新本部長は「県民からの目線」 8月に組織改革を表明
8月24日付で宇田川佳宏氏が兵庫県警本部長に就任した。
27日の会見では、前年に50人が懲戒処分を受けたことについて、「県民からどう見られているか」という視点を職員に持たせる考えを示したほか、必要以上に上下関係を意識させず、意見を言い合える「風通しの良い組織運営」を進める考えを示した。
その約2週間後、9月11日に勤務中の「署内不倫」を巡る懲戒処分が公表された。
ただし、時系列は明確に切り分ける必要がある。
問題となった行為は2026年7月までで、宇田川本部長の就任前に起きている。新本部長就任後に発生した不祥事ではない。
むしろ、新体制は、前年の過去最多50人を含む規律上の課題を抱えた状態でスタートしたと見るのが正確だ。
直近では「逆パワハラ」 20代巡査部長を所属長注意
そして9月19日、別の問題も報じられた。
読売新聞の報道によると、但馬地域の警察署刑事部門に勤務する20代の男性巡査部長が、直属の上司だった30代男性警部補に対し、2025年8月ごろから2026年5月ごろまで威圧的な言動を繰り返していた。
他の署員がいる前で「なんであれできてないんですか」とミスを指摘するなどし、警部補が自ら配置換えを求めたことで問題が表面化したとされる。
県警は8月24日付で巡査部長を所属長注意とした。
ここは「署内不倫」の懲戒処分とは区別する必要がある。所属長注意は懲戒処分ではない。
さらに、転属した警部補について不適切な発言をした別の男性署員3人も所属長注意となり、部分休業を取得していた40代女性警部補への不適切な発言も確認されたと報じられている。
いわゆる「逆パワハラ」として注目された事案だが、見るべきなのは単に部下が上司に強く当たったという点だけではない。
年齢や経験年数、人間関係などによって、階級上の指揮命令関係が十分に機能しない職場が生まれていなかったかという視点も必要になる。
元巡査長には拘禁刑5年 同僚女性警察官への不同意性交など
9月18日には、兵庫県警の元巡査長を巡る別の重大事件でも判決が言い渡された。
同僚の女性警察官3人への不同意性交や盗撮などの罪に問われた元巡査長の男(26)に対し、神戸地裁は拘禁刑5年を言い渡した。検察側の求刑は拘禁刑7年だった。
判決によると、男は2024年1月から2025年11月にかけ、交番のトイレや当時の自宅などで女性3人を盗撮したほか、うち1人に不同意性交などをした。
これは勤務規律上の不祥事とは異なり、刑事裁判で有罪判決が言い渡された事件である。両者を同一視すべきではない。
一方で、短期間に性質の異なる問題が相次いで報じられていることは、県警が信頼回復を進める上で無視できない状況となっている。
なぜ続くのか 50人という数字だけでは答えは出ない
では、兵庫県警全体に特有の組織風土があるのか。
公開情報だけから、そこまで断定することはできない。
50人という数字は職員数で補正した「不祥事率」ではない。組織規模が違う以上、単純な人数だけで各警察組織の規律を比較するには限界がある。
また、内部監察を厳格化し、問題を積極的に把握して処分すれば、処分者数が増えることもあり得る。
それでも、兵庫県警自身が「規律の緩み」「危機的な状況」と認識している事実は重い。
そして注目すべきは、問題の種類が1つではないことだ。
薬物、盗撮、ギャンブル、勤務中の遊興や職務懈怠、ハラスメント、不適切な男女関係。
最近では勤務中の「署内不倫」と、部下から上司へのいわゆる「逆パワハラ」まで表面化した。
ここから直ちに1つの原因を導くことはできない。
ただ、職務倫理だけでなく、日常の職場管理、指揮命令、内部コミュニケーション、問題の早期把握という複数の機能が同時に問われていることは確かだ。
「署内不倫」は妻に関係を知られた男性巡査長が上司へ報告したことから調査につながり、「逆パワハラ」とされた事案では上司側が配置換えを求めたことが表面化のきっかけだった。
少なくともこの2事案では、職場側が問題の深刻化以前に把握した形ではない。
今後問われるのは、不祥事が発覚した後に何人処分したかだけではない。
異変を早い段階で把握し、同じ種類の問題を繰り返させない仕組みを作れるか。
新本部長が掲げた「県民からの目線」と「風通しの良い組織」が実際の職場で機能するかどうか。兵庫県警の信頼回復を測る上で、そこが次の焦点になる。
編集部まとめ
2025年に50人が懲戒処分を受け、全国最多となった兵庫県警。その後も、勤務中に署内などで性的な行為を繰り返した「署内不倫」、上司への威圧的言動を巡る「逆パワハラ」、元警察官が実刑判決を受けた事件など、性質の異なる問題が相次いで表面化した。
ただし、これらを一括して「組織全体の体質」と断定するのは早い。人数だけでは見えない事情もあり、個別事案の性質も異なる。
一方で、県警自身が規律の状況を「危機的」と認識している以上、再発防止の実効性は厳しく問われる。
問題が起きてから処分するだけではなく、職場内部で異変を察知し、深刻化する前に止められるか。新体制が向き合う課題はそこにある。
週刊TAKAPI 編集部
特記事項
本記事で使用する「署内不倫」は、既婚の男性巡査長と女性巡査が不倫関係にあり、勤務中に警察署内などで性的な行為をしていた事案を分かりやすく示す表現で、兵庫県警の正式な処分名称ではありません。
「逆パワハラ」についても報道で使用されている表現です。当該巡査部長への措置は「所属長注意」であり、懲戒処分とは区別しています。
2025年の「50人」は、不祥事が50件発生したという意味ではありません。懲戒処分を受けた警察官・警察職員の人数です。
また、都道府県警別の順位は職員数で補正した発生率ではなく、懲戒処分者の実人数による比較です。
2025年 警察官・警察職員の懲戒処分者数 全国上位3
警察庁のまとめでは、2025年に全国で懲戒処分を受けた警察官・警察職員は337人で、前年比98人増。直近10年間で最多となった。
1位 兵庫県警 50人
2位 神奈川県警 34人
3位 警視庁 30人
4位は大阪府警26人、5位は福岡県警18人だった。なお、この順位は「不祥事発生件数」ではなく、懲戒処分を受けた警察官・警察職員の人数による順位である。
コメント
0件まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか。