三重県四日市市の私立暁高校で2022年、当時高校3年生だった女性が、交際していた同級生から繰り返し性的被害を受けたと訴えている問題は、元交際相手の行為だけでなく、その後に相談を受けた学校、犯罪被害者支援機関、警察の対応まで争点となっている。
現在21歳の女性は、元交際相手のほか、学校法人暁学園、当時の校長、教頭、学年主任、みえ犯罪被害者総合支援センターの相談担当者らを相手取り、計2990万円の損害賠償を請求している。
さらに、被害申告を受けた警察の対応に問題があったとして、三重県に2400万円の国家賠償を求めている。県側は請求の棄却を求めている。
一方、学校側の第三者委員会は、女性側が訴える性行為について同意や拒絶の有無を認定できないとしながら、行為が行われた場所や女性が受けた心理的苦痛などを踏まえ、いじめに当たると判断。重大事態として扱ったとされる。
現在は民事訴訟、国家賠償請求に加え、三重県によるいじめ重大事態の再調査も並行して進んでいる。
女性側「2022年8月から11月、20回以上の性的被害」
訴状などによると、女性側は2022年8月17日から11月23日にかけ、当時交際していた同級生から、校内外で20回以上の性的被害を受けたと主張している。
別れを切り出した後も相手から連絡が続いたほか、2人のLINE上のやりとりを周囲に見せられたとも訴えている。
女性はその後、PTSDと診断されたとされる。
ただし、「20回以上の性的被害」は原告側の主張であり、そのすべてについて違法行為があったと裁判所が認定したものではない。
第三者委「同意・拒絶は認定できず」 一方でいじめ重大事態と判断
この事案では、学校側が設置した第三者委員会も調査を行っている。
第三者委員会は、問題となった性行為について、女性が拒絶していたのか、同意していたのかを認定することはできないとした。
一方、人が出入りする可能性のある場所で行われたことや、女性が受けた心理的負担などを踏まえ、一部の行為についていじめに当たると判断し、重大事態として扱ったとされる。
原告側の主張と、第三者委員会が認定した事実の範囲は分けて見る必要がある。
学校側の「被害申告後の対応」も訴訟対象
女性側は元交際相手だけでなく、学校法人と当時の学校幹部にも責任があると主張している。
原告側によると、女性は部活動の顧問や教員らに相談したが、その後も十分な保護措置につながらなかったという。
当時の学校関係者による発言についても、女性側は被害申告を軽視する不適切なものだったと主張している。
学校側は、裁判中であることを理由にコメントを控えているとされる。
現時点で、学校側に安全配慮義務違反などの法的責任があったと裁判所が認定したわけではない。
三重県、学校側調査とは別に再調査
学校側第三者委員会の調査だけで、この問題は終わっていない。
女性側は学校による調査が不十分だったとして県に再調査を求め、三重県は2026年6月30日、第三者委員会による再調査を開始した。
公開情報では、学校側調査で元交際相手への聞き取りが十分でなかったことなどが、再調査に至った背景として伝えられている。
県知事も7月2日の定例会見で、学校の調査について「十分な調査ではないのではないか」との申し出があり、保護者への確認を経て再調査することになったと説明している。
民事訴訟では損害賠償責任が争われる一方、県の再調査では、学校側による事実確認や重大事態への対応が十分だったのかが改めて検証される。
犯罪被害者支援センターの相談対応も争点
女性と母親は2023年6月、みえ犯罪被害者総合支援センターの相談担当者と面談した。
原告側は、警察が被害届を受理しない判断を覆すことは難しいとの趣旨の説明を受けた一方、告訴や弁護士への相談、ほかの支援先につなぐための具体的な案内が十分ではなかったと主張している。
相談記録が残っていないことも問題視している。
センター側が実際にどのような説明や支援を行ったのか、その対応に法的責任が生じるのかは、今後の審理で判断される。
四日市北署への被害申告 県に2400万円を請求
警察の対応についても、別の国家賠償請求が起こされている。
訴状などによると、女性は2022年11月26日、両親らと四日市北署を訪れ、被害届を提出しようとした。
女性側は、交際関係にあったことを理由に同意があったかのような説明をされたほか、拒絶の仕方などについて繰り返し質問され、被害届を受理してもらえなかったと主張している。
女性側によると、現在も被害届は受理されていない。
これに対し県側は国家賠償請求の棄却を求め、警察の捜査権は刑罰権の実現という公益のために行使されるものだ、などと反論している。
警察対応が国家賠償法上違法だったかどうかは、裁判で争われている段階だ。
裁判と再調査 3つの手続きが並行
現在、この問題では大きく3つの手続きが進んでいる。
1つ目は、元交際相手や学校、支援担当者らを相手とする損害賠償請求。
2つ目は、警察対応を巡る三重県への国家賠償請求。
3つ目は、学校側第三者委員会の調査内容を検証する県のいじめ重大事態再調査だ。
それぞれ目的も判断基準も異なる。
民事訴訟で一方の責任が認められたからといって、県の再調査でも同じ結論になるとは限らず、その逆も同様だ。
被害そのものと「被害後の対応」を分けて検証
今回の事案では、元交際相手による行為そのものの事実認定に加え、女性が被害を訴えた後の対応が重要な争点となっている。
学校は何を把握し、どのような保護措置を取ったのか。
支援機関は相談を受けて何を説明し、どこへつないだのか。
警察は被害申告をどのように受け止め、なぜ被害届を受理しなかったのか。
こうした一連の対応が、裁判と県の再調査でそれぞれ検証されることになる。
編集部まとめ
今後の焦点は、2022年当時の行為についてどこまで事実認定が進むかに加え、女性が被害を申告した後、学校、支援機関、警察が何を把握し、どのような対応を取ったのかが具体的に明らかになるかだ。
週刊TAKAPI編集部/成田
特記事項
本稿は2026年9月21日時点で確認できた訴訟に関する公開情報、三重県知事会見などの公式資料、いじめ重大事態に関する公開資料を照合し、争点を整理した検証記事です。
女性が「20回以上の性的被害」を受けたとする点や、学校、犯罪被害者支援センター、警察の対応に問題があったとする点には、原告側の主張が含まれます。
学校側第三者委員会は、問題となった性行為について同意・拒絶の有無を認定できないとした一方、行為の場所や女性の心理的苦痛などを踏まえ、いじめに当たると判断したとされています。
学校側は裁判中であることを理由にコメントを控えているとされ、三重県は国家賠償請求の棄却を求めています。
県によるいじめ重大事態の再調査、民事上の損害賠償請求、国家賠償請求は別の手続きであり、各当事者の法的責任は確定していません。
被害女性や元交際相手を特定し得る情報は掲載していません。

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