2017年に長崎市の海星高校に通っていた男子生徒が亡くなった問題をめぐる損害賠償請求訴訟で、長崎地裁の判決を不服として福岡高裁に控訴した遺族が、代理人を通じてコメントを発表しました。
長崎地裁は6月8日の判決で、海星学園側のいじめ対応について安全配慮義務違反を認め、学園側に330万円の支払いを命じました。
一方で、遺族側が訴えていたいじめと男子生徒の死亡との相当因果関係については認めませんでした。
遺族は今回のコメントで、学校側の安全配慮義務違反が認められた点については「適切な判断」と評価しました。
その一方で、高校時代のいじめの一部が認定されなかったこと、いじめと死亡との因果関係が認められなかったこと、さらに学校側の事後対応について賠償義務が否定されたことについて「極めて不当」と訴えています。
地裁判決は安全配慮義務違反を認定
遺族側はコメントの中で、長崎地裁判決について、海星学園のいじめ対応の問題点を一定程度認めたものだと受け止めています。
判決では、海星学園について、いじめ防止基本方針が十分に周知徹底されていなかったことや、いじめかどうかを理事会が決める、当事者間で解決させるといった不適切な方針が取られていたと指摘されたとしています。
遺族は、こうした点について、学校側のいじめ対応のずさんさを裁判所が理解したものとして、適切な判断だったと評価しました。
ただし、遺族側は、判決が認めた範囲では不十分だとして控訴しています。
いじめと死亡の因果関係否定に「残念でならない」
遺族側が最も強く不服としているのは、いじめと男子生徒の死亡との相当因果関係が認められなかった点です。
コメントでは、第三者委員会の報告書と同様に、いじめ行為が男子生徒の死亡の要因の一つだったとの認定はあったとしています。
しかし、遺族側は、学校による対策や救済が期待できない状況では、いじめによる深刻な結果が十分に起こり得たこと、また適切な対策を取っていれば学校側がその危険を予見できたはずだと主張しています。
その点が認められなかったことについて、遺族は「残念でなりません」とコメントしました。
教員発言や事後対応の免責に強い不服
遺族側は、男子生徒が亡くなった後の学校側の対応についても強い不服を示しています。
コメントでは、事故後に海星高校の教員が「突然死にすることもできますよ」と発言したこと、第三者委員会の報告書を学校側が受け入れなかったこと、損害賠償請求権を放棄するよう打診してきたことなどについて、判決が事実として認定したにもかかわらず、賠償義務を否定した点を問題視しています。
遺族は、こうした判断について「遺族と亡くなった息子を侮辱するかのような海星の言動を裁判所が容認するようなもの」とし、「到底是認できません」と訴えています。
控訴で争われる3つの焦点
今回の控訴で、遺族側が争う主な焦点は大きく3つです。
1つ目は、男子生徒に対するいじめの一部が認定されなかった点です。
2つ目は、海星学園の安全配慮義務違反と男子生徒の死亡との相当因果関係が否定された点です。
3つ目は、学校側の事後対応について賠償義務が否定された点です。
遺族側は、これらの点が認められない限り、海星学園が真に生徒や保護者を守るために取り組むことは期待できないとして、福岡高裁に「勇気ある判断」を求めています。
学校いじめ訴訟で問われる「事前対応」と「事後対応」
今回の裁判は、単にいじめがあったかどうかだけを問うものではありません。
学校がいじめをどう把握し、どのように対応したのか。
生徒や保護者を守る体制があったのか。
そして、重大な結果が起きた後に、学校が遺族へどのように向き合ったのか。
こうした「事前対応」と「事後対応」の両方が問われています。
長崎地裁は、学校側の安全配慮義務違反を認めた一方で、死亡との因果関係や事後対応に関する賠償責任までは認めませんでした。
福岡高裁では、この判断が維持されるのか、それともより踏み込んだ認定がなされるのかが注目されます。
この裁判で分かっていること
何の裁判なのか
2017年に長崎市の海星高校に通っていた男子生徒が亡くなった問題をめぐり、遺族が学校側に損害賠償を求めている裁判です。
長崎地裁は何を認めたのか
長崎地裁は、海星学園側のいじめ対応について安全配慮義務違反を認め、学園側に330万円の支払いを命じました。
何が認められなかったのか
いじめと男子生徒の死亡との相当因果関係は認められませんでした。また、学校側の事後対応についても賠償義務は否定されました。
遺族はなぜ控訴したのか
いじめの一部が認定されなかったこと、死亡との因果関係が否定されたこと、学校側の事後対応について賠償義務が否定されたことを不服として、福岡高裁に控訴しました。
遺族は何を求めているのか
遺族は、学校側の対応の問題点や死亡との因果関係、事後対応の責任について、より踏み込んだ判断を求めています。
今後の焦点は何か
福岡高裁で、いじめ認定の範囲、学校の安全配慮義務違反と死亡との因果関係、事後対応の違法性がどのように判断されるかが焦点になります。
まとめ
長崎市の海星高校で男子生徒が亡くなった問題をめぐる訴訟で、遺族は長崎地裁判決を不服として福岡高裁に控訴しました。
地裁判決は、学校側の安全配慮義務違反を認めた一方で、いじめと死亡との相当因果関係や、学校側の事後対応についての賠償義務は認めませんでした。
遺族は、こうした判断を「残念」「極めて不当」とし、福岡高裁に対してより踏み込んだ判断を求めています。
学校いじめ問題では、いじめの有無だけでなく、学校が生徒を守るために何をしたのか、重大な結果が起きた後に遺族とどう向き合ったのかも問われます。
今後の高裁審では、地裁判決の判断がどこまで見直されるのかが大きな焦点になります。
本記事は、判決内容および遺族側コメントをもとに構成しています。控訴審は今後進行する予定であり、学校側の主張や裁判所の判断により内容が変わる可能性があります。続報が入り次第、追記・更新します。
担当記者:成田
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