京大病院で重大医療事故 脳腫瘍手術で正常な脳組織を摘出 50代女性、自発呼吸できず重篤

京都大学医学部附属病院で脳腫瘍手術中に医療事故、50代女性が重篤

京都大学医学部附属病院(京都市左京区)は7日、50代の女性患者に行った良性脳腫瘍の摘出手術で、本来取り除くべき腫瘍ではなく、正常な脳組織を誤って摘出する医療事故が発生したと発表した。

女性は生命維持に重要な脳幹を大きく損傷し、自発呼吸ができない重篤な状態が続いている。現在も人工呼吸器による管理が必要で、手足も動かないという。

病院は今回の事故を「極めて重大な事態」と位置づけ、外部委員を交えた事故調査委員会を設置し、原因究明と再発防止を進める。

約3センチの良性腫瘍 7月末に開頭手術

病院によると、女性には小脳や脳幹の周辺に約3センチの良性腫瘍が見つかっていた。

放置した場合には今後リスクが高まるとして、7月末に開頭手術を実施した。

執刀したのは脳神経外科の40代男性医師で、同様の手術を100件以上経験していたという。

女性は手術前、通常の日常生活を送っていた。

術中病理診断で2度、腫瘍を確認できず

今回の事故で重要なポイントとなるのが、手術中に行われた病理診断と、その結果を受けた執刀医の判断だ。

医師は腫瘍と考えた部位から組織を採取し、手術中に組織を調べる術中病理診断を行った。

しかし、最初の診断では「腫瘍は明らかではない」とする結果が出た。

執刀医は、腫瘍の端の部分を採取したため、検体に腫瘍細胞が含まれていなかった可能性があると判断。摘出を続けたという。

その後、2度目の病理診断でも同様に腫瘍を明確に確認できなかった。

それでも医師は、肉眼で見た組織の状態やこれまでの手術経験などから、対象となる組織を腫瘍だと判断し、手術を継続した。

約10時間に及ぶ手術の末、医師は腫瘍を取り切ったと判断して手術を終えた。

術後も自発呼吸戻らず MRIで誤摘出が判明

ところが手術後、女性の意識と自発呼吸が回復しなかった。

病院がMRI検査を行ったところ、本来摘出する予定だった腫瘍はほぼ手つかずの状態で残り、その一方で隣接する脳幹などの正常な脳組織が大きく損傷していることが判明した。

脳幹には呼吸など生命維持に重要な機能を担う神経組織が集中している。

女性は現在も自力で呼吸することができず、人工呼吸器による管理が続いている。

手足も動かず、呼びかけに対して目を開閉するなどの反応を示す程度だという。

今後の回復について、病院は現時点で見通しは分からないとしている。

手術前は通常の日常生活

女性は今回の手術を受ける前まで、通常の日常生活を送っていた。

良性腫瘍を治療するために受けた手術を境に、自発呼吸ができず、四肢も動かせない重篤な状態となった。

病院は女性の治療に最善を尽くすとともに、患者本人と家族への説明や支援を継続するとしている。

病院長「心よりおわび申し上げます」

高折晃史病院長は7日の記者会見で、

「患者さま、ならびにご家族に大変なご迷惑とご心配をおかけしたことを心よりおわび申し上げます。申し訳ございませんでした」

と謝罪した。

病院はすでに国や京都府、京都市、警察などの関係機関に事故を報告している。

今後、外部委員を交えた事故調査委員会を設け、手術中の判断過程や確認体制などについて詳しく検証する。

なぜ「2度の病理結果」で止まれなかったのか

今後の原因究明で大きな焦点となるのは、術中病理診断で2度にわたって腫瘍を明確に確認できなかったにもかかわらず、なぜ摘出を継続する判断に至ったのかという点だ。

一つの検査結果と執刀医の肉眼所見が食い違った場合、どの段階で手術対象を再確認するのか。

また、執刀医以外の医師による確認や画像との照合、手術を中断して再評価する仕組みがどのように運用されていたのかも、今後の検証対象となる。

一方、現時点で事故原因を単純に「医師の思い込み」と断定することはできない。

執刀医個人の判断だけでなく、手術チームの確認体制や病理診断との連携などを含めた詳細な検証が必要となる。

編集部まとめ

良性脳腫瘍を治療するために受けた手術で、本来の腫瘍が残された一方、生命維持に重要な正常組織が大きく損傷した今回の医療事故。

特に重大なのは、術中病理診断で2度にわたり腫瘍を確認できない結果が示されていたという経過だ。

なぜその時点で手術対象を再確認できなかったのか。

経験豊富な医師による手術だったからこそ、「経験があったにもかかわらず起きた事故」として、個人の判断だけではなく、安全確認の仕組みそのものまで検証する必要がある。

事故原因や責任の所在は、まだ確定していない。

まずは重篤な状態にある女性への治療と家族への支援を最優先とし、そのうえで事故調査委員会による徹底した検証と、具体的な再発防止策の提示が求められる。

週刊TAKAPI編集部/成田

特記事項

本記事は、病院の発表内容および関係報道を基に、2026年8月7日時点で明らかになっている事実を再構成したものです。事故の最終的な原因、過失の有無、責任の所在については調査中です。

Q京都大学医学部附属病院で何が起きましたか?
A50代女性の良性脳腫瘍を摘出する手術で、本来の腫瘍ではなく正常な脳組織を誤って摘出する医療事故が発生しました。
Q女性の現在の状態は?
A脳幹などを大きく損傷し、自発呼吸ができないため人工呼吸器による管理が続いています。手足も動かない重篤な状態とされています。
Q本来摘出する予定だった腫瘍はどうなりましたか?
A術後のMRI検査で、摘出予定だった腫瘍はほぼ残っていることが判明しました。
Q手術中に異常を確認する機会はなかったのでしょうか?
A術中病理診断では2度にわたり腫瘍を明確に確認できない結果が出ていました。なぜ摘出継続の判断に至ったのかは、今後の調査で重要な検証点となります。
Q病院は今後どのように対応しますか?
A外部委員を交えた事故調査委員会で原因を調べ、再発防止策を検討するとしています。事故の最終的な原因や責任の所在は現時点では確定していません。

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