【奈良】博士論文の審査委は「合格」 それでも修了前日に“不授与” 奈良女子大院生が提訴、約1700万円請求

博士論文の審査委員会で合格と判断された奈良女子大大学院生が博士号を授与されなかったとして提訴した問題を伝える週刊TAKAPIの報道アイキャッチ

奈良女子大学大学院の学生が、博士論文の審査委員会で合格と判断され、研究成果を国際学術誌にも発表したにもかかわらず博士号を授与されなかったとして、大学などを相手取り、博士号の授与と約1700万円の損害賠償を求めて奈良地裁に提訴した。

提訴は9月18日付。大学側は22日までの取材に対し、提訴を承知していないとしてコメントを控えている。学生側の主張が認められるかは、今後の裁判で審理される。

1月に論文提出、2月の審査委員会は「合格」

22日付の報道によると、学生は2026年1月に博士論文を提出した。

訴状や論文審査に関わった委員の説明では、2月に開かれた審査委員会が論文を合格と判断。研究成果については、指導教員らとの共著で国際学術誌にも発表したという。

ところが大学は、博士課程修了前日の3月23日、学生に博士号を「授与しない」と通知した。

学生が異議を申し立てると、大学側は、論文審査後に開かれた別の会議で、博士号授与に必要な賛成票が規定数に達しなかったと説明したとされる。

「審査委員会の合格」だけで博士号は決まるのか

今回の訴訟で重要になるのが、博士論文の審査委員会による「合格」と、最終的な学位授与決定がどのような関係にあるのかという点だ。

奈良女子大学が公開している学位規程では、審査委員会による論文審査などの報告を受けた後、研究科教授会が学位を授与すべきかどうかを決定する仕組みが定められている。公表されている規程では、議決には構成員の3分の2以上の出席と、その3分の2以上の賛成が必要とされている。

大学院の研究科規程にも、博士論文は審査委員会が審査し、研究科教授会がその報告に基づいて合格・不合格を決定すると記載されている。

つまり、制度上は「審査委員会で評価された」という段階と、最終的な学位授与の決定は同一ではない。

ただし、今回の学生に具体的にどの年度の規程が適用されたのか、2月の「合格」が学内手続上どの段階の決定だったのか、後続会議が何を根拠に授与を認めなかったのかは、現在の報道だけでは十分明らかになっていない。

ここが裁判の大きな争点になりそうだ。

文科省に相談 6月になって研究内容の見直しを指摘

学生は不授与の経緯について文部科学省に相談した。

報道によると、文科省は大学に対し、博士号を授与しなかった理由を学生へ丁寧に説明するよう指導したという。

その後、6月になって指導教員らは、研究設計やデータ分析が適切ではなく、論文内容を見直す必要があるとの文書を学生側に示したとされる。

ここには時間的なズレがある。

学生側の説明では、2月には審査委員会が合格と判断した一方、3月23日に不授与が通知され、その後の6月になって研究内容そのものについて問題が指摘された。

なぜ審査時には合格と判断された論文について、後になって研究設計やデータ分析の問題が示されたのか。大学側がこの経緯をどのように説明するのかも注目点となる。

大学の公式評価基準には「研究方法の適切性」

奈良女子大学が公開する博士論文の評価基準では、研究目的と意義が明確であることに加え、適切な研究方法が選択されていることなどが審査項目として掲げられている。

一方、大学院の学位授与方針では、所定の在学期間や単位取得、研究指導に加え、博士論文の審査と最終試験への合格を学位授与要件としている。

今回の裁判では、学生が実際にどの要件を満たしていたのかだけでなく、大学が学位を授与しなかった判断過程が学内規程に沿っていたのか、その理由がどの段階で、どのように学生へ示されたのかが問われる可能性がある。

約1700万円を請求 大学はコメント控える

学生側は、博士号の授与に加えて約1700万円の損害賠償を求めている。

一方、大学側は22日の取材時点で提訴を承知していないとして、コメントを差し控えている。

学生側の氏名や専攻は報じられていない。

今後は大学側が裁判でどのような主張を行うのか、博士号不授与の具体的な判断過程や学内会議の位置付けが明らかになるかが焦点となる。

編集部まとめ

この訴訟で注目すべきなのは、単純に「論文が合格したのに博士号を出さなかった」という一点だけではない。

奈良女子大学の公開規程では、論文審査委員会の審査と、その後の研究科教授会による学位授与の決定が段階的に設けられている。

その上で、学生側が主張する2月の「合格」、3月23日の不授与通知、6月になって示された研究内容への問題指摘が、学内手続の中でどのようにつながっていたのか。

「審査委員会では合格だったのに、なぜ最終的に博士号が出なかったのか」――。

その説明過程の適法性と合理性が、今後の裁判で問われることになる。

週刊TAKAPI 編集部

特記事項

本稿は2026年9月22日時点の報道と、奈良女子大学が公開している学位規程、大学院研究科規程、博士論文評価基準などを照合して構成した。

学生側が主張する論文審査の「合格」、国際学術誌への成果発表、不授与通知、文部科学省への相談などについては、訴状や関係者の説明を基に報じられた内容であり、裁判で確定した事実ではない。

また、大学の公開規程は学位授与が複数段階の審査・決定手続を経ることを示しているが、今回の学生に具体的に適用された規程や会議手続の詳細は現時点で明らかになっていない。学生側の請求が認められるかを本稿で判断するものではない。

Q学生は何を求めて提訴した?
A奈良女子大学などに対し、博士号の授与と約1700万円の損害賠償を求めている。
Q博士論文は合格していた?
A訴状や論文審査委員の説明では、2月の審査委員会が合格と判断したとされている。ただし、最終的な博士号授与の決定とは別の手続が存在する。
Q大学はなぜ博士号を授与しなかった?
A学生の異議申し立てに対し、大学は論文審査後に開かれた別の会議で必要な賛成票に達しなかったと説明したと報じられている。
Q文部科学省はどう対応した?
A学生から相談を受け、大学に不授与の理由を丁寧に説明するよう指導したと報じられている。
Q奈良女子大学では審査委員会の合格だけで博士号が決まる?
A大学が公開する規程では、審査委員会の報告を受け、研究科教授会が学位授与の可否を決定する手続が定められている。今回の学生に適用された具体的な規程や手続の詳細は、今後確認する必要がある。

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