愛知県教育委員会が2026年度の優秀教職員93人を表彰することを受け、週刊TAKAPIは東三河から選ばれた13人の教育実践と、地域の教育環境について調べた。
豊橋市からは5人が選ばれ、日本語指導や特別支援教育、授業改善、若手教員の育成など、幅広い分野での功績が評価されている。
一方、豊橋市教育委員会の議会答弁や事業報告書を確認すると、外国人児童生徒への日本語指導について、教員の配置や相談員の確保に課題があることが分かった。
2025年3月の市議会では、日本語指導を担当する加配教員がいない学校が27校あり、対象となる児童生徒61人を巡回相談員らが支援していると説明。指導機会が週1回に満たない場合もあるとして、学校による支援体制の違いを認めていた。
教育現場で成果を上げた教員を表彰する一方、その実践を支える制度は十分に整っているのか。公表資料から検証する。
27校61人に専任加配なし 市教育長が明かした実態
豊橋市議会の2025年3月定例会で、外国人児童生徒への日本語指導が取り上げられた。
市教育長の説明によると、日本語指導が必要な子どもの在籍数が一定の基準に達した学校には、県から担当教員が加配され、通常学級とは別に日本語や教科内容を学ぶ「国際教室」が設けられる。
しかし、当時は27校がその配置基準を満たさず、加配教員がいない状況だった。
こうした学校では、主に教務主任などが週に数時間、児童生徒を通常学級から取り出して指導し、教育委員会の巡回相談員が教材提供や日本語指導の補助を担っていた。
市は、日本語教育相談員6人とバイリンガル相談員8人の計14人が、校内の教員と協力して61人を支援していると説明した。
その一方、専門性のある指導を継続的に行いにくく、巡回相談員とともに学ぶ時間が週1回に満たない場合もあると認めている。
加配教員がいないことは、支援がまったく行われていないことを意味しない。ただ、必要な日本語指導をどの程度受けられるかが、在籍校の配置体制によって左右されるという問題がある。
初期支援の入級率87.2% 通えない子どもへの対応も課題
豊橋市は、日本語を十分に理解できない状態で来日した児童生徒に対応するため、初期支援コース「みらい東」「みらい西」「きぼう」を設けている。
2025年にまとめられた市教育振興基本計画の総括報告書によると、2024年度の初期支援コース入級率は87.2%で、前年度の85.6%から改善したものの、目標の90%には届かなかった。
市は、保護者による送迎や児童生徒自身の登下校が難しいことから、初期支援を必要としていても入級できないケースがあると分析している。
また、同年度に日本語指導が必要な児童生徒へ取り出し指導を行った割合は60.6%だった。
この数値は、残る39.4%が日本語指導をまったく受けていないことを示すものではない。取り出し指導以外の支援もあるため、実際の指導時間や方法を含めた検証が必要になる。
相談員の退職と補充難 2025年度も負担増
支援体制のもう一つの課題が、人材の確保だ。
2025年3月の市議会で、教育長はバイリンガル相談員が複数の学校を掛け持ちし、保護者面談や通訳、学校からの文書の翻訳などを担っていると説明した。
賃金などの処遇面を理由に毎年数人の退職者が出ており、その補充も円滑に進んでいないという。
さらに、文部科学省が公開している豊橋市の2025年度事業報告書でも、外国人児童生徒の編入が増える一方、相談員や午前中に常駐する母語支援者を増員できず、担当者1人当たりの負担が増加していると記されている。
市はオンライン通訳の活用や、翻訳業務を集約する仕組みの検討などを進めているが、言語の多様化や子どもたちの居住地域の広がりに対応できる人員体制をどう確保するかが問われている。
表彰された教育実践を地域全体へ
今回、豊橋市立鷹丘小学校の坂柳言衣教諭は、日本語初期支援コース「みらい西」の運営や教材開発などの功績で受賞者として紹介されている。
日本語指導は、来日した子どもが学校生活に慣れるための支援にとどまらない。教科の内容を理解し、進路を選択するための学習基盤にも関わる。
2025年度の市の事業報告書では、個別の指導計画や教材を学校間で共有する取り組みが示される一方、初期支援コース修了後も在籍校で継続的に指導できる体制の整備が課題とされている。
優れた実践が特定の教員の経験や力量だけに依存していないか。その成果がほかの学校へどのように広がり、児童生徒の学習にどのような効果をもたらしたのか。
表彰された個人の功績と、教育行政が確保すべき支援体制は分けて評価する必要がある。
編集部まとめ
豊橋市が進めてきた外国人児童生徒への日本語教育には、初期支援コースの拡充や、学校間での教材共有といった積み重ねがある。
一方、2025年の議会答弁では加配教員の配置に地域内の差があることが明らかにされ、2025年度の事業報告書でも相談員などの人員確保が課題として残った。
今回の表彰を機に検証すべきなのは、優秀な教員が何人いるかだけではない。そうした教員の実践を、支援が必要な子どもたちへ広く届けられる仕組みが整っているかという点だ。
2026年度の加配状況や相談員の配置、巡回指導の頻度に改善が見られるのか。市が説明してきた課題の、その後が問われている。
特記事項
本記事は、愛知県教育委員会の2026年度教職員表彰に関する公式発表、豊橋市の2025年3月市議会教育関係答弁、豊橋市教育振興基本計画前期計画総括報告書、文部科学省公開の豊橋市2025年度事業報告書、および本紙の先行記事を基に構成した資料検証記事です。
27校61人、相談員14人は2025年3月の答弁時点、初期支援コース入級率87.2%などは2024年度実績です。受賞者の氏名・功績については県の名簿原本との最終照合が必要です。
2026年10月現在の配置状況や支援人数について、市への個別取材による確認は行っていません。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
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