【独自】教育長以前に、人としてどうなのか 市教委担当者「あり得ない発言」 松村前教育長の暴言、市把握は約3年後

松村光洋前教育長の暴言問題をめぐり北名古屋市教育委員会担当者が「あり得ない発言だと思う」と語った独自取材記事のアイキャッチ

愛知県北名古屋市の松村光洋・前教育長(66)が部下らへの暴言をめぐり辞職した問題で、市教育委員会の担当者が週刊TAKAPIの独自取材に対し、松村氏の発言について「個人としての意見であれば、あり得ないですよね。あり得ない発言だと思います」と語った。

教育長として適切だったのかという職責上の問題だけではない。一人の人間の言動として、あの発言をどう受け止めるのか。本紙が行政としての公式見解とは切り分けて尋ねた際、担当者が個人的な見解として示した言葉だった。

さらに取材では、2023年にあったとされる部下への暴言を市側が把握したのは約3年後の2026年9月で、報道機関から取材の申し込みを受けたことが契機だったことも分かった。

市は松村氏の辞職後も調査を終わらせず、在任中に同様のハラスメントがなかったか学校関係者らを対象に調べる。10月中にもアンケートを始める方向で準備しており、結果についても公表する方針だ。

松村氏は9月29日に辞職願を提出。市長と教育委員会の同意により、10月1日付で正式に辞職した。市は辞職への同意理由を「重大なハラスメント行為」としている。

「あり得ない発言だと思います」担当者が個人的見解

問題となっているのは、松村氏が部下や教育関係者に対して発した一連の言葉だ。

2023年に録音された音声では、部下に対し「このぼんくら」「北名古屋の恥だぞ」「降格しろ」などと発言。今年も教育関係者とのやり取りで「たわけ」「ばかやろう」「なめとんのか」などの発言があったと報じられている。松村氏本人も報道機関の取材に音声を自身のものと認め、人格を否定するような発言だったとして反省を述べている。

週刊TAKAPIは今回、市としてハラスメントをどう判断しているのかという質問とは別に、松村氏の発言そのものを担当者個人としてどう受け止めるのかを尋ねた。

担当者は、

「個人としての意見であれば、人としてあり得ないですよね。あり得ない発言だと思います」

と答えた。

行政機関としての公式見解ではなく、あくまで担当者個人としての発言だ。

ただ、市の公式発表でも松村氏の行為は「重大なハラスメント行為」とされ、太田考則市長は「長時間にわたり、執拗な暴言や人格非難が行われた事案」との認識を示している。

教育長という立場にあったから問題なのか。

それだけではない。

教育行政のトップという肩書を外した時、一人の人間が別の人間に向けた言葉として、どう受け止めるのか。今回の取材では、その問いに市教委の実務担当者が「あり得ない発言」と答えた。

2023年の暴言、市が知ったのは約3年後

今回の独自取材では、市側が2023年の事案をいつ把握したのかについても確認した。

市教委担当者によると、市側が内容を把握したのは2026年9月だった。

きっかけは報道機関からの取材申し込みだったという。

取材申し込みの中で暴言に関する内容を知り、松村氏本人に事実確認を実施。本人が内容について間違いないと認めたことから、市側はハラスメントに該当するとみて協議を進めた。

その過程で9月29日、松村氏から辞職願が提出された。市長と教育委員会が協議し、10月1日付の辞職に同意したという。

市が公表した内容でも、9月29日の辞職願提出と10月1日付の辞職が確認できる。

一方で、今回取材した2023年の事案について市側が把握した時期と、その契機が報道機関の取材だったという具体的な経緯は、本紙取材で担当者が説明したものだ。

問題の発言から市側の把握まで、約3年。

なぜ、それまで組織内部で問題として把握されなかったのか。

この「3年間」は、今後の調査でも重要な検証点になる。

過去の苦情や内部通報「我々の段階では聞いていない」

週刊TAKAPIは、問題が表面化する前に松村氏をめぐる苦情、相談、内部通報が市教委側に寄せられていなかったのかも確認した。

担当者は、

「我々の段階では聞いてないですね」

と回答した。

一方、別の場所に何らかの相談が出ていたとの話については耳にしていると説明。ただし、市教委が直接受け付けて事実確認したものではなく、現段階で確認された事実として扱えるものではないという。

市側も今回確認された事案だけで問題が完結するとはみていない。

市長は公式コメントで「同種事案が他に存在する可能性」を挙げ、学校関係者に広くアンケート調査を行うとしている。

さらに、組織の長自身がハラスメントを行ったことで、担当窓口への相談、聴取、対応という「組織の自浄作用」が十分に機能しなかった点を問題としている。

在任中の教職員まで調査へ 10月中のアンケート開始目指す

市は今後、松村氏の在任期間にさかのぼって同様の被害がなかったか調べる。

市教委担当者によると、現在の市内の校長らに加え、松村氏の在任期間中に北名古屋市で勤務していた教職員なども調査対象として検討している。

対象人数については現段階では確定していない。

アンケートも現在、内容を作成している段階だが、担当者は開始時期について「10月中にはやろうと思っております」と説明した。

回答については匿名、記名の双方を可能とする方向で、被害を申告した人が相談を希望した場合には、個別の調査につなげる考えだ。

結果についても市ホームページで公表する予定としている。

市公式発表でも、学校関係者を対象に広くアンケートを行い、実態把握を進める方針が示されている。

「正式認定」の機関はなし 顧問弁護士とも協議

今回の行為について、市教委がパワハラを「正式認定」したのか。

この点について担当者は、市には今回のような案件を正式に認定する専用の委員会などがなく、「認定」という形式は取っていないと説明した。

一方、市の顧問弁護士を交えて協議した結果、パワハラに当たるとの見解が示され、市側もその認識で対応してきたという。

市が10月2日に公表した資料では、辞職への同意理由を「重大なハラスメント行為」と明記している。

「パワハラを認定する専門機関による正式認定」と、市が重大なハラスメント行為と判断していることは分けて整理する必要がある。

辞職後も終わらない 必要なら松村氏に協力要請

10月1日付の辞職によって、松村氏はすでに教育長ではない。

しかし、市は調査を継続する。

週刊TAKAPIが「辞職後も調査を続け、結果を公表するのか」と確認すると、担当者はその方針を明確に認めた。

既に把握している事案について、松村氏への事前の聞き取りは終了しているという。

一方、今後実施するアンケートなどによって新たな事実が出てきた場合、必要に応じて松村氏にも調査への協力を求める。

ただし、辞職後は私人となっているため、市側には聞き取りへの協力を強制する権限はないとしている。

市が調査、第三者による確認も想定

調査の客観性をどう確保するのかについても聞いた。

担当者によると、まず市側の機関で調査し、その内容について教育委員会や第三者機関に確認してもらう形を想定しているという。

現時点で「第三者委員会を設置する」と決定したわけではない。

第三者がどのような形で関与するのか、調査の途中から参加するのか、結果の検証を担うのかについては、今後の制度設計を確認する必要がある。

ハラスメントを初期段階で相談できる体制へ

今回の問題は、個人の発言だけでなく、市側の相談体制にも課題を突き付けた。

市教委担当者は取材に対し、ハラスメントを初期段階で相談できる窓口をきちんと整備していく必要があるとの考えを示し、体制整備に向けた動きを始めていると説明した。

市長も、組織の長がハラスメントの当事者となったことで、内部の相談、聴取、対応という仕組みが十分に機能しなかったと公式に認めている。

松村氏の辞職によって、教育長としての進退には区切りがついた。

しかし、調査はここからだ。

2023年の事案はなぜ約3年間、市側に把握されなかったのか。

声を上げることができなかった関係者はほかにいなかったのか。

組織のトップが問題行為の当事者となった時、それを内部で把握し、止める仕組みは機能するのか。

そして何より、教育長という役職以前に、人と人との間で許容される言動だったのか。

市教委担当者が個人的な見解として語った「あり得ない発言だと思います」という言葉は、今回の問題が辞職だけでは終わらないことを示している。

編集部まとめ

松村前教育長の辞職は正式に成立した。

しかし、今回の独自取材で焦点となったのは進退ではない。

市側が2023年の暴言を把握したのは約3年後で、その契機が報道機関からの取材だったこと。辞職後も在任期間にさかのぼって調査を続けること。10月中にも学校関係者へのアンケートを始め、結果を公表する方針であること。そして、市教委担当者自身が個人的な見解として、発言を「あり得ない」と受け止めていることだ。

教育長としてどうだったのかという問いだけでは足りない。

一人の人間の言動としてどうだったのか。

同時に、市には約3年間問題を把握できなかった理由と、組織内部の相談・是正機能がなぜ十分に働かなかったのかについて、調査を通じた説明が求められる。

週刊TAKAPIは、学校関係者へのアンケート、新たな被害申告の有無、第三者による確認、調査結果の公表まで継続して取材する。

週刊TAKAPI 編集部

特記事項

本記事中の北名古屋市教育委員会担当者の回答は、週刊TAKAPIによる直接取材に基づく。

「あり得ない発言だと思います」との発言は、北名古屋市または北名古屋市教育委員会としての公式見解ではなく、担当者が取材に対し個人的な見解として述べたもの。

また、タイトルの「教育長以前に『人としてどうなのか』」は記事の問題提起を示す表現であり、担当者が「人としてあり得ない」と発言したことを意味するものではない。担当者の実際の発言は「あり得ない発言だと思います」である。

Q松村光洋前教育長は正式に辞職したのですか
Aはい。9月29日に辞職願を提出し、市長と教育委員会の同意により10月1日付で辞職しました。市は同意理由を「重大なハラスメント行為」としています。
Q北名古屋市は2023年の暴言をいつ把握したのですか
A市教委担当者は週刊TAKAPIの取材に、2026年9月に報道機関から取材申し込みを受けたことを契機に把握したと説明しました。
Q市教委担当者は松村前教育長の発言をどう受け止めていますか
A行政としての公式見解とは別に、担当者個人として「あり得ないですよね。あり得ない発言だと思います」と述べました。
Q松村前教育長が辞職した後も調査は続くのですか
Aはい。市は在任中の同様のハラスメントの有無を調べる方針で、学校関係者へのアンケートを準備しています。市公式発表でも広範なアンケート調査を行う方針が示されています。
Q今後の焦点は何ですか
Aほかに同様の被害がなかったか、2023年の事案が約3年間市側に把握されなかった理由、相談・是正体制が機能していたのか、第三者が調査にどのように関与するのかが焦点となります。

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