「これ以上やめてください」は聞こえていた

江別大学生集団暴行死裁判 川村葉音被告「何も考えていなかった」 遺族に謝罪も法廷で示された暴行現場の冷たさ

「これ以上やめてください」

暴行を受けていた20歳の大学生の訴えは、被告の耳に届いていた。

それでも、止めなかった。

北海道江別市の公園で2024年10月、大学生の長谷知哉さんが集団暴行を受け死亡した事件の裁判員裁判で、強盗致死などの罪に問われている川村葉音被告(21)が5月27日、札幌地裁で被告人質問に臨んだ。

川村被告は遺族に対し、声を震わせながら謝罪した。

「痛い思いや苦しい思いをさせ、大切な1人の命を奪ってしまい、本当に申し訳ありませんでした」

しかし、その後の質問で示されたのは、謝罪の言葉とはかけ離れた事件当時の認識だった。

検察側から、長谷さんが暴行中に「これ以上やめてください」と訴えていた声が聞こえていたか問われると、川村被告は聞こえていたことを認めた。

それでも暴行を止めなかった理由について、川村被告は「何も考えていなかった」と述べた。

「胸は痛まなかったのか」 検察側の質問に示された答え

法廷では、暴行現場での川村被告の行動が問われた。

検察側は、目の前で長谷さんが暴行を受けている状況について、「胸は痛まなかったのか」とただした。

川村被告は、交際相手の八木原亜麻被告と話していたため、気にしなかったという趣旨の説明をした。

主犯格とされる当時18歳の男については、「キレたら怖い」と感じていたと述べた。

自分も暴力を振るわれると思った。

だから止められなかった。

川村被告は、そうした内容を法廷で語った。

だが、被害者の声は聞こえていた。

「これ以上やめてください」

その訴えを聞いたうえで、川村被告は「何も考えていなかった」と述べた。

この一言が、公判で最も重く響いた。

もう1人の女被告は「悪い雰囲気になると思った」

同じ日の公判では、瀧澤海裕被告への被告人質問も行われた。

瀧澤被告は、長谷さんに飛び蹴りをした理由について、暴力を振るっていなかったのが自分だけだったため、「悪い雰囲気になると思った」と説明した。

置いていかれるのが怖かったとも述べた。

「怖かった」

「悪い雰囲気になると思った」

「何も考えていなかった」

法廷で並んだ言葉は、いずれも加害者側が自分の行動を説明するために使ったものだった。

しかし、その間も長谷さんは公園で暴行を受け続けていた。

2時間以上の暴行 衣服を身につけていない状態で発見

事件は2024年10月、江別市内の公園で発生した。

長谷さんは、交際相手だった八木原亜麻被告らに呼び出され、複数人から暴行を受けたとされる。

起訴内容などによると、被告らは金品を奪う目的で長谷さんに暴行を加え、死亡させたとされている。

長谷さんは、衣服を身につけていない状態で倒れているのが見つかった。

検察側は、暴行が2時間以上に及んだと指摘している。

長谷さんは全身に暴行を受け、血液の20〜30%を失い、外傷性ショックで死亡したとされる。

暴行は、殴る、蹴る、踏みつける行為を含むものだった。

金品を奪う目的で始まった行為は、長谷さんの命を奪う結果に至った。

奪った金でラーメンを食べに行った者も

公判では、事件後の被告らの行動も焦点になっている。

長谷さんに暴行を加えた後、奪った金でラーメンを食べに行った者もいたとされる。

長谷さんが公園で倒れていた後、被告らがどのような認識でその場を離れたのか。

暴行を止める機会はなかったのか。

長谷さんが助けを求める声を、誰が聞いていたのか。

裁判では、被告ごとの行動と責任が問われている。

この事件では、八木原亜麻被告、川村葉音被告、瀧澤海裕被告、川口侑斗被告、当時少年だった2人のあわせて6人が、強盗致死罪などで起訴されている。

川村被告ら3人は、初公判で起訴内容を認めている。

動画解説

遺族への謝罪と「何も考えていなかった」の差

川村被告は、法廷で遺族に謝罪した。

その言葉だけを見れば、反省を示す場面だった。

だが、同じ法廷で、被害者の「これ以上やめてください」という声を聞いていたことも認めた。

そして、止めなかった理由として「何も考えていなかった」と述べた。

この裁判で示されているのは、単なる暴行の回数ではない。

長谷さんが助けを求めた時、周囲にいた者たちは何をしたのか。

何をしなかったのか。

なぜ暴行は止まらなかったのか。

「怖かった」「悪い雰囲気になると思った」「何も考えていなかった」という言葉で、20歳の命が失われた現場を説明できるのか。

札幌地裁の裁判員裁判は、量刑判断に向けて進んでいる。

川村被告らの判決は6月25日に言い渡される予定である。

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編集部まとめ

江別大学生集団暴行死事件の裁判で、川村葉音被告は、被害者の「これ以上やめてください」という声を聞いていたことを認めた。

一方で、暴行を止めなかった理由について「何も考えていなかった」と述べた。

瀧澤海裕被告は、長谷さんに飛び蹴りをした理由について「悪い雰囲気になると思った」と説明した。

検察側は、長谷さんが2時間以上にわたり暴行を受け、外傷性ショックで死亡したと指摘している。

判決は6月25日に予定されている。

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