【神奈川県立新城高校いじめ重大事態】「572日間終わらない苦しみ」 被害生徒と保護者が問う学校対応の責任

神奈川県教育委員会は2026年3月25日、神奈川県立新城高等学校で発生した吹奏楽部内のいじめについて、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」と認定し、第三者委員会による調査報告書を公表した。

報告書では、複数の生徒が一人の生徒に対して行った行為について「多数対一のいじめ」と認定している。

一方で、被害生徒と保護者が提出した所見書については公表されていない。

今回の事案では、いじめそのものだけでなく、学校が初期段階でどのように対応したのか、また被害生徒の訴えをどのように受け止めたのかについても議論が続いている。

吹奏楽部内で発生したいじめ

第三者委員会の報告書によると、問題は2024年に吹奏楽部内で発生した。

認定された行為には、

  • 写真撮影からの排除
  • 寄せ書きへの参加拒否
  • 欠席理由の執拗な追及

などが含まれている。

また、加害生徒が副顧問へ働きかけを行っていたことも認定されており、第三者委員会は複数生徒による継続的な行為と判断した。

学校は当初いじめと認定せず

保護者によると、問題発生当初から学校へ相談を行っていたという。

しかし学校側は当初、この問題をいじめとして認定せず、生徒間の人間関係のトラブルとして対応していたとされる。

第三者委員会は、学校がいじめとして扱わず、生徒同士の話し合いを中心とした対応を行ったことが、被害生徒のうつ状態や長期不登校につながった可能性を指摘している。

保護者は当時を振り返り、

「学校が少し注意するだけでやめるような人なら、最初からいじめはしない」

と話している。

SNS誹謗中傷の相談も

保護者によると、2024年12月には娘に対するSNS上での誹謗中傷や、一部生徒による不適切な言動について学校へ相談していたという。

学校は関係生徒への聞き取りを実施したが、生徒側が「やっていない」と説明したため、それ以上の対応は行われなかったとしている。

保護者は、

「この時にもっと踏み込んだ対応や指導が行われていれば、その後の被害拡大を防げたのではないか」

との思いを抱いているという。

被害生徒に深刻な影響

被害生徒はその後、

  • 不眠
  • フラッシュバック
  • 味覚障害
  • 円形脱毛

などの症状を発症した。

さらに保護者によると、ストレスの蓄積によりメニエール病も発症したという。

めまいや吐き気、難聴の症状が現れ、学校生活にも大きな支障が生じたとしている。

生徒本人は所見書の中で、

「572日間にわたり生活への影響が続いた」

と記している。

また、長年打ち込んできた吹奏楽についても、当時演奏していた楽曲を聞くだけで強い反応が出るようになり、演奏への意欲を失ったとされている。

「排除の過程だった」とする所見書

被害生徒と保護者が第三者委員会へ提出した所見書では、学校対応全体について、

「被害生徒を孤立させる排除の過程だった」

と指摘している。

加害側の説明が十分に検証されなかったことや、被害生徒の訴えが軽視されたこと、学校管理職が「加害も被害もない」との認識を示していたことなどが記されているという。

また、学校が作成した記録についても、事実と異なる内容や矛盾があるとして信頼性に疑問を呈している。

前校長らが謝罪

保護者によると、その後、前校長と前副校長から謝罪があったという。

その際、

「これまでの対応はすべて間違っていた」

との説明があったとされる。

しかし一方で、

「できることには限界がある」

「もう終わったこと」

との説明もあったという。

保護者側は、謝罪だけでなく、なぜ対応が適切に行われなかったのかについての十分な検証や説明を求めている。

問われる初期対応

神奈川県教育委員会は再発防止について学校へ必要な指導を行うとしている。

しかし被害生徒側が問題視しているのは、重大事態認定後ではなく、被害を訴え始めた初期段階の対応だ。

相談があったにもかかわらず、なぜ早期にいじめとして対応できなかったのか。

なぜ被害生徒の訴えが十分に受け止められなかったのか。

なぜ被害が深刻化するまで状況を改善できなかったのか。

新城高校の事案は、いじめ発生後の学校対応そのものが問われたケースとして、今後も検証が続くことになりそうだ。

【編集部コメント】

いじめ重大事態の報告書が公表されるたびに感じることがある。

多くのケースで、被害者や保護者は問題が深刻化する前から学校へ相談している。

今回の新城高校の事案でも、保護者はSNS上での誹謗中傷や生徒間のトラブルについて学校へ相談していたという。

しかし結果として、第三者委員会は後に「多数対一のいじめ」と認定した。

もちろん学校現場が全ての事実を即座に把握することは容易ではない。

一方で、いじめ問題では「加害者が否定したから終わり」「証拠がないから様子を見る」という対応が、結果的に被害を長期化させてしまうケースも少なくない。

今回、被害生徒は約572日間にわたり生活への影響を受けたと訴えている。

失われた時間は戻らない。

失われた学校生活も戻らない。

そして、好きだった吹奏楽にさえ苦しみを感じるようになったという事実は重い。

重大事態認定はゴールではなくスタートである。

なぜ初期段階で救えなかったのか。

なぜ被害者の声が十分に届かなかったのか。

学校、教育委員会、そして社会全体が検証を続けなければ、同じ苦しみを抱える子どもたちは今後も生まれ続けるだろう。

私たちは、この問題が「終わった出来事」として扱われることなく、再発防止につながる議論が続くことを願いたい。

Q. 神奈川県立新城高校のいじめ問題とは?

A. 吹奏楽部内で複数の生徒が一人の生徒に対して行った行為について、神奈川県教育委員会が重大事態と認定したいじめ事案です。

Q. 第三者委員会は何を認定した?

A. 写真撮影からの排除、寄せ書きへの不参加、欠席理由の執拗な追及などを「多数対一のいじめ」と認定しました。

Q. 被害生徒にはどのような影響があった?

A. 不眠、フラッシュバック、味覚障害、円形脱毛、メニエール病などの症状が現れ、長期不登校にもつながったとされています。

Q. 保護者は学校対応の何を問題視している?

A. 学校が当初いじめと認定せず、被害生徒の訴えより加害側の説明を重視したことや、十分な初期対応が行われなかった点を問題視しています。

Q. 所見書は公開されている?

A. 第三者委員会の報告書は公表されていますが、被害生徒と保護者が提出した所見書は公表されていません。

Q. この事案の最大の論点は?

A. いじめ認定そのものではなく、被害生徒や保護者から相談があった段階で、学校が適切な初期対応を取れていたのかという点です。

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