フランス・ルーヴル美術館が所蔵するレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画が、1974年の《モナ・リザ》以来52年ぶりに日本で公開されている。
東京・六本木の国立新美術館で2026年9月9日に開幕した「ルーヴル美術館展 ルネサンス」。最大の目玉となるのが、日本初公開のレオナルド・ダ・ヴィンチ《女性の肖像》、通称《美しきフェロニエール》だ。会期は12月13日まで。
「52年ぶり」という数字だけでも大きなインパクトがあるが、今回の展覧会は単なる「ダ・ヴィンチの名画来日」にとどまらない。なぜ半世紀以上を経て注目作が日本へやってきたのか。そして《モナ・リザ》へとつながるレオナルドの肖像表現とは何なのか。
1974年の《モナ・リザ》以来52年ぶり
今回、特に押さえておきたいのが「52年ぶり」の意味だ。
レオナルド・ダ・ヴィンチの作品すべてが52年ぶりに来日した、という意味ではない。
ルーヴル美術館が所蔵するレオナルドの絵画が日本で公開されるのが、1974年に東京国立博物館で公開された《モナ・リザ》以来、52年ぶりとなる。
レオナルドの真筆とされる絵画は、現在世界に15点ほどしか残っていないとされ、このうちルーヴル美術館は5点を所蔵する。今回、その貴重な1点が日本で初めて公開された。
日本初公開《美しきフェロニエール》とは
今回来日した《女性の肖像》は、1490~1497年頃に制作されたと考えられている油彩画で、レオナルドがミラノで活動していた時期の作品だ。
現在は《美しきフェロニエール》の通称で広く知られている。
当時のミラノでは横顔で人物を描く肖像画がまだ主流だったが、レオナルドは人物を斜めから捉える「四分の三正面観」を採用した。
さらに女性の頭部と身体をわずかに異なる方向へ向けることで、静止した肖像でありながら、まるで人物がその瞬間にこちらを振り返ったかのような動きを生み出している。
2014~2015年に実施された科学調査では、制作過程で後頭部や背中、首の輪郭を修正し、頭と身体の動きがより強調されるよう変更されていたことも分かっている。
《モナ・リザ》につながる肖像表現
《美しきフェロニエール》が注目される理由は、その希少性だけではない。
1490年代のミラノ時代に描かれた同作は、後に制作される世界的名画《モナ・リザ》の前身とも位置づけられてきた作品だ。
人物の外見を正確に描くだけではなく、視線や姿勢、明暗などを利用して、その人物の内面や感情まで表そうとする。
国立新美術館も、レオナルドについて「外見の特徴をとらえるだけでなく、その内面に潜む複雑な感情を描き出す」という課題に挑み続けた芸術家だったと説明している。
後世の《モナ・リザ》につながっていくレオナルドの肖像表現を、日本で間近に確認できる点も今回の展覧会の大きな価値といえそうだ。
実は「美しきフェロニエール」は本当の作品名ではない?
さらに興味深いのが作品名だ。
国立新美術館では正式に、
《女性の肖像》、誤って付された別称《美しきフェロニエール》
として紹介している。
「美しきフェロニエール」という呼称は、もともと別の女性肖像に使われていたものだった。
ところが18世紀末から19世紀初頭ごろに作品の呼称が混同され、レオナルドの《女性の肖像》が誤って《美しきフェロニエール》と呼ばれるようになり、そのまま通称として定着したという。
つまり、世界的に知られている現在の名称そのものに、美術史上の「取り違え」が残っていることになる。
ダ・ヴィンチだけではない ルーヴル所蔵56点が東京へ
「ルーヴル美術館展 ルネサンス」は、《美しきフェロニエール》だけを見る展覧会ではない。
会場ではルーヴル美術館のコレクションから選ばれた56点を通じて、15~16世紀のヨーロッパで広がったルネサンスを紹介している。
レオナルドのほかにも、ボッティチェリ、ティツィアーノ、デューラー、クラーナハ、エル・グレコなど、ルネサンスを代表する巨匠たちの作品が来日した。
展示はレオナルドから導き出した、
「旅」「技法の革新と洗練」「古代へのまなざし」「肖像芸術の隆盛」
という4つのテーマで構成されている。
絵画だけではなく、彫刻、版画、素描、工芸などを横断しながら、ルネサンスという時代そのものを読み解く内容になっている。
なぜ「52年ぶり」は大きな意味を持つのか
編集部の考察
今回の展覧会を象徴する数字は、やはり「52年」だろう。
1974年の《モナ・リザ》来日は、日本の美術展史を語るうえでも極めて大きな出来事だった。
それから半世紀以上を経て、同じルーヴル美術館が所蔵するレオナルドの絵画が再び日本で公開される。
しかも今回は、《モナ・リザ》より前の時代に描かれ、その後のレオナルドの肖像表現を考えるうえでも重要な《美しきフェロニエール》である。
「世界的巨匠の作品が来た」というだけでなく、1974年の《モナ・リザ》と2026年の《美しきフェロニエール》を、52年という時間を隔てて日本で見ることができたという点に、今回の展覧会の歴史的な意味がある。
ルーヴル美術館展はいつまで?料金や開館時間は
「ルーヴル美術館展 ルネサンス」は、2026年12月13日まで国立新美術館の企画展示室1Eで開催される。
開館時間は午前10時~午後6時で、金・土曜日は午後8時まで。入場はいずれも閉館30分前までとなる。
当日観覧料は一般2,400円、大学生1,400円、高校生1,000円。12月7日~13日は日時指定制が導入される予定となっている。
半世紀を超える時間を経て日本へやってきた、ルーヴル所蔵のレオナルド。
1974年の《モナ・リザ》から52年。今度は《美しきフェロニエール》の謎めいたまなざしが、日本の観客を迎えている。
※本記事は国立新美術館、日本テレビなどが公表している情報をもとに構成しています。作品に関する評価・位置づけには研究上の議論が存在する場合があります。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
独立メディアだからこそできる、忖度しない報道を。

コメント
0件まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか。
この記事のコメント投稿は締め切られています。