仙台市の郡和子市長が2023年度から2025年度までの3年間に行った海外出張11回で、同行職員や関連事業を含む経費が総額約6672万円に上った問題で、郡市長は2026年10月27日の定例記者会見で、支出は適正だったとの認識を改めて示した。市は23日から出張経費の内訳や成果をホームページで公表しているが、航空機のビジネスクラス利用を含め、具体的な経費削減策や運用変更は明言していない。
海外活動をめぐる高額経費が問題となった福岡県では、契約手続きや宿泊基準を見直し、弁護士による第三者委員会が支出の妥当性などを検証する仕組みを設けた。仙台市と福岡県では公務の内容も制度も異なるが、自治体の海外活動にどこまで公費を投じ、その支出の合理性と成果を誰が確認するのかという課題が共通している。
出張費を公開した仙台市 市長は適正性を改めて主張
仙台市が10月23日に公表した資料には、郡市長の海外出張について、訪問目的、日程、経費の内訳、主な活動成果などが掲載されている。市議会で出張費が高額ではないかとの指摘があったことを受け、従来より詳細な情報を示すことになった。
週刊TAKAPIは24日、2025年4月と10月のパリ出張2回で計1403万5362円を支出し、郡市長が往復ともビジネスクラスを利用していたことを報じた。この金額には市長本人だけでなく、同行職員の旅費、通訳費、車両借り上げ費、現地での事業経費などが含まれる。
郡市長は27日の会見で、海外での国際会議や観光プロモーションを通じて投資や交流を呼び込み、都市の国際的な存在感を高めることが重要だと説明した。タイや香港との航空路線の就航、国際会議の誘致、外国人宿泊者数の増加などを成果として挙げ、出張は適切に実施されているとの認識を示した。
車両借り上げ費については、同行職員が複数の用務に分かれて行動する場合や、安全確保のために必要だと説明。通訳についても、市長個人のためだけでなく、複数の公務やイベントに対応するための支出だったとして、その必要性を主張した。
ビジネスクラスの変更は明言せず 市長が説明した必要性
会見では、市長がビジネスクラスを利用し、同行した一般職員がエコノミークラスだったことについても質問が出た。
市の担当課長は、旅費規定上、市長はファーストクラスを利用できるものの、他の政令指定都市の状況を踏まえ、実際にはビジネスクラスを使用していると説明した。
郡市長も、国際会議の発表資料を機内で確認する必要があることや、現地到着後の職務遂行、セキュリティーへの配慮を理由に、ビジネスクラス利用には必要性があるとの考えを示した。
一方、記者から今後のエコノミークラス利用や経費見直しについて問われた際、座席区分を変更する具体的な方針は示さなかった。経費については適正に予算を立てて執行する考えを述べており、現時点でビジネスクラス利用を廃止する決定は確認できない。
規定に沿った支出であることと、複数の選択肢の中から最も合理的な経費を選んだかどうかは、必ずしも同じではない。航空券の購入時期や変更条件、移動時間、公務日程などを踏まえた比較資料がなければ、他の座席区分を利用した場合の費用差を正確に評価することはできない。
福岡県は契約や宿泊基準を見直し 第三者委員会も設置
海外活動費のあり方について、別の対応を進めているのが福岡県だ。
県が7月に公表した資料では、2021年度以降、知事・副知事を団長として実施された海外活動23件の経費が計約3億3700万円に上った。活動人数や現地事業の規模、対象期間が仙台市とは異なるため、単純な総額比較によって支出の高低を判断することはできない。
福岡県は高額な宿泊費などをめぐる指摘を受け、海外活動の契約手続きを原則として競争入札とする運用を導入した。宿泊施設は原則として基準額の範囲内から選び、知事の宿泊先も職員と同水準とする方針を示したほか、海外出張を総務部長が確認する仕組みを整えている。
さらに9月17日には、弁護士5人で構成する海外活動に関する第三者委員会を設置した。県は委員会の結論が出るまで知事・副知事の海外活動を実施しない方針を公表しており、過去の支出の妥当性などについて外部の視点から検証することとしている。
ただし、委員会の設置は、不正や違法な支出が認定されたことを意味しない。検証結果と、そこから具体的にどのような制度変更が行われるかは区別して評価する必要がある。
福岡県議会は原則エコノミーを提言 仙台市長とは異なる制度
福岡県議会でも、海外視察に関する運用の見直しが進められている。
10月16日、超党派の議会改革プロジェクトチームは、高額な海外視察費の問題を受け、航空機の座席を原則エコノミークラスとし、宿泊施設も一般職員と同等の水準とする改善策を最終答申として議長に提出した。
参加人数を必要最小限とすることに加え、視察に参加した議員全員が報告書を作成し、原則2カ月以内に公表することも提言している。経費の内訳だけでなく、実施した活動を議員自身が説明する仕組みを重視した内容だ。
もっとも、これは県議会議員の海外視察に関する答申であり、福岡県知事の航空機利用規定が変更されたことを意味しない。また、仙台市長の公務出張にも直接適用されない。
両者に共通する検証課題は、渡航の必要性を判断する基準、適切な人数と旅費の設定、支出後の成果報告を、市民が確認できる形で整えることにある。
11月には米国出張も予定 経費公表の次に問われるもの
郡市長は11月、仙台市の姉妹都市である米カリフォルニア州リバサイド市を訪問する予定だ。姉妹都市提携70周年に関する行事に加え、観光プロモーションなどを実施する考えを示している。
市長は今後の海外出張についても、今回と同様に経費の内訳を公表する方針を明らかにした。ただし、27日の会見では、米国出張の詳細な日程や経費削減策について具体的な説明はなかった。
国際会議への参加や都市間交流には、すぐに金額で評価できない成果もある。国際的な関係構築が将来の投資や観光交流につながる可能性を否定することはできない。一方で、航空路線の就航や外国人宿泊者数の増加には、航空会社の経営判断や観光需要など複数の要因が関わっており、市長の出張だけによる成果と断定することも難しい。
必要なのは、個々の出張で何を目的とし、どのような合意や事業の進展があったのかを、支出額とともに検証できる情報だ。今後の米国出張についても、同行人数、旅費の手配条件、現地活動の成果を確認することが、公費支出の合理性を判断する材料となる。
仙台市が始めた詳細な経費公表は、行政支出を検証するための情報を増やした。ただ、経費を公表すること自体が、支出の妥当性や費用対効果を証明するわけではない。公開した数字をどのような基準で評価し、必要に応じて制度や運用に反映させるのかが、今後の焦点となる。
編集部まとめ
仙台市は郡和子市長による海外出張11回、約6672万円の経費を公表した。郡市長は10月27日の会見で支出の適正性を主張したが、ビジネスクラス利用などの具体的な見直し方針は明言していない。一方、福岡県の知事部局は契約や宿泊基準を見直し、第三者委員会による検証を進めている。福岡県議会も海外視察の改善策を答申した。制度や公務の内容は異なるが、支出の根拠と成果を市民が継続して検証できる情報公開が重要となる。
特記事項
本記事は仙台市の2026年10月27日付市長会見記録と海外出張公表資料、福岡県の海外活動改革方針、福岡県議会の10月16日付改革答申に関する公開情報を基に構成した。両自治体の支出総額を単純比較せず、出張成果の因果関係や違法性について未確認の事項は断定していない。
週刊TAKAPI編集部/松本
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