埼玉県深谷市で自動運転バスが水路フェンスなどに接触し、当面の運行休止となった。新潟県弥彦村では歩行者2人が負傷し、石川県小松市では2026年だけで2回の縁石接触事故が発生。東京都八王子市では、自動運転中のバスが街路樹に衝突し、乗客3人が軽傷を負った。
ここだけを切り取れば、「自動運転バスを地方へ広げるのは早すぎる」と見ることもできる。
しかし、各自治体の公式資料と事故経過を横断すると、4地域で起きたことは同じではない。
システムの設計や機器に問題があったケース、自動運転中の車両挙動を見た運転士が手動介入したケース、自動運転が危険を検知して停止した後の手動操作中に人身事故が起きたケースが混在している。
つまり、今問うべきなのは「自動運転は危険か、安全か」という単純な二択ではない。
地方交通に本当に必要な技術だからこそ、どの道路、どの運行条件、どの自動運転レベルなら社会に出せるのか。事故のたびに自治体単位で止めて再開するだけでなく、全国で事故と手動介入のデータを共有できる仕組みが必要な段階に入っている。
深谷市 自動走行中にフェンスなどへ接触 レベル4を目指す途中で事故
深谷市では9月6日午後0時41分ごろ、コミュニティバス「くるリン」の北部シャトル便+周遊便が自動運転走行中、新井郵便局付近で水路フェンスなどに接触した。
乗客はいなかったが、運転手1人と自動運転補助員2人が乗車。けが人はいなかったものの、水路フェンス、隣地の工作物、家屋壁面が損傷した。
市は「安全性が十分確認できるまで」として自動運転による運行を当面休止。人が運転する通常の定時定路線は継続している。
公開報道では、深谷市の自動運転バスを巡る2026年の物損事故は1月に続いて2回目とされる。ただし、1月と9月は同じ車両・同一路線による事故ではない。1月は別の実証運行車両が深谷赤十字病院への進入時に縁石へ接触した事案で、9月は北部シャトル便+周遊便で起きている。
この違いは重要だ。
「同じ自動運転バスがまた事故を起こした」のではなく、市が進める自動運転事業の異なる運行条件で事故が発生していると見るべきだからだ。
深谷市は現在、2027年度から一部区間でレベル4の自動運転移動サービスを実装するロードマップを掲げている。2026年度は公道評価走行や許認可申請を進める重要な年度に位置付けられている。
今回の事故原因と再発防止策は、深谷市だけの問題ではない。レベル2で経験を積み、レベル4へ移行しようとする全国の自治体にも共有されるべき情報になる。
弥彦村 自動運転は一度停止 事故は手動切り替え後
事故の見方を最も慎重にしなければならないのが、新潟県弥彦村だ。
4月12日午後2時ごろ、自動運転バス「ミコぴょん号」が、おもてなし広場付近で歩行者2人と衝突した。40代男性と30代女性が負傷し、村は事故直後から運行を全面停止した。
「自動運転バスが歩行者をはねた」という結果だけなら、システムが歩行者を認識できなかったようにも読める。
ところが、事故翌日に公表された説明を基にした公開情報では、車両は現場のおよそ55メートル手前で歩行者を検知し、一度停止していた。
その後、オペレーターが手動操作へ切り替えて走行を再開し、歩行者2人と衝突したとされる。
事故当時の運転主体を無視して「自動運転の認識ミス」と整理すれば、事故の構造を取り違える。
弥彦村は現在、外部委員を含む事故等検証委員会を設置し、自動運転バス事業そのものの検証を進めている。
この事故が示したのは、自動運転技術の問題だけではない。
システムが止まった後、人間がどのように状況を判断し、どの操作で運行を再開するのか。
人間と自動運転システムの境界にも事故リスクがある。
小松市 同じ「接触事故」でも5月と8月では原因が違う
石川県小松市は、その違いをさらに分かりやすく示している。
5月13日、小松駅西口でレベル2による自動走行中のバスが縁石に接触した。
市の事故調査では、自動運転システムが指示したステアリング角度に実際のステアリングが追従しない「乖離」が発生。自動運転時だけ使用する操舵システムに不具合が生じたと判断された。
ところが8月18日の事故は違った。
同じ小松駅西口周辺で、乗客11人を乗せてレベル2走行中、自動運転システムが左へ操舵。運転士がその動きを危険と判断して手動介入したものの、とっさの操作で適切な操作に至らず、縁石へ接触したと市は説明している。けが人はいなかった。
同じ自治体の「自動運転バスが縁石へ接触」というニュースでも、
5月は操舵システムの不具合。
8月は自動運転中の車両挙動に人間が介入した場面。
事故構造は別物だ。
小松市は原因究明後、9月14日から自動運転バス車両での運行を再開したが、当面は手動運転としている。
八王子はシステム設計上の問題が明確になった
東京都八王子市では2025年8月29日、レベル2による自動運転バスが国道20号を走行中に突然左へ急旋回し、街路樹へ衝突した。
乗客3人が軽傷を負った。
東京都の検証では、本来使うべきではない古い目標位置情報を自動運転システムが使用する設計上の不備が直接的な原因として示された。
東京都はその後、古い位置情報の誤使用防止、急なハンドル操作の制限、車両制御とは独立した衝突回避機能の追加、レベル2運行時のフェールセーフドライバーの事前訓練強化などを再発防止策に盛り込んだ。
ここでは、人間への切り替えだけではなく、明確にシステム設計そのものが検証対象となった。
弥彦と八王子を同じ「自動運転バス事故1件」と数えるだけでは、安全性の改善につながらない理由がここにある。
