北海道 同時進行の2つの裁判 若者たちの命を奪った暴力の果てに

旭川女子高生殺害事件と江別大学生集団暴行死事件 5月25日、2つの法廷で始まった重大公判

2026年5月25日、北海道の2つの法廷で、若者同士の事件をめぐる重大な初公判が開かれました。

旭川地裁では、留萌市の女子高校生、当時17歳が神居古潭の橋付近から石狩川に転落して死亡した事件。札幌地裁では、千歳市の大学生、長谷知哉さん、当時20歳が江別市内の公園で集団暴行を受け死亡した事件。

被害者はいずれも10代後半から20歳の若者でした。加害者側とされる人物も、20歳前後の若者が中心です。SNS上の画像使用、交際をめぐるもめごと、謝罪の強要、複数人で一人を追い詰める行為。2つの事件は別々に起きましたが、法廷で問われる内容には共通する点があります。

それは、若者同士のトラブルが、なぜ命を奪うほどの暴力にまで進んだのかという点です。

旭川事件 内田梨瑚被告は殺人罪を否認

旭川女子高生殺害事件の初公判は、旭川地裁で開かれました。殺人、不同意わいせつ致死、監禁の罪に問われているのは、旭川市の無職、内田梨瑚被告(23)です。

事件は2024年4月18日夜から19日未明にかけて起きました。起訴状などによると、被害者の女子高校生は、留萌市内から車で連れ回され、旭川市神居古潭まで監禁されました。その途中、コンビニなどで顔を殴られるなどの暴行を受けたとされています。

その後、神居大橋付近で衣服を脱ぐよう指示され、その様子を撮影されるなどしたうえ、橋の欄干に座らされました。検察側は、内田被告らが「落ちろ」「死ねや」などと脅し、女子高校生を川に転落させて死亡させたと主張しています。

初公判で、内田被告は殺人罪について否認しました。

「私には殺意はありませんでしたし、橋から落下させていません。そのほかの部分については弁護人にお任せします」

この言葉により、裁判の争点は明確になりました。内田被告に殺意があったのか。橋から落下させた実行行為があったのか。共犯者との共謀があったのか。さらに、不同意わいせつ行為と死亡との因果関係が認められるのか。

すでに懲役23年の実刑判決が確定している小西優花受刑者の証言も、今後の審理で大きな焦点になります。小西受刑者は、被害者が転落した場面をめぐって、内田被告の関与を示す証言をするとみられています。一方、内田被告側は殺意も実行行為も否定しています。

法廷で問われるのは、被害者が橋の上でどのような状態に置かれていたのか、転落の直前に誰が何をしたのか、そしてその場にいた者たちが死亡の危険をどこまで認識していたのかです。

この事件の初公判には、23席の傍聴席を求めて300人を超える人が並んだと報じられています。社会の関心は、単に「誰が押したのか」だけではありません。17歳の高校生が深夜の橋の上に追い詰められた過程そのものに向けられています。

判決は6月22日に言い渡される予定です。

江別事件 川村葉音被告ら3人は起訴内容を認める

同じ5月25日、札幌地裁では、江別市の大学生集団暴行死事件の裁判員裁判も始まりました。

2024年10月、江別市内の公園で、千歳市の大学生、長谷知哉さんが男女6人から集団暴行を受け死亡した事件です。強盗致死などの罪に問われている6人のうち、初公判を迎えたのは川村葉音被告(21)、滝沢海裕被告、少年の3人です。

3人はいずれも、起訴内容を認めました。川村被告は、裁判で「間違いありません」と述べました。裁判官から、ほかの人たちと共に行ったことかと問われた際にも、「間違いありません」と答えています。

起訴状などによると、3人は、長谷さんの交際相手だった八木原亜麻被告らと共謀し、江別市内の公園で長谷さんに暴行を加えて死亡させたうえ、現金やカードを奪ったとされています。

この裁判では、事実関係そのものは大きく争われず、量刑が主な争点になります。誰がどの場面で暴行に加わったのか。金品を奪う行為にどの程度関与したのか。止める機会はあったのか。事件後、被告らが何をしたのか。裁判員は、被告ごとの役割を一つずつ見ていくことになります。

江別事件の重さは、集団で一人を囲み、暴行が続いたとされる点にあります。被害者は20歳の大学生でした。交際をめぐるもめごとが発端とされていますが、法廷で問われるのは、交際関係の問題ではありません。

複数人が一人を呼び出し、暴行を加え、金品を奪い、命を失わせたとされる行為です。

川村被告ら3人の判決は6月25日に予定されています。主犯格とされる他の被告らの公判も控えており、今後は被告ごとの役割と責任がさらに分けて審理されます。

2つの事件が示したもの

旭川事件と江別事件は、場所も時期も違います。被害者も、加害者側とされる人物も違います。しかし、共通している点があります。

一つは、若者同士のトラブルが、短時間で暴力に進んだことです。

旭川事件では、SNS上の画像使用をめぐるトラブルが発端とされています。江別事件では、交際をめぐるもめごとが発端とされています。どちらも、最初から人の命を奪う事件として始まったわけではありません。

しかし、謝罪を求める、相手を呼び出す、複数人で囲む、撮影する、脅す、金品を奪う。こうした行為が積み重なった先に、若者の命が失われました。

もう一つは、集団の中で誰も止められなかったとされる点です。

一対一なら踏みとどまれたかもしれない場面でも、複数人になると、言葉は強くなり、行為は過激になります。スマートフォンで撮影する行為は、相手を助けるためではなく、支配や見せしめの道具になってしまうことがあります。

裁判で問われるのは、雰囲気や空気ではありません。誰が、どこで、何をしたのか。どの行為が死亡に結びついたのか。止める機会があったのか。刑事裁判は、その一つ一つを証拠で確認する場です。

被害者側にも落ち度があった、という主張が出る事件もあります。しかし、刑事裁判で中心になるのは、被告らが何をしたかです。画像使用や交際をめぐる不満があったとしても、それは監禁、暴行、脅迫、金品奪取、死亡結果を正当化する理由にはなりません。

失われた命を、法廷がどう受け止めるか

5月25日、旭川地裁と札幌地裁で始まった2つの裁判は、北海道で起きた若者同士の重大事件を、法廷で一つずつ見直す時間でもあります。

旭川事件では、内田梨瑚被告が殺人罪を否認しました。争点は、殺意、実行行為、共謀、死亡との因果関係です。

江別事件では、川村葉音被告ら3人が起訴内容を認めました。争点は、被告ごとの役割と刑の重さです。

2つの裁判は、結論も争点も異なります。しかし、どちらの法廷にも共通しているのは、若者の命が失われたという事実です。

「謝らせる」「分からせる」「動画を撮る」「仲間と囲む」。その場では軽く見えた行為が、取り返しのつかない結果につながることがあります。

旭川事件の判決は6月22日。江別事件の3人に対する判決は6月25日。2つの判決は、北海道で相次いだ若者同士の重大事件に対し、裁判所がどのような判断を示すのかを伝えるものになります。

私たちが見るべきなのは、事件の残酷さだけではありません。若者同士の関係が、どの場面で暴力に変わったのか。周囲の誰が止められたのか。次の被害者を出さないために、学校、家庭、地域、SNS運営側、警察がどの段階で介入できるのか。

2つの裁判は、失われた命に向き合うだけでなく、同じような事件を二度と起こさないための問いを、社会全体に突きつけています。

動画解説

編集部まとめ

2026年5月25日、北海道では2つの重大事件の初公判が同時期に開かれました。

旭川女子高生殺害事件では、内田梨瑚被告が殺人罪を否認し、「私には殺意はありませんでしたし、橋から落下させていません」と述べました。今後は、小西優花受刑者の証言や現場での行為、死亡との因果関係が争点になります。

江別大学生集団暴行死事件では、川村葉音被告ら3人が起訴内容を認めました。今後は、各被告の役割分担、暴行や金品奪取への関与、反省の度合いが量刑判断の中心になります。

2つの事件はいずれも、若者同士のトラブルが暴力に進み、命が失われた重大事件です。法廷で明らかになる事実は、刑事責任の判断だけでなく、若者を暴力から遠ざけるために何が必要かを考える材料になります。

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