2026年4月20日に三陸沖で発生したマグニチュード7.7の地震後、震源周辺で「ゆっくりすべり」と呼ばれる断層の動きが加速していることが分かった。
政府の地震調査委員会は5月14日、この現象について、今後さらに加速した場合、周辺でマグニチュード7から8以上の大きな地震が発生する可能性があるとして、引き続き地震への備えを呼びかけている。
今回の動きが注目される理由は明確だ。ゆっくりすべりは、2011年の東日本大震災前にも確認されていた現象だからだ。
もちろん、ゆっくりすべりが確認されたからといって、必ず大地震が起きるわけではない。しかし、三陸沖から青森県東方沖にかけての海域では、2025年秋以降、地震活動や微動が続いており、専門家は一連の変化を注意深く見ている。
4月20日、三陸沖でM7.7 青森で震度5強、久慈港では80センチの津波
地震は4月20日午後4時52分ごろに発生した。震源は三陸沖で、深さは約20キロ。地震の規模はマグニチュード7.7だった。
青森県階上町では最大震度5強を観測し、北海道から近畿地方にかけて広い範囲で揺れが確認された。岩手県久慈港では約80センチの津波も観測され、北海道・東北の太平洋沿岸には津波警報や津波注意報が発表された。
この地震を受け、気象庁は同日夜、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表した。これは、北海道の根室沖から三陸沖にかけての想定震源域で、より大きな地震が発生する可能性が平常時より高まった場合に出される情報だ。
4月27日午後5時には、政府としての特別な注意の呼びかけ期間は終了した。ただし、気象庁は「大規模地震発生の可能性がなくなったわけではない」として、家具の固定、避難場所や避難経路の確認など、日頃の備えを続けるよう求めている。
地下では2025年秋から変化が続いていた
今回の地震は、突然単独で起きたものではない可能性がある。
東北大学災害科学国際研究所の資料では、2025年11月9日の三陸沖M6.9地震以降、周辺でスロースリップ、つまりゆっくりすべりが進み、群発地震活動が発生していたとされる。さらに、2026年4月20日の地震前まで、その動きは続いていたとみられている。
ゆっくりすべりとは、人が揺れとして感じる通常の地震とは違い、プレート境界が数日から数週間、あるいはそれ以上の時間をかけてゆっくり動く現象を指す。
この動き自体は、必ずしも強い揺れを起こさない。しかし、断層の一部がゆっくり動くことで、周辺の動いていない場所に力が移ることがある。そこに大きなひずみがたまっていれば、別の地震を誘発する可能性がある。
今回、政府の地震調査委員会が問題視しているのは、4月20日の地震後に、このゆっくりすべりが震源周辺で加速している点だ。
なぜ「東日本大震災前にも確認」が重いのか
ゆっくりすべりという言葉だけを見ると、読者には危機感が伝わりにくい。だが、この現象が注目されるのは、過去の巨大地震との関連があるためだ。
2011年の東日本大震災前にも、東北沖ではゆっくりすべりが確認されていた。今回も三陸沖の震源周辺で同じ種類の動きが観測されており、専門家は「さらに加速した場合、M7から8以上の地震が周辺で発生する可能性がある」としている。
一方で、ここで重要なのは、これを「巨大地震の予言」と受け止めないことだ。
ゆっくりすべりが起きても、大きな地震に直結しないケースはある。実際、三陸沖では過去にも似たような活動が確認されながら、巨大地震には至らなかった例もある。
つまり、今回の発表で伝えるべきことは、「必ず来る」ではない。
正しくは、地震が起きやすい海域で、注意すべき地下の動きが続いているということだ。
1994年の震源域にも警戒 「未破壊」の場所に残るひずみ
三陸沖から青森県東方沖にかけては、過去にも大きな地震を繰り返してきた海域だ。
1968年の十勝沖地震、1989年の三陸沖地震、1994年の三陸はるか沖地震、2011年の東北地方太平洋沖地震など、M7から8級の地震が複数発生している。
東北大学の分析では、今回の2026年三陸沖地震は、過去の三陸沖地震の震源域付近で起きた可能性がある。一方で、1994年の三陸はるか沖地震の震源域については、まだ大きく動いていない場所が残っているとされ、長年にわたりひずみが蓄積しているおそれが指摘されている。
産総研の解析でも、4月20日の本震後に微動活動が続き、南北方向に広がる動きが観測されている。ただし、この微動が1994年の震源域にどこまで影響するかは、現段階では不明だ。
ここが今回の報道で最も大切な部分になる。
分かっていることは、地下で動きが続いているという事実。
分かっていないことは、それが次の大地震に直結するかどうかだ。
「注意情報終了」でも備えを終えてはいけない
4月20日の地震後に出された「北海道・三陸沖後発地震注意情報」は、4月27日に特別な注意の呼びかけ期間を終えた。
しかし、それは安全宣言ではない。
気象庁は、注意情報の期間が終わっても、大規模地震発生の可能性がなくなったわけではないとしている。また、先に大きな地震が起きず、突然大規模地震が発生する可能性もあると説明している。
これは、東北や北海道だけの話ではない。
三陸沖や日本海溝沿いの地震では、強い揺れに加えて津波が問題になる。沿岸部に住む人、仕事で海沿いに行く人、旅行中の人も、避難場所と避難経路を確認しておく必要がある。
とくに必要なのは、難しい防災知識ではない。
家具を固定する。
寝室に倒れてくる棚を置かない。
水、食料、モバイルバッテリー、常備薬を用意する。
家族と集合場所を決める。
海沿いでは高台への道を先に確認する。
旅行先でも、宿泊施設の避難経路を見る。
こうした行動が、次の揺れや津波のときに生死を分ける。
編集部まとめ
三陸沖では、2025年秋以降、地震活動やゆっくりすべりが続いていた。4月20日のM7.7地震後、その震源周辺でゆっくりすべりが加速していることが確認された。
この現象は東日本大震災前にも確認されており、さらに加速すれば、周辺でM7から8以上の地震が発生する可能性は否定できない。
ただし、今回の発表は「大地震が必ず来る」という話ではない。必要なのは、不安を広げることではなく、今日できる備えを済ませることだ。
地震は、発生時刻を選ばない。
職場、学校、旅行先、車内、商業施設、海沿いの道路で起きることもある。
三陸沖の地下で続く動きは、私たちにこう伝えている。
注意情報が終わっても、防災は終わらない。

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