新潟県立新潟工業高校の柔道部に所属していた高校3年の男子生徒(当時17)が2024年6月5日に自ら命を絶った問題で、母親(50)が報道機関の取材に初めて応じた。県教育委員会の第三者委員会は、この問題を県内初の「指導死」と認定している。母親は、監督だった男性教諭による叱責や突き放す言葉を振り返り、「何も悪いことをしていない息子を、なぜここまで追い詰めなければならなかったのか」と訴えた。
男子生徒は2024年6月2日、県総合体育大会で敗退した。試合後、監督は「助言に従わなかった」「お礼を言わなかった」などとして大声で叱責したとされる。帰宅後、生徒は家族に「部活をやめたい。すごく怒られた」と漏らしていた。
叱責はその後も続いた。特に6月4日の放課後練習では、監督が「帰れ」「あの負け方は何だ」「近づくな」「顔を見たくない」などと繰り返し突き放したとされる。男子生徒は「やらせてください」と頼んだが、聞き入れられなかった。着替え中に泣いていたとの証言もある。
問題となったのは、言葉だけではない。男子生徒は試合ノートの書き直しも求められていた。母親が手にした柔道ノートには、「敗れた者がもう一回勢いを盛り返す」と、前を向こうとする言葉が残されていた。しかし監督に気に入られる内容へ書き直すよう求められていたという。部活動の反省を書くはずのノートが、監督の顔色を見る作業になっていた可能性がある。
男子生徒は責任感が強く、家族を思う子だったという。大学進学ではなく就職を考え、家計を助けようとしていた。母親は、息子が柔道に真面目に向き合っていたことを知っていたからこそ、監督の言葉を受け続けた末に命を絶った現実を受け入れられないでいる。
県教委の第三者委員会は、監督の指導について「生徒の尊厳を踏みにじる人格否定」「権威的・過度な指導」と認定した。部活動内で監督の影響が強く、生徒が逆らいにくい状態に置かれていた点も問題視された。学校側の管理体制についても、監督任せの運営を防げなかった責任が問われている。
この学校では過去にも別の生徒が亡くなった事案があり、第三者委はその後の対応や再発防止が十分だったのかにも目を向けた。今回の指導死認定は、1人の監督だけの問題では済まされない。学校が部活動の現場をどこまで把握し、生徒のSOSをどう受け止めていたのかが問われている。
母親は、監督に対して「一生かけて償い、二度と教育に携わらないでほしい」と強い思いを示した。息子は何か重大な問題を起こしたわけではなかった。試合に負け、叱責され、突き放され、ノートの書き直しを求められ、最後には学校へ向かわなかった。
部活動の指導は、勝敗や礼儀を教える場である前に、生徒の命を守る場でなければならない。「帰れ」「顔を見たくない」という言葉が、17歳の生徒をどこまで追い詰めたのか。母親の初めての証言は、新潟工業高校だけでなく、全国の部活動指導に重い課題を突きつけている。
今後は、監督だった教諭への処分、学校と県教委の再発防止策、部活動現場での相談体制が焦点となる。第三者委が「指導死」と認めた後、学校が何を変えたのか。遺族が求めているのは、形式的な説明ではなく、同じように追い詰められる生徒を二度と出さないための具体的な対応だ。
合わせて読みたい
海星高校いじめ自殺訴訟 学校側に330万円賠償命令 第三者委報告書を拒否した学校対応も争点に
編集部まとめ
新潟工業高校柔道部の男子生徒が2024年6月に自ら命を絶った問題で、母親が2年を経て初めて取材に応じた。
第三者委員会は、監督の指導を県内初の「指導死」と認定した。
監督は「帰れ」「近づくな」「顔を見たくない」などと繰り返し叱責したとされる。
男子生徒は試合ノートの書き直しも求められ、部活動を続ける中で強い負担を抱えていた。
今後は、監督への処分、学校と県教委の責任、再発防止策の実効性が問われる。
事件のポイントQ&A
Q1. 新潟工業高校の指導死問題とは何ですか。
新潟工業高校柔道部の男子生徒が2024年6月に自ら命を絶った問題で、第三者委員会が監督の指導を県内初の「指導死」と認定した事案です。
Q2. 監督はどのような言葉をかけたとされていますか。
「帰れ」「あの負け方は何だ」「近づくな」「顔を見たくない」などと繰り返し叱責したとされています。
Q3. 試合ノートでは何が問題になっていますか。
男子生徒のノートには前向きな言葉が残されていましたが、監督に気に入られる内容へ書き直すよう求められていたとされています。
Q4. 母親は何を訴えていますか。
「何も悪いことをしていない息子を、なぜここまで追い詰めなければならなかったのか」と訴え、監督には二度と教育に携わらないでほしいとの思いを示しています。
Q5. 第三者委員会は何を認定しましたか。
監督の指導を「生徒の尊厳を踏みにじる人格否定」「権威的・過度な指導」とし、県内初の指導死と認定しました。
Q6. 今後の焦点は何ですか。
監督への処分、学校と県教委の責任、部活動の管理体制、再発防止策が実際に機能するかどうかです。

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます