【沖縄県知事選2026】下地幹郎氏とは?元国務大臣が再挑戦、「第3極」掲げる政策・経歴と批判を徹底検証

2026年9月13日に投開票される沖縄県知事選。

現職の玉城デニー氏、前那覇市副市長の古謝玄太氏らとは異なる「第3極」を掲げ、3度目の沖縄県知事選に挑戦するのが、元衆議院議員で元国務大臣の下地幹郎(しもじ・みきお)氏(65)だ。

下地氏は衆議院議員を通算6期務め、沖縄開発政務次官、経済産業大臣政務官、郵政民営化・防災担当大臣などを歴任。

自民党、地域政党、国民新党、日本維新の会など、複数の政党・政治勢力で活動してきた経験を持つ。

2024年の衆議院選挙で落選した後には政界引退を表明した。

しかし2026年7月13日、その判断を撤回し、沖縄県知事選への出馬を表明した。

さらに、その約1カ月前には知事選への出馬を否定していたこともあり、

「なぜ一度引退を表明した政治家が再び立候補するのか」

という点も今回の選挙で問われることになる。

政策面では、玉城氏の「辺野古反対」とも、古謝氏の「辺野古移設容認」とも異なる独自案を提示。

辺野古の計画を見直し、既に埋め立てられた区域を活用した**「民軍共用やんばる国際空港」**構想を掲げる。

教育費の完全無償化、22歳以下の公共交通無償化、電気料金支援、出産支援、鉄道整備など、大規模な政策も数多く打ち出した。

一方で、その政策には巨額の財源が必要となる。

また、過去には統合型リゾート(IR)事業を巡る事件に関連して、中国企業元顧問側から100万円を受け取っていたことを下地氏自身が認め、日本維新の会から除名処分を受けた経緯もある。

長い政治経験は「交渉力」となるのか。

それとも過去の政治活動や引退撤回への評価が足かせとなるのか。

週刊TAKAPIでは、下地氏が掲げる政策だけでなく、経歴、過去の選挙、政策の実現可能性、批判されてきた問題、本人側の説明まで含めて検証する。


下地幹郎氏とは?

下地幹郎氏は1961年8月14日、沖縄県平良市、現在の宮古島市生まれ。

中央学院大学を卒業後、民間企業などを経て政治の世界へ進んだ。

1996年の衆議院議員選挙で初当選。

その後、衆議院議員を通算6期務めた。

国政では、

  • 沖縄開発政務次官
  • 経済産業大臣政務官
  • 郵政民営化担当大臣
  • 内閣府特命担当大臣(防災)

などを歴任している。

沖縄選出・出身政治家の中でも、国政経験が長い人物の一人だ。


自民党から国民新党、維新へ 複数の政治勢力で活動

下地氏の政治経歴の特徴の一つが、所属する政治勢力を何度も変えてきたことだ。

最初の衆院選では自民党から出馬。

その後、自民党を離れ、地域政党「そうぞう」を設立した。

さらに国民新党へ入党。

民主党政権時代の2012年には、野田内閣で郵政民営化・防災担当大臣を務めた。

その後は日本維新の会などでも活動している。

こうした経歴については、

「党派を超えて政策を進めることのできる柔軟性」

と評価する見方がある一方、

「政治的立場が変わり続けており、一貫性が分かりにくい」

という見方も成り立つ。

今回、下地氏が掲げる「右でも左でもない第3極」という姿勢は、こうした自身の政治経歴とも重なる部分がある。


沖縄県知事選への挑戦は3度目

下地氏にとって、今回が初めての沖縄県知事選ではない。

2014年にも知事選に出馬。

さらに2022年の知事選にも無所属で立候補した。

2022年知事選では、

5万3677票

を獲得したものの、現職の玉城デニー氏らに及ばなかった。

そして2026年。

3度目の県知事選への挑戦となる。

過去2回の知事選で当選に届かなかった下地氏が、今回どこまで従来とは異なる支持層へ浸透できるかも注目される。


2024年衆院選後には「政界引退」を表明

今回の出馬で重要な論点となっているのが、

政界引退の撤回

だ。

下地氏は2024年10月の衆議院議員選挙で沖縄1区から無所属で立候補したが落選。

その後、政界から引退する意向を示した。

政治活動に一区切りをつけたかに見えた。

その後は沖縄ファースト政策研究所を設立。

また、久米島オーシャンジェットの経営にも関わり、離島交通などの事業を進めてきた。

ところが約1年9カ月後、知事選への出馬を決断した。


批判①「引退すると言ったのではないか」

当然、

「一度引退すると言ったのに、なぜ再び選挙に出るのか」

という疑問が生じる。

さらに2026年6月17日の取材では、知事選への出馬を否定したと報じられた。

それから約1カ月後の7月13日、出馬を正式表明している。

引退表明。

出馬否定。

そして出馬表明。

短期間で判断が変化したことについて、有権者への説明は避けて通れない。


下地氏側も「判断を変えた」と認める

下地氏側も、この問題をなかったことにはしていない。

公式サイトでは、

2024年に政界引退を表明した事実から逃げず、判断を変えた理由を説明する

との姿勢を示している。

出馬表明の会見では、再挑戦する理由について、現在の沖縄が抱える課題を解決するため自身の経験が必要だと判断したとの趣旨を説明している。

また、出馬表明まで立候補を否定していた理由については、支持者への圧力などを考慮し、ぎりぎりまで明言しなかったと説明した。

一方、下地氏の公式サイトでも、公表を遅らせたことで不信や混乱を招いたことについて謝意を示す内容が掲載されている。

ただし、掲載されている「再挑戦の理由」には、8月18日時点でも事務局整理案・本人確認中とされている部分がある。

そのため、正式な本人説明として確定している内容と、事務局が整理した説明を区別して見る必要がある。


「第3極」を掲げる下地氏

下地氏が今回の選挙で前面に出しているのが、

「第3極」

という立場だ。

玉城デニー氏を中心とする「オール沖縄」側。

古謝玄太氏を支える保守系・各政党。

そのどちらにも属さない立場から県政を目指すとしている。

下地氏は、

「反対だけでもなく、国に従うだけでもない」

という考え方を掲げ、県が具体的な案をつくり、国や米国側と交渉する政治を訴えている。

基地問題でもこの姿勢が強く表れている。


最大の特徴「辺野古を民軍共用空港へ」

辺野古問題について、主要候補の立場は大きく異なる。

玉城デニー氏は辺野古新基地建設に反対。

古謝玄太氏は普天間飛行場の危険性除去を優先し、現在の辺野古移設を容認する立場だ。

これに対し下地氏は、

現在の計画をそのまま進めることにも反対する。

しかし、

辺野古そのものを全面的に否定するわけでもない。

下地氏が提案しているのが、

「民軍共用やんばる国際空港」

構想だ。


2800メートル滑走路を整備する構想

現在のV字型滑走路計画を見直し、既に埋め立てられた区域を活用。

新たな軟弱地盤部分の埋め立てを行わず、約2800メートルの滑走路を設けるとしている。

米軍だけではなく民間航空にも利用させ、

基地機能と北部地域の経済振興を両立させる

という構想だ。

下地氏側は、

7年で完成

させる計画を掲げている。

政策資料では建設コストとして約5000億円という数字も示している。


批判②「国と米国が認めなければ実現できない」

大胆な構想だが、最大の問題は、

沖縄県だけでは決められない

という点だ。

普天間飛行場の移設は、日本政府と米国政府が関係する安全保障政策だ。

滑走路の位置や長さ。

米軍施設としての運用。

民間航空機との共同利用。

安全基準。

環境影響。

建設費。

完成時期。

すべてについて国や米側との協議が必要になる。

つまり、知事が就任直後に「変更する」と決めれば実現できる政策ではない。

下地氏自身も、国や米側との合意や技術・法制度・環境面の検証が必要だとしている。

したがって、

「7年で完成」という期限を本当に守れるのか

は大きな検証ポイントになる。


玉城氏にも古謝氏にも批判的

下地氏は辺野古問題について、玉城氏と古謝氏の双方を批判している。

玉城氏については、長年辺野古反対を訴えながら工事を止められていないとして、国との協議へ転換するべきだと主張。

一方、古謝氏についても、現在の辺野古移設計画をそのまま認めるだけでは基地の整理・縮小につながらないと指摘している。

つまり下地氏は、

玉城氏=反対

古謝氏=容認

という二択そのものを否定し、自分の案を国へ提示して交渉することを訴える。

これが下地氏の「第3極」を象徴する政策だ。


那覇軍港の浦添移設には反対

下地氏は那覇軍港についても、現在進められている浦添市への移設計画に反対する。

現在の移設計画を中止し、那覇軍港そのものの返還や跡地利用を含めて新たな解決策を検討するとしている。

辺野古と同様、

基地を別の県内地域へ移すだけでは負担軽減にならない

という考えが背景にある。


長距離ミサイル配備にも反対

安全保障政策では、専守防衛と非核三原則を堅持するとしている。

また、いわゆる敵基地攻撃・反撃能力を持つミサイルの沖縄県内配備にも反対する。

保守・革新という従来の単純な分類では説明しにくい政策構成となっている。

基地問題では現政府と異なる主張を持ちながら、政府との交渉そのものは重視するという立場だ。


教育費「完全無償化」を掲げる

基地問題と並ぶ下地氏の目玉政策が、

教育費の完全無償化

だ。

対象は幼児教育から大学・専門学校までを想定。

授業料だけではなく、

  • 学校給食
  • 18歳以下の医療
  • 朝食支援
  • 学習塾
  • 習い事
  • 県外遠征費

など幅広い子育て・教育費を支援対象とする構想を掲げている。

下地氏側の最新政策では、

年間850億円

を試算している。


22歳以下はバス・モノレール無料へ

さらに、

22歳以下のバス・モノレール運賃無償化

を掲げる。

学生だけではなく、就職した若者の通勤や就職活動、日常生活での移動も支援する考えだ。

政策資料では年間80億円を試算している。

沖縄では車への依存度が高く、若者や車を持たない人の移動手段確保は重要な課題だ。

一方、離島住民との公平性や交通事業者への補填方法など、制度設計はこれからとなる。


電気料金を月5000円支援

物価高対策では、

月5000円の電気料金支援

を掲げている。

最新の公式政策では、年収500万円以下の世帯を対象とする案として整理されている。

48万世帯を対象とした場合、

年間288億円

を試算している。

家計への効果は分かりやすい一方、毎年実施するなら継続的な財源が必要になる。


出産時「総額200万円」を目指す

出産・子育て支援も大胆だ。

国の出産育児一時金に県独自の支援を追加し、

子ども1人当たり給付総額200万円

を目指すとしている。

県独自分は150万円。

年間出生数を1万2000人とした場合、

年間180億円

程度を見込む。

少子化対策として直接的な経済支援を大幅に拡充する政策だ。


重点4政策だけで約1398億円

ここで大きな問題になるのが、

財源

だ。

下地氏の公式政策では、

教育費完全無償化 850億円

22歳以下交通無償化 80億円

電気料金支援 288億円

出産支援 180億円

としている。

合計すると、

1398億円

になる。

沖縄県の年間予算から見ても非常に大きな規模だ。


批判③「財源を本当に確保できるのか」

給付や無償化を増やす政策は、有権者にとって分かりやすい。

しかし、

「何をするか」と同じくらい「どこからお金を持ってくるか」が重要だ。

教育。

交通。

電気料金。

出産。

さらに下地氏は、

鉄道、

住宅、

医療、

離島、

基地政策、

大型インフラ

なども掲げている。

これらを同時に実現する場合、巨額の財源が必要になる。

国から新たな財源を確保するのか。

既存の県予算を組み替えるのか。

新たな県収入を生み出すのか。

民間資金を利用するのか。

具体的な財源構成が、今後さらに問われる。

下地氏側も公式サイトで、制度設計や予算審議、関係機関との調整が必要だと明記している。

政策の規模を自ら数字で示している点は評価材料になり得るが、

数字を出したからこそ、その1398億円をどう確保するのかも検証対象になる。


子どもの貧困問題を最重要課題の一つに

下地氏は沖縄の子どもの貧困問題を、県政の重要課題に位置づけている。

教育費完全無償化だけではなく、

  • 学校内学童
  • 子ども食堂
  • ベビーミルク支援
  • フリースクール
  • 児童養護施設を退所した若者への支援
  • 特別支援学校の送迎支援

などを掲げる。

家庭の経済状況によって教育機会や将来の選択肢が変わらない沖縄を目指すとしている。


低所得・低年金世帯にも独自支援

高齢者政策では、低年金・低所得者への県独自支援を提案。

対象者を6万人とした場合、月1万円を追加支援し、

年間約72億円

を必要額として試算している。

ここでも、支援そのものの是非に加えて、恒久的な財源をどう確保するかが課題となる。


「沖縄本島縦貫鉄道」を実現すると公約

下地氏が長年訴えてきた政策の一つが鉄道だ。

今回の知事選では、

糸満市から本部町までを結ぶ沖縄本島縦貫鉄道

を掲げている。

県、沿線自治体、民間企業などによる協議会や運営会社をつくり、鉄道整備を進める構想だ。

出馬表明時には、

4年以内に着工、10年以内に完成

との目標を示している。

一方、政策資料には5年間での完工を前提とした試算もあり、工程について異なる数字が存在している。

公式サイト側もこの差を認識し、確認・更新するとしている。


批判④「鉄道の完成時期はどれが正式なのか」

これは小さな問題ではない。

大型公共事業では、

完成時期と事業費

が政策を判断する重要な要素になる。

「5年で完成」

なのか、

「4年以内に着工して10年以内に完成」

なのか。

数字によって現実性は大きく変わる。

下地氏側がこうした数字の違いを公式サイトで明示していること自体は、情報公開という意味では特徴的だ。

一方で、有権者が判断するためには、最終的な工程を一本化する必要がある。


鉄道は採算が取れるのか

下地氏側の政策資料では、鉄道事業について、

売上約427億円

支出約386億円

利益約41億円

という試算を示している。

ただし鉄道事業は利用者数、建設費、金利、維持管理費、駅周辺開発などによって採算性が大きく変わる。

沖縄本島に本格鉄道を整備する構想は以前から議論されてきたが、巨額の建設費や需要予測などが課題となってきた。

したがって、

「利益が出る」という試算の前提条件が現実的なのか

も詳しく検証する必要がある。


2030年G7を沖縄へ

下地氏は2030年のG7関連会合を沖縄へ誘致する政策も掲げている。

国際会議を誘致することで、

平和発信、

観光、

国際交流、

沖縄の知名度向上

につなげたい考えだ。

2000年には九州・沖縄サミットが沖縄で開かれており、国際会議を再び沖縄へ呼び込むという象徴的な政策でもある。


「地元企業ファースト」

経済政策では、

沖縄で生まれた利益を県内へ循環させる

ことを重視している。

特に売上20億円以下の県内企業を政策の中心に置き、

公共事業などで県内企業が仕事を受けやすい制度を検討するとしている。

また、

低所得世帯向け1万戸の住宅供給

なども掲げる。

県内企業の育成や住宅価格高騰への対策として注目される一方、公共調達制度の公平性や競争性、公営住宅の役割との整合性など、制度面の検討も必要になる。


県庁改革 副知事3人、局長の半数を女性へ

行政組織についても大きく変える考えだ。

下地氏は、

副知事3人体制

を提案。

そのうち少なくとも1人を女性とする。

また、県庁の「部」を「局」に再編し、

局長の半数を女性にする

目標を掲げる。

さらに専門家を参与として登用し、政策立案や国・米国との交渉力を強化するとしている。


ワシントン事務所は廃止ではなく「交渉力強化」

玉城県政で大きな問題となった沖縄県ワシントン事務所。

下地氏は単純な廃止を主張しているわけではない。

むしろ、交渉能力の高い人材や通訳などを配置し、

米政府や米議会との交渉力を強化する

構想を示している。

玉城県政のワシントン事務所問題については批判する一方、米国で沖縄の立場を直接伝える機能そのものは必要と考えていることになる。


過去の問題 IRを巡る100万円受領

下地氏の政治経歴を検証する上で避けられないのが、2020年に明らかになった100万円の受領問題だ。

カジノを含む統合型リゾート事業を巡る汚職事件の捜査過程で、2017年の衆議院選挙期間中、下地氏の事務所職員が中国企業の元顧問側から、

現金100万円

を受け取っていたことが明らかになった。

下地氏自身が会見で受領の事実を認め、謝罪した。

当時の説明によれば、100万円は選挙資金として受け取られたものの、領収書は発行されず、収支報告にも記載されていなかった。


日本維新の会は下地氏を除名

問題を受け、当時所属していた日本維新の会は下地氏を除名処分とし、議員辞職を求めた。

下地氏はその後、収支報告書を修正するなどして説明責任を果たしたとの立場を示してきた。

ただ、政治家として公金や政治資金の透明性を求められる以上、

過去に不記載の現金を受け取っていた事実を有権者がどう評価するか

は、今回の知事選でも判断材料になり得る。


批判⑤「過去の政治資金問題をどう説明するのか」

この問題について重要なのは、センセーショナルな表現ではなく、確認されている事実を区別することだ。

確認されているのは、

中国企業元顧問側から下地氏の事務所が100万円を受け取っていたこと

下地氏自身が受領を認め謝罪したこと

収支報告書に記載されていなかったこと

日本維新の会から除名処分を受けたこと

だ。

知事は県の巨額予算と行政組織を管理する立場にある。

そのため、過去の政治資金を巡る問題について、現在どのように考え、再発防止や政治資金の透明性をどう確保するのか。

3度目の県知事選に挑む以上、改めて説明を求められるテーマだ。


「30年の実績」をどう評価するか

下地氏は長い政治経験を自身の強みとしている。

国会議員6期。

政務次官。

大臣政務官。

国務大臣。

中央政府との交渉経験は、他の新人候補と比較した場合の明確な特徴だ。

一方、長く政治に関わってきたということは、

過去の政策判断についても評価される

ということでもある。

今回の公式サイトでは過去の実績について、本人側が関与した政策を単純に「下地氏一人で実現した成果」と表現せず、共同した行政機関などを含めて検証する方針を示している。

候補者自身のサイトとしては特徴的な取り組みだが、最終的には第三者資料を含めて一つ一つ確認する必要がある。


批判⑥「ベテランなのに本当に第3極なのか」

下地氏は「第3極」「新しい政治」を掲げる。

しかし下地氏自身は、1996年に初当選して以来、約30年にわたって沖縄政治・国政に関わってきたベテラン政治家だ。

そのため、

「長年政治の中心にいた人物が、本当に既存政治を変える第3極と言えるのか」

という見方も出てくる。

一方で下地氏側からすれば、

自民党政権だけではなく民主党政権にも参加し、複数の政党や無所属で活動してきた経験こそ、保守・革新双方と交渉できる強みだということになる。

この「経験」を、

古い政治

と見るのか、

交渉力

と見るのか。

有権者によって評価は大きく分かれそうだ。


「第3極」は本当に支持を広げられるのか

2022年知事選で下地氏が獲得したのは5万3677票。

一定の支持は得たものの、当選には大きく届かなかった。

今回も玉城氏と古謝氏という大きな陣営が形成される中、

政党による大規模な組織支援に頼らず、どこまで票を伸ばせるか

が課題となる。

さらに今回は、これまで下地氏を支えてきた人物の一部が古謝氏支援へ回る動きも報じられている。

「第3極」を掲げるなら、従来の下地支持層だけでなく、

無党派層、

若者、

玉城・古謝両氏のいずれにも投票したくない有権者

へ浸透する必要がある。


玉城デニー氏との違い

辺野古について、

玉城氏は移設反対

下地氏は現在の計画を見直し、民軍共用空港へ転換

安全保障では両氏とも政府方針に異議を唱える部分があるが、下地氏は「反対運動」よりも国や米側へ具体案を提示して交渉する姿勢を強調する。


古謝玄太氏との違い

古謝氏は現在進む辺野古移設を容認し、中央政府との連携を重視する。

下地氏は政府との交渉を重視する点では共通するものの、

現在の辺野古計画をそのまま受け入れない。

また敵基地攻撃・反撃能力を持つミサイルの県内配備などにも反対する。

そのため基地・安全保障政策では、古謝氏とも明確な違いがある。


主要3氏は辺野古で三つの選択肢

主要3氏の違いを整理すると、

玉城デニー氏

現在の辺野古移設計画に反対

古謝玄太氏

現在の辺野古移設計画を容認

下地幹郎氏

現在の計画を見直し、民軍共用空港へ変更

となる。

2026年知事選では、辺野古問題について単純な「賛成・反対」だけではない選択肢が提示された形だ。


下地幹郎氏の強みは何か

下地氏を評価する側から見れば、最大の強みは、

圧倒的な政治経験

だろう。

国会議員6期。

国務大臣。

中央省庁との交渉。

複数政党との政治経験。

基地問題。

離島政策。

交通。

これまで国と直接交渉する立場を経験している。

沖縄県だけでは解決できない問題が多い中、

「東京や米国と交渉できる」

ことを自身の強みとしている。


一方で弱点も明確

しかし同時に、

  • 過去2回の知事選で落選
  • 2024年衆院選でも落選
  • 政界引退を表明した後の撤回
  • 出馬否定から約1カ月後の出馬表明
  • IRを巡る100万円受領問題
  • 政党・政治勢力を複数移ってきた経歴
  • 巨額政策の財源
  • 辺野古新構想の実現可能性

など、説明を求められる点も多い。

経験が豊富であるからこそ、

「過去ではなく新しい政治」と言うなら何が新しいのか

を具体的に示す必要がある。


週刊TAKAPIが見る「7つの検証ポイント」

下地幹郎氏を判断する上で、特に注目すべきポイントは7つある。

① なぜ政界引退を撤回したのか

一度有権者に引退を表明した以上、再挑戦する理由について十分な説明が必要となる。

② なぜ出馬を否定した直後に立候補したのか

選挙前の情報公開や政治家としての説明のあり方が問われる。

③ 辺野古の「民軍共用空港」は本当に実現できるのか

国・米国との合意、費用、環境、技術、工期など解決すべき問題は多い。

④ 約1398億円の重点政策の財源はどこから出すのか

教育、交通、電気料金、出産支援だけで巨額の予算が必要になる。

⑤ 鉄道を本当に完成させられるのか

着工・完成時期や採算性について、より詳細な説明が必要になる。

⑥ 過去の100万円受領問題をどう説明するのか

知事には行政と予算の透明性が強く求められる。

⑦ 「第3極」は単なるキャッチコピーではないのか

玉城・古謝両氏と違うことだけでなく、実際に県政を動かせる政治基盤をつくれるかが問われる。


下地幹郎氏をどう評価するか

下地幹郎氏ほど、

評価が分かれやすい候補者

も珍しい。

30年近い政治経験を、

「沖縄のために使える豊富な経験」

と見る人もいる。

一方、

「長く既存政治に関わってきた人物」

と見る人もいる。

大胆な政策を、

「今までにない発想」

と評価することもできる。

反対に、

「財源や国との交渉を考えれば実現性に疑問がある」

と見ることもできる。

まさに、強みと弱みが表裏一体の候補だ。


「反対でも容認でもない」政治は実現するのか

下地氏が今回訴えるメッセージは明確だ。

辺野古では、

反対だけではない。

しかし、

現在の政府案をそのまま受け入れるわけでもない。

経済や交通でも、

既存政策の延長ではなく大型構想を打ち出す。

それを「第3極」と呼んでいる。

しかし政治は、案を出すだけでは実現しない。

議会。

市町村。

中央政府。

米国政府。

県民。

民間企業。

さまざまな関係者との合意が必要だ。

下地氏が強調する「交渉力」が、実際に結果へつながるのか。

そこが今回の知事選で問われる。


2026年沖縄県知事選 3度目の挑戦

沖縄県知事選は、

8月27日告示9月13日投開票

の予定。

2026年8月18日時点では告示前のため、本記事では下地氏を「立候補予定者」「出馬を表明している」と表記している。

正式な候補者は告示日の立候補届け出によって確定する。

下地幹郎氏にとって今回は、3度目となる沖縄県知事選。

政界引退を撤回してまで挑む選挙で、

「第3極」

という選択肢が県民にどこまで受け入れられるのか。

そして、

豊富な政治経験と過去への評価を、有権者がどう判断するのか。

9月13日、県民の審判が下される。


編集部注

本記事は2026年8月18日時点で、候補者公式資料、沖縄県などの公的資料、過去の選挙結果、県内外の報道機関による公開情報を基に作成しています。

候補者側が掲げる「実績」については、下地氏個人だけで実現したものと断定せず、行政機関や関係者が共同して進めた事業と区別して評価しています。

政策に記載された事業費や完成時期について複数の数字が確認される場合は、その違いを明記しました。

また、IRを巡る100万円受領問題については、確認されている金銭授受、本人の説明、当時の党による処分を区別し、事件全体を下地氏個人の刑事責任として扱わないよう留意しています。

候補者への批判についても、批判そのものを事実認定とはせず、確認可能な事実と候補者側の説明を分けて記載しています。

選挙期間中に政策、立候補状況、支援関係などに変更が確認された場合は随時更新します。

© 週刊TAKAPI / WEEKLY TAKAPI

2026年9月13日に投開票される沖縄県知事選。

現職の玉城デニー氏、前那覇市副市長の古謝玄太氏らとは異なる「第3極」を掲げ、3度目の沖縄県知事選に挑戦するのが、元衆議院議員で元国務大臣の**下地幹郎(しもじ・みきお)氏(65)**だ。

下地氏は衆議院議員を通算6期務め、沖縄開発政務次官、経済産業大臣政務官、郵政民営化・防災担当大臣などを歴任。

自民党、地域政党、国民新党、日本維新の会など、複数の政党・政治勢力で活動してきた経験を持つ。

2024年の衆議院選挙で落選した後には政界引退を表明した。

しかし2026年7月13日、その判断を撤回し、沖縄県知事選への出馬を表明した。

さらに、その約1カ月前には知事選への出馬を否定していたこともあり、

「なぜ一度引退を表明した政治家が再び立候補するのか」

という点も今回の選挙で問われることになる。

政策面では、玉城氏の「辺野古反対」とも、古謝氏の「辺野古移設容認」とも異なる独自案を提示。

辺野古の計画を見直し、既に埋め立てられた区域を活用した**「民軍共用やんばる国際空港」**構想を掲げる。

教育費の完全無償化、22歳以下の公共交通無償化、電気料金支援、出産支援、鉄道整備など、大規模な政策も数多く打ち出した。

一方で、その政策には巨額の財源が必要となる。

また、過去には統合型リゾート(IR)事業を巡る事件に関連して、中国企業元顧問側から100万円を受け取っていたことを下地氏自身が認め、日本維新の会から除名処分を受けた経緯もある。

長い政治経験は「交渉力」となるのか。

それとも過去の政治活動や引退撤回への評価が足かせとなるのか。

週刊TAKAPIでは、下地氏が掲げる政策だけでなく、経歴、過去の選挙、政策の実現可能性、批判されてきた問題、本人側の説明まで含めて検証する。


下地幹郎氏とは?

下地幹郎氏は1961年8月14日、沖縄県平良市、現在の宮古島市生まれ。

中央学院大学を卒業後、民間企業などを経て政治の世界へ進んだ。

1996年の衆議院議員選挙で初当選。

その後、衆議院議員を通算6期務めた。

国政では、

  • 沖縄開発政務次官
  • 経済産業大臣政務官
  • 郵政民営化担当大臣
  • 内閣府特命担当大臣(防災)

などを歴任している。

沖縄選出・出身政治家の中でも、国政経験が長い人物の一人だ。


自民党から国民新党、維新へ 複数の政治勢力で活動

下地氏の政治経歴の特徴の一つが、所属する政治勢力を何度も変えてきたことだ。

最初の衆院選では自民党から出馬。

その後、自民党を離れ、地域政党「そうぞう」を設立した。

さらに国民新党へ入党。

民主党政権時代の2012年には、野田内閣で郵政民営化・防災担当大臣を務めた。

その後は日本維新の会などでも活動している。

こうした経歴については、

「党派を超えて政策を進めることのできる柔軟性」

と評価する見方がある一方、

「政治的立場が変わり続けており、一貫性が分かりにくい」

という見方も成り立つ。

今回、下地氏が掲げる「右でも左でもない第3極」という姿勢は、こうした自身の政治経歴とも重なる部分がある。


沖縄県知事選への挑戦は3度目

下地氏にとって、今回が初めての沖縄県知事選ではない。

2014年にも知事選に出馬。

さらに2022年の知事選にも無所属で立候補した。

2022年知事選では、

5万3677票

を獲得したものの、現職の玉城デニー氏らに及ばなかった。

そして2026年。

3度目の県知事選への挑戦となる。

過去2回の知事選で当選に届かなかった下地氏が、今回どこまで従来とは異なる支持層へ浸透できるかも注目される。


2024年衆院選後には「政界引退」を表明

今回の出馬で重要な論点となっているのが、

政界引退の撤回

だ。

下地氏は2024年10月の衆議院議員選挙で沖縄1区から無所属で立候補したが落選。

その後、政界から引退する意向を示した。

政治活動に一区切りをつけたかに見えた。

その後は沖縄ファースト政策研究所を設立。

また、久米島オーシャンジェットの経営にも関わり、離島交通などの事業を進めてきた。

ところが約1年9カ月後、知事選への出馬を決断した。


批判①「引退すると言ったのではないか」

当然、

「一度引退すると言ったのに、なぜ再び選挙に出るのか」

という疑問が生じる。

さらに2026年6月17日の取材では、知事選への出馬を否定したと報じられた。

それから約1カ月後の7月13日、出馬を正式表明している。

引退表明。

出馬否定。

そして出馬表明。

短期間で判断が変化したことについて、有権者への説明は避けて通れない。


下地氏側も「判断を変えた」と認める

下地氏側も、この問題をなかったことにはしていない。

公式サイトでは、

2024年に政界引退を表明した事実から逃げず、判断を変えた理由を説明する

との姿勢を示している。

出馬表明の会見では、再挑戦する理由について、現在の沖縄が抱える課題を解決するため自身の経験が必要だと判断したとの趣旨を説明している。

また、出馬表明まで立候補を否定していた理由については、支持者への圧力などを考慮し、ぎりぎりまで明言しなかったと説明した。

一方、下地氏の公式サイトでも、公表を遅らせたことで不信や混乱を招いたことについて謝意を示す内容が掲載されている。

ただし、掲載されている「再挑戦の理由」には、8月18日時点でも事務局整理案・本人確認中とされている部分がある。

そのため、正式な本人説明として確定している内容と、事務局が整理した説明を区別して見る必要がある。


「第3極」を掲げる下地氏

下地氏が今回の選挙で前面に出しているのが、

「第3極」

という立場だ。

玉城デニー氏を中心とする「オール沖縄」側。

古謝玄太氏を支える保守系・各政党。

そのどちらにも属さない立場から県政を目指すとしている。

下地氏は、

「反対だけでもなく、国に従うだけでもない」

という考え方を掲げ、県が具体的な案をつくり、国や米国側と交渉する政治を訴えている。

基地問題でもこの姿勢が強く表れている。


最大の特徴「辺野古を民軍共用空港へ」

辺野古問題について、主要候補の立場は大きく異なる。

玉城デニー氏は辺野古新基地建設に反対。

古謝玄太氏は普天間飛行場の危険性除去を優先し、現在の辺野古移設を容認する立場だ。

これに対し下地氏は、

現在の計画をそのまま進めることにも反対する。

しかし、

辺野古そのものを全面的に否定するわけでもない。

下地氏が提案しているのが、

「民軍共用やんばる国際空港」

構想だ。


2800メートル滑走路を整備する構想

現在のV字型滑走路計画を見直し、既に埋め立てられた区域を活用。

新たな軟弱地盤部分の埋め立てを行わず、約2800メートルの滑走路を設けるとしている。

米軍だけではなく民間航空にも利用させ、

基地機能と北部地域の経済振興を両立させる

という構想だ。

下地氏側は、

7年で完成

させる計画を掲げている。

政策資料では建設コストとして約5000億円という数字も示している。


批判②「国と米国が認めなければ実現できない」

大胆な構想だが、最大の問題は、

沖縄県だけでは決められない

という点だ。

普天間飛行場の移設は、日本政府と米国政府が関係する安全保障政策だ。

滑走路の位置や長さ。

米軍施設としての運用。

民間航空機との共同利用。

安全基準。

環境影響。

建設費。

完成時期。

すべてについて国や米側との協議が必要になる。

つまり、知事が就任直後に「変更する」と決めれば実現できる政策ではない。

下地氏自身も、国や米側との合意や技術・法制度・環境面の検証が必要だとしている。

したがって、

「7年で完成」という期限を本当に守れるのか

は大きな検証ポイントになる。


玉城氏にも古謝氏にも批判的

下地氏は辺野古問題について、玉城氏と古謝氏の双方を批判している。

玉城氏については、長年辺野古反対を訴えながら工事を止められていないとして、国との協議へ転換するべきだと主張。

一方、古謝氏についても、現在の辺野古移設計画をそのまま認めるだけでは基地の整理・縮小につながらないと指摘している。

つまり下地氏は、

玉城氏=反対

古謝氏=容認

という二択そのものを否定し、自分の案を国へ提示して交渉することを訴える。

これが下地氏の「第3極」を象徴する政策だ。


那覇軍港の浦添移設には反対

下地氏は那覇軍港についても、現在進められている浦添市への移設計画に反対する。

現在の移設計画を中止し、那覇軍港そのものの返還や跡地利用を含めて新たな解決策を検討するとしている。

辺野古と同様、

基地を別の県内地域へ移すだけでは負担軽減にならない

という考えが背景にある。


長距離ミサイル配備にも反対

安全保障政策では、専守防衛と非核三原則を堅持するとしている。

また、いわゆる敵基地攻撃・反撃能力を持つミサイルの沖縄県内配備にも反対する。

保守・革新という従来の単純な分類では説明しにくい政策構成となっている。

基地問題では現政府と異なる主張を持ちながら、政府との交渉そのものは重視するという立場だ。


教育費「完全無償化」を掲げる

基地問題と並ぶ下地氏の目玉政策が、

教育費の完全無償化

だ。

対象は幼児教育から大学・専門学校までを想定。

授業料だけではなく、

  • 学校給食
  • 18歳以下の医療
  • 朝食支援
  • 学習塾
  • 習い事
  • 県外遠征費

など幅広い子育て・教育費を支援対象とする構想を掲げている。

下地氏側の最新政策では、

年間850億円

を試算している。


22歳以下はバス・モノレール無料へ

さらに、

22歳以下のバス・モノレール運賃無償化

を掲げる。

学生だけではなく、就職した若者の通勤や就職活動、日常生活での移動も支援する考えだ。

政策資料では年間80億円を試算している。

沖縄では車への依存度が高く、若者や車を持たない人の移動手段確保は重要な課題だ。

一方、離島住民との公平性や交通事業者への補填方法など、制度設計はこれからとなる。


電気料金を月5000円支援

物価高対策では、

月5000円の電気料金支援

を掲げている。

最新の公式政策では、年収500万円以下の世帯を対象とする案として整理されている。

48万世帯を対象とした場合、

年間288億円

を試算している。

家計への効果は分かりやすい一方、毎年実施するなら継続的な財源が必要になる。


出産時「総額200万円」を目指す

出産・子育て支援も大胆だ。

国の出産育児一時金に県独自の支援を追加し、

子ども1人当たり給付総額200万円

を目指すとしている。

県独自分は150万円。

年間出生数を1万2000人とした場合、

年間180億円

程度を見込む。

少子化対策として直接的な経済支援を大幅に拡充する政策だ。


重点4政策だけで約1398億円

ここで大きな問題になるのが、

財源

だ。

下地氏の公式政策では、

教育費完全無償化 850億円

22歳以下交通無償化 80億円

電気料金支援 288億円

出産支援 180億円

としている。

合計すると、

1398億円

になる。

沖縄県の年間予算から見ても非常に大きな規模だ。


批判③「財源を本当に確保できるのか」

給付や無償化を増やす政策は、有権者にとって分かりやすい。

しかし、

「何をするか」と同じくらい「どこからお金を持ってくるか」が重要だ。

教育。

交通。

電気料金。

出産。

さらに下地氏は、

鉄道、

住宅、

医療、

離島、

基地政策、

大型インフラ

なども掲げている。

これらを同時に実現する場合、巨額の財源が必要になる。

国から新たな財源を確保するのか。

既存の県予算を組み替えるのか。

新たな県収入を生み出すのか。

民間資金を利用するのか。

具体的な財源構成が、今後さらに問われる。

下地氏側も公式サイトで、制度設計や予算審議、関係機関との調整が必要だと明記している。

政策の規模を自ら数字で示している点は評価材料になり得るが、

数字を出したからこそ、その1398億円をどう確保するのかも検証対象になる。


子どもの貧困問題を最重要課題の一つに

下地氏は沖縄の子どもの貧困問題を、県政の重要課題に位置づけている。

教育費完全無償化だけではなく、

  • 学校内学童
  • 子ども食堂
  • ベビーミルク支援
  • フリースクール
  • 児童養護施設を退所した若者への支援
  • 特別支援学校の送迎支援

などを掲げる。

家庭の経済状況によって教育機会や将来の選択肢が変わらない沖縄を目指すとしている。


低所得・低年金世帯にも独自支援

高齢者政策では、低年金・低所得者への県独自支援を提案。

対象者を6万人とした場合、月1万円を追加支援し、

年間約72億円

を必要額として試算している。

ここでも、支援そのものの是非に加えて、恒久的な財源をどう確保するかが課題となる。


「沖縄本島縦貫鉄道」を実現すると公約

下地氏が長年訴えてきた政策の一つが鉄道だ。

今回の知事選では、

糸満市から本部町までを結ぶ沖縄本島縦貫鉄道

を掲げている。

県、沿線自治体、民間企業などによる協議会や運営会社をつくり、鉄道整備を進める構想だ。

出馬表明時には、

4年以内に着工、10年以内に完成

との目標を示している。

一方、政策資料には5年間での完工を前提とした試算もあり、工程について異なる数字が存在している。

公式サイト側もこの差を認識し、確認・更新するとしている。


批判④「鉄道の完成時期はどれが正式なのか」

これは小さな問題ではない。

大型公共事業では、

完成時期と事業費

が政策を判断する重要な要素になる。

「5年で完成」

なのか、

「4年以内に着工して10年以内に完成」

なのか。

数字によって現実性は大きく変わる。

下地氏側がこうした数字の違いを公式サイトで明示していること自体は、情報公開という意味では特徴的だ。

一方で、有権者が判断するためには、最終的な工程を一本化する必要がある。


鉄道は採算が取れるのか

下地氏側の政策資料では、鉄道事業について、

売上約427億円

支出約386億円

利益約41億円

という試算を示している。

ただし鉄道事業は利用者数、建設費、金利、維持管理費、駅周辺開発などによって採算性が大きく変わる。

沖縄本島に本格鉄道を整備する構想は以前から議論されてきたが、巨額の建設費や需要予測などが課題となってきた。

したがって、

「利益が出る」という試算の前提条件が現実的なのか

も詳しく検証する必要がある。


2030年G7を沖縄へ

下地氏は2030年のG7関連会合を沖縄へ誘致する政策も掲げている。

国際会議を誘致することで、

平和発信、

観光、

国際交流、

沖縄の知名度向上

につなげたい考えだ。

2000年には九州・沖縄サミットが沖縄で開かれており、国際会議を再び沖縄へ呼び込むという象徴的な政策でもある。


「地元企業ファースト」

経済政策では、

沖縄で生まれた利益を県内へ循環させる

ことを重視している。

特に売上20億円以下の県内企業を政策の中心に置き、

公共事業などで県内企業が仕事を受けやすい制度を検討するとしている。

また、

低所得世帯向け1万戸の住宅供給

なども掲げる。

県内企業の育成や住宅価格高騰への対策として注目される一方、公共調達制度の公平性や競争性、公営住宅の役割との整合性など、制度面の検討も必要になる。


県庁改革 副知事3人、局長の半数を女性へ

行政組織についても大きく変える考えだ。

下地氏は、

副知事3人体制

を提案。

そのうち少なくとも1人を女性とする。

また、県庁の「部」を「局」に再編し、

局長の半数を女性にする

目標を掲げる。

さらに専門家を参与として登用し、政策立案や国・米国との交渉力を強化するとしている。


ワシントン事務所は廃止ではなく「交渉力強化」

玉城県政で大きな問題となった沖縄県ワシントン事務所。

下地氏は単純な廃止を主張しているわけではない。

むしろ、交渉能力の高い人材や通訳などを配置し、

米政府や米議会との交渉力を強化する

構想を示している。

玉城県政のワシントン事務所問題については批判する一方、米国で沖縄の立場を直接伝える機能そのものは必要と考えていることになる。


過去の問題 IRを巡る100万円受領

下地氏の政治経歴を検証する上で避けられないのが、2020年に明らかになった100万円の受領問題だ。

カジノを含む統合型リゾート事業を巡る汚職事件の捜査過程で、2017年の衆議院選挙期間中、下地氏の事務所職員が中国企業の元顧問側から、

現金100万円

を受け取っていたことが明らかになった。

下地氏自身が会見で受領の事実を認め、謝罪した。

当時の説明によれば、100万円は選挙資金として受け取られたものの、領収書は発行されず、収支報告にも記載されていなかった。


日本維新の会は下地氏を除名

問題を受け、当時所属していた日本維新の会は下地氏を除名処分とし、議員辞職を求めた。

下地氏はその後、収支報告書を修正するなどして説明責任を果たしたとの立場を示してきた。

ただ、政治家として公金や政治資金の透明性を求められる以上、

過去に不記載の現金を受け取っていた事実を有権者がどう評価するか

は、今回の知事選でも判断材料になり得る。


批判⑤「過去の政治資金問題をどう説明するのか」

この問題について重要なのは、センセーショナルな表現ではなく、確認されている事実を区別することだ。

確認されているのは、

中国企業元顧問側から下地氏の事務所が100万円を受け取っていたこと

下地氏自身が受領を認め謝罪したこと

収支報告書に記載されていなかったこと

日本維新の会から除名処分を受けたこと

だ。

知事は県の巨額予算と行政組織を管理する立場にある。

そのため、過去の政治資金を巡る問題について、現在どのように考え、再発防止や政治資金の透明性をどう確保するのか。

3度目の県知事選に挑む以上、改めて説明を求められるテーマだ。


「30年の実績」をどう評価するか

下地氏は長い政治経験を自身の強みとしている。

国会議員6期。

政務次官。

大臣政務官。

国務大臣。

中央政府との交渉経験は、他の新人候補と比較した場合の明確な特徴だ。

一方、長く政治に関わってきたということは、

過去の政策判断についても評価される

ということでもある。

今回の公式サイトでは過去の実績について、本人側が関与した政策を単純に「下地氏一人で実現した成果」と表現せず、共同した行政機関などを含めて検証する方針を示している。

候補者自身のサイトとしては特徴的な取り組みだが、最終的には第三者資料を含めて一つ一つ確認する必要がある。


批判⑥「ベテランなのに本当に第3極なのか」

下地氏は「第3極」「新しい政治」を掲げる。

しかし下地氏自身は、1996年に初当選して以来、約30年にわたって沖縄政治・国政に関わってきたベテラン政治家だ。

そのため、

「長年政治の中心にいた人物が、本当に既存政治を変える第3極と言えるのか」

という見方も出てくる。

一方で下地氏側からすれば、

自民党政権だけではなく民主党政権にも参加し、複数の政党や無所属で活動してきた経験こそ、保守・革新双方と交渉できる強みだということになる。

この「経験」を、

古い政治

と見るのか、

交渉力

と見るのか。

有権者によって評価は大きく分かれそうだ。


「第3極」は本当に支持を広げられるのか

2022年知事選で下地氏が獲得したのは5万3677票。

一定の支持は得たものの、当選には大きく届かなかった。

今回も玉城氏と古謝氏という大きな陣営が形成される中、

政党による大規模な組織支援に頼らず、どこまで票を伸ばせるか

が課題となる。

さらに今回は、これまで下地氏を支えてきた人物の一部が古謝氏支援へ回る動きも報じられている。

「第3極」を掲げるなら、従来の下地支持層だけでなく、

無党派層、

若者、

玉城・古謝両氏のいずれにも投票したくない有権者

へ浸透する必要がある。


玉城デニー氏との違い

辺野古について、

玉城氏は移設反対

下地氏は現在の計画を見直し、民軍共用空港へ転換

安全保障では両氏とも政府方針に異議を唱える部分があるが、下地氏は「反対運動」よりも国や米側へ具体案を提示して交渉する姿勢を強調する。


古謝玄太氏との違い

古謝氏は現在進む辺野古移設を容認し、中央政府との連携を重視する。

下地氏は政府との交渉を重視する点では共通するものの、

現在の辺野古計画をそのまま受け入れない。

また敵基地攻撃・反撃能力を持つミサイルの県内配備などにも反対する。

そのため基地・安全保障政策では、古謝氏とも明確な違いがある。


主要3氏は辺野古で三つの選択肢

主要3氏の違いを整理すると、

玉城デニー氏

現在の辺野古移設計画に反対

古謝玄太氏

現在の辺野古移設計画を容認

下地幹郎氏

現在の計画を見直し、民軍共用空港へ変更

となる。

2026年知事選では、辺野古問題について単純な「賛成・反対」だけではない選択肢が提示された形だ。


下地幹郎氏の強みは何か

下地氏を評価する側から見れば、最大の強みは、

圧倒的な政治経験

だろう。

国会議員6期。

国務大臣。

中央省庁との交渉。

複数政党との政治経験。

基地問題。

離島政策。

交通。

これまで国と直接交渉する立場を経験している。

沖縄県だけでは解決できない問題が多い中、

「東京や米国と交渉できる」

ことを自身の強みとしている。


一方で弱点も明確

しかし同時に、

  • 過去2回の知事選で落選
  • 2024年衆院選でも落選
  • 政界引退を表明した後の撤回
  • 出馬否定から約1カ月後の出馬表明
  • IRを巡る100万円受領問題
  • 政党・政治勢力を複数移ってきた経歴
  • 巨額政策の財源
  • 辺野古新構想の実現可能性

など、説明を求められる点も多い。

経験が豊富であるからこそ、

「過去ではなく新しい政治」と言うなら何が新しいのか

を具体的に示す必要がある。


週刊TAKAPIが見る「7つの検証ポイント」

下地幹郎氏を判断する上で、特に注目すべきポイントは7つある。

① なぜ政界引退を撤回したのか

一度有権者に引退を表明した以上、再挑戦する理由について十分な説明が必要となる。

② なぜ出馬を否定した直後に立候補したのか

選挙前の情報公開や政治家としての説明のあり方が問われる。

③ 辺野古の「民軍共用空港」は本当に実現できるのか

国・米国との合意、費用、環境、技術、工期など解決すべき問題は多い。

④ 約1398億円の重点政策の財源はどこから出すのか

教育、交通、電気料金、出産支援だけで巨額の予算が必要になる。

⑤ 鉄道を本当に完成させられるのか

着工・完成時期や採算性について、より詳細な説明が必要になる。

⑥ 過去の100万円受領問題をどう説明するのか

知事には行政と予算の透明性が強く求められる。

⑦ 「第3極」は単なるキャッチコピーではないのか

玉城・古謝両氏と違うことだけでなく、実際に県政を動かせる政治基盤をつくれるかが問われる。


下地幹郎氏をどう評価するか

下地幹郎氏ほど、

評価が分かれやすい候補者

も珍しい。

30年近い政治経験を、

「沖縄のために使える豊富な経験」

と見る人もいる。

一方、

「長く既存政治に関わってきた人物」

と見る人もいる。

大胆な政策を、

「今までにない発想」

と評価することもできる。

反対に、

「財源や国との交渉を考えれば実現性に疑問がある」

と見ることもできる。

まさに、強みと弱みが表裏一体の候補だ。


「反対でも容認でもない」政治は実現するのか

下地氏が今回訴えるメッセージは明確だ。

辺野古では、

反対だけではない。

しかし、

現在の政府案をそのまま受け入れるわけでもない。

経済や交通でも、

既存政策の延長ではなく大型構想を打ち出す。

それを「第3極」と呼んでいる。

しかし政治は、案を出すだけでは実現しない。

議会。

市町村。

中央政府。

米国政府。

県民。

民間企業。

さまざまな関係者との合意が必要だ。

下地氏が強調する「交渉力」が、実際に結果へつながるのか。

そこが今回の知事選で問われる。


2026年沖縄県知事選 3度目の挑戦

沖縄県知事選は、

8月27日告示9月13日投開票

の予定。

2026年8月18日時点では告示前のため、本記事では下地氏を「立候補予定者」「出馬を表明している」と表記している。

正式な候補者は告示日の立候補届け出によって確定する。

下地幹郎氏にとって今回は、3度目となる沖縄県知事選。

政界引退を撤回してまで挑む選挙で、

「第3極」

という選択肢が県民にどこまで受け入れられるのか。

そして、

豊富な政治経験と過去への評価を、有権者がどう判断するのか。

9月13日、県民の審判が下される。


編集部注

本記事は2026年8月18日時点で、候補者公式資料、沖縄県などの公的資料、過去の選挙結果、県内外の報道機関による公開情報を基に作成しています。

候補者側が掲げる「実績」については、下地氏個人だけで実現したものと断定せず、行政機関や関係者が共同して進めた事業と区別して評価しています。

政策に記載された事業費や完成時期について複数の数字が確認される場合は、その違いを明記しました。

また、IRを巡る100万円受領問題については、確認されている金銭授受、本人の説明、当時の党による処分を区別し、事件全体を下地氏個人の刑事責任として扱わないよう留意しています。

候補者への批判についても、批判そのものを事実認定とはせず、確認可能な事実と候補者側の説明を分けて記載しています。

選挙期間中に政策、立候補状況、支援関係などに変更が確認された場合は随時更新します。

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