要だ。
過去には「あくびをした児童への平手打ち」で戒告も
北海道教委は2025年9月25日、別の体罰事案についても処分を公表している。
洞爺湖町の小学校に勤務する当時57歳の男性教諭が、声を出してあくびをした児童に感情的になり、左頬を右手の平手で1回叩いた事案だ。
この教諭に科された処分は戒告だった。
今回の中学校教諭は減給、昨年の小学校教諭は戒告。
どちらも感情的になって児童生徒を平手で1回叩いた事案だが、処分には違いがある。
もっとも、叩いた部位や強さ、当時の状況、処分に至るまでの対応などが同じとは限らない。処分が異なることだけを理由に、不公平だと断定することもできない。
それでも、処分の違いが生じた理由は、教育行政の判断を理解するうえで重要な点となる。
保護者が「学校から説明がない」と連絡 どう受け止めるか
もう一つ、今回の事案で考えたいのが保護者の対応だ。
体罰を受けた男子生徒は、別の教員に相談した。学校側はこの段階で問題を把握していたという。
ところが、教育委員会への報告は行われなかった。
2025年5月になって、保護者が地元の教育委員会に対し、学校から説明がないと連絡したことで、道教委が事態を把握した。
平手で1回叩かれただけで、教育委員会にまで連絡する必要があったのか。
そう疑問を感じる人もいるかもしれない。
一方で、保護者の立場からすれば、自分の子どもが教師に叩かれたにもかかわらず、学校から十分な説明を受けていないと感じれば、事実関係を確認したいと考えるのも不自然ではない。
ここで注意したいのは、保護者が教師への減給処分を要求したと確認されたわけではないことだ。
報じられているのは、学校から説明がないという申し出である。
事実を知りたいという要求と、教師に重い処分を求めることは同じではない。
保護者の対応を過剰だと決めつける前に、学校が何を説明し、何を説明しなかったのかを確認する必要がある。
校長も戒告 問題は体罰だけではなかった
道教委は、58歳の男性校長についても戒告処分とした。
理由は、教諭が生徒を叩いた事案を把握していながら、教育委員会への報告を怠ったことだ。
今回の一連の経過で、校長の対応は見過ごせない。
生徒は別の教師に相談していた。つまり、学校内では問題が認識されていた。
にもかかわらず、必要な報告が行われず、保護者の申し出をきっかけに道教委が問題を把握することになった。
校長が速やかに報告し、学校として事実を確認したうえで保護者に説明していれば、その後の経過は違っていた可能性もある。
ただし、校長がなぜ報告しなかったのか、保護者に対して学校側がどのような対応を取っていたのかは、今回の公表資料では明らかになっていない。
校長の戒告処分は、教育委員会への報告を怠ったことに対するものであり、保護者への説明不足そのものを処分理由としたものではない。
体罰を認めないことと、処分の重さを議論することは別
学校教育法第11条は、教員による体罰を禁止している。
居眠りをしていたから叩いてよいということにはならないし、けががなかったから体罰ではないということにもならない。
一方で、体罰に該当する行為に対し、どの程度の処分を科すべきかは別の問題だ。
戒告で十分だったのか。減給まで必要だったのか。
処分の判断には、行為の悪質性だけでなく、繰り返しの有無や事後対応なども関係する。
今回の報道で確認できるのは、生徒の頭頂部を平手で1回叩いたこと、けがはなかったこと、教師が反省を示していることだ。
それ以外に処分を重くした事情があったのかは明らかになっていない。
体罰を許さないという原則を守ることと、処分の公平性や説明の十分さを検証することは両立する。
教育現場に必要なのは、叩くことを認めるかどうかだけの議論ではない。教師が適切に指導できる環境と、問題が起きた際に学校が誠実に対応する仕組みを整えることでもある。
体罰から処分まで約1年9か月
今回の体罰は2025年2月ごろに発生し、保護者が教育委員会に連絡したのは同年5月だった。
懲戒処分が決まったのは2026年11月5日。体罰から約1年9か月が経過している。
道教委がその間にどのような調査を実施したのか、処分決定まで時間を要した理由については、詳しい説明が確認できていない。
教師と校長の双方が処分された今回の事案では、体罰の事実だけでなく、その後の報告、保護者対応、調査の進め方も検証すべき課題として残る。
編集部まとめ
居眠りした中学生の頭を平手で1回叩いた教師に、減給処分は重かったのか。
体罰を禁止する法律がある以上、教師の行為を正当化することはできない。
しかし、傷害を伴わない体罰の標準処分が戒告とされている中で、なぜ今回は減給だったのか。その判断理由は、もっと丁寧に説明されてもよいはずだ。
保護者の申し出についても同様である。
平手打ち1回をどう受け止めるかという意見の違いはあっても、学校から説明がないと感じた保護者が事実確認を求めることと、重い処分を求めることは区別しなければならない。
そして何より、学校側は体罰を把握していた。
なぜ校長は報告しなかったのか。
今回の問題を単なる「叩いた教師と訴えた保護者」の対立として捉えてしまえば、学校側の説明責任と報告体制という重要な問題が見えなくなる。
教師の指導、保護者の対応、教育委員会の処分。それぞれの妥当性を、確認された事実に基づいて考える必要がある。
特記事項
北海道教育委員会の2026年11月5日付懲戒処分資料によると、処分を受けた男性教諭と男性校長はいずれも58歳。教諭は減給10分の1(1か月)、校長は戒告となった。
学校名や具体的な市町村名は公表されていない。
道教委の懲戒処分指針では、傷害を伴わない体罰の標準処分は戒告とされている。ただし、個別の事情に応じて処分を加重することは認められており、今回の減給が指針に違反すると確認されたものではない。
また、保護者が減給処分を要求した事実は確認されていない。
週刊TAKAPI編集部/成田
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