【長野•長野市】南アルプスの絶滅危惧種「アカイシサンショウウオ」国内初の人工繁殖に成功 13年越し、茶臼山動物園

南アルプスの限られた地域に生息し、絶滅が危惧されているアカイシサンショウウオ。長野市の茶臼山動物園が、飼育下での人工繁殖に国内で初めて成功した。

野外では卵のうや幼生が確認されたことがないほど、繁殖生態に謎が多い希少種だ。動物園などによる研究は長年続けられてきたが、今回、13年に及ぶ取り組みが大きな成果につながった。

アカイシサンショウウオとは? 南アルプスのごく狭い地域に生息

アカイシサンショウウオ(学名:Hynobius katoi)は、2004年に新種として記載された小型のサンショウウオだ。

長野県と静岡県にまたがる赤石山脈(南アルプス)南部の極めて狭い範囲に分布し、標高500~1200メートルほどの山地森林帯などで確認されている。

環境省が2026年3月に公表した第5次レッドリストでも、アカイシサンショウウオは絶滅危惧IB類(EN)に位置付けられている。絶滅危惧IB類は、環境省の定義では「近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの」に当たる。

決して派手な生き物ではない。山の中でひっそり暮らし、多くの人がその姿を見る機会もほとんどない。

しかし、南アルプスの自然環境を構成する、極めて希少な存在だ。


野外で「卵」すら見つかっていなかった

今回の繁殖成功が重要なのは、単純に飼育個体が増えたという点だけではない。

これまでアカイシサンショウウオは、野外で卵や幼生が確認された事例がなく、生活史には不明な点が多かった。長野県環境保全研究所などによる過去の研究でも、その点が課題として指摘されている。

つまり、野生下で「いつ、どのような場所で、どのように産卵しているのか」という繁殖の核心部分がほとんど分かっていなかったことになる。

茶臼山動物園では、こうした生態の解明と種の保全につなげるため、長年にわたって飼育・繁殖技術の確立に取り組んできた。


13年越しで繁殖に成功

茶臼山動物園によるアカイシサンショウウオの保全研究は長期に及ぶ。

長野県環境保全研究所が約10年前に公表した資料でも、同園がすでにアカイシサンショウウオの繁殖に取り組んでいたことが確認できる。研究では野外で確認された個体の一部を飼育施設に収容し、飼育・繁殖技術の開発が進められていた。

そして2026年夏、ついに飼育下で繁殖に成功した。

信濃毎日新聞の報道によると、研究開始から13年越しの成果で、受精卵が確認され、その後ふ化も始まった。

繁殖期の特定や雌雄の判別、産卵に適した環境づくりなど、これまで分からなかった条件を一つずつ探ってきた末の成果だ。