「治療のためです」休診日の診療室で何が起きたのか 静岡の歯科医師が起訴内容認める 患者の信頼を悪用した不同意わいせつ事件

静岡市内の歯科医院で、歯科治療を装って女性患者にわいせつな行為をしたとして、不同意わいせつ罪などに問われている歯科医師の男の初公判が、静岡地裁で開かれた。

被告は、静岡市内で歯科医院の院長を務めていた50歳の歯科医師。矯正治療などで通院していた女性患者らに対し、治療行為であるかのように装い、わいせつな行為に及んだとされている。

法廷で起訴内容を問われた被告は、「間違いありません」と述べ、起訴内容を認めた。弁護側も事実関係を争わない姿勢を示している。

検察側の冒頭陳述で明らかになったのは、医療機関への信頼を利用した犯行の経緯だった。

被告は、休診日を利用してスタッフを不在にし、患者を診療室に呼び入れていたとされる。診療台に患者を座らせ、顔にタオルをかけて視界を遮ったうえで、「歯列矯正のための舌の運動です」などと説明。患者に治療の一環だと信じ込ませ、わいせつな行為に及んだとされている。

さらに、行為の様子をスマートフォンで撮影していたことも検察側は指摘した。被害者の中には未成年者も含まれているとされ、不同意わいせつだけでなく、性的姿態等撮影や児童ポルノ禁止法違反にあたる行為も問題となっている。

歯科治療は、患者が診療台に身を預け、口の中を医師に任せる医療行為である。治療中、患者は医師の説明を信じるしかない場面が多い。顔にタオルをかけられ、何をされているのか確認しにくい状況で、「治療に必要」と説明されれば、その場で異議を唱えることは簡単ではない。

今回の事件の重大さは、そこにある。

被告は、歯科医師という専門職の立場、院長という肩書、患者との信頼関係、そして診療室という閉じられた空間を利用したとされる。これは単なるわいせつ事件ではない。医療行為を受ける患者の信頼を踏みにじる事件である。

法廷では、被害者側の意見陳述も行われた。被害女性は、事件後も当時のことを思い出し、苦しみが続いていると訴えた。母親も、歯科医師という立場を悪用した犯行を強く非難し、厳罰を求めた。

通院先で起きた被害は、被害者本人だけでなく、家族の生活にも深い影を落とす。治療だと信じて受け入れてしまったこと。医師に対して抱いていた信頼を裏切られたこと。その重さは、事件後も長く残る。

同業の歯科医師からは、治療中に少しでも違和感を覚えた場合、その場で治療を中断し、家族や別の医療機関、警察に相談することが重要だという声も出ている。

特に未成年者が一人で診療を受ける場合、保護者は診療日時、担当医、治療内容について確認しておく必要がある。休診日やスタッフ不在の時間帯に個別診療を求められた場合は、通常の診療体制と異なる理由を確認すべきだ。

警察には、これまでに立件された被害者以外からも相談が寄せられているとされる。被告は同じような手口で犯行を繰り返していた疑いがあり、捜査の範囲はさらに広がっている。

診療室は、患者が医師を信じて身体を預ける場所である。だからこそ、医療従事者には高い倫理と説明責任が求められる。

今回の裁判で問われているのは、1人の歯科医師の刑事責任だけではない。患者が安心して医療を受けられる環境を、どう守るのかという問題でもある。

裁判は今後、量刑に向けた審理へ進む。被告が法廷で何を語り、裁判所がどのような判断を示すのか。医療現場の信頼を揺るがした事件として、厳しい視線が注がれている。

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編集部まとめ

静岡市内の歯科医院で、院長だった歯科医師が患者への不同意わいせつ罪などに問われた。
被告は初公判で起訴内容を認めた。
検察側は、休診日やスタッフ不在の状況を利用し、治療行為を装って犯行に及んだと指摘した。
被害者の中には未成年者も含まれているとされる。
今後の裁判では、被害の広がり、撮影行為、医師としての立場を利用した悪質性が量刑判断の焦点になる。

この記事の要点Q&A

Q. 何が起きた事件ですか。
A. 静岡市内の歯科医院で、院長だった歯科医師が治療を装い、女性患者らにわいせつな行為をしたとして不同意わいせつ罪などに問われている事件です。

Q. 被告は初公判で何と述べましたか。
A. 起訴内容について「間違いありません」と述べ、事実関係を認めました。

Q. 事件の悪質性はどこにありますか。
A. 歯科医師という専門職の立場、院長という肩書、患者との信頼関係、診療室という閉じられた空間を利用したとされる点です。

Q. 今後の裁判の焦点は何ですか。
A. 被害の広がり、撮影行為、未成年者を含む被害、医師としての立場を利用した点が量刑判断の焦点になります。

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