【独自・新城市/後編】次期委託は5年・提案上限11億3910万円 市「安定的にこの方式でいける」

新城市が民間委託する放課後児童クラブと新城ハートフルスタッフについて約2年間の運用成果を週刊TAKAPIが独自取材した記事のアイキャッチ

愛知県新城市が2027年4月から実施する放課後児童クラブと「新城ハートフルスタッフ」の次期包括委託について、5年間の提案上限額が計11億3910万3600円に設定されていることが、市の公開資料と週刊TAKAPIの取材で分かった。

内訳は、放課後児童クラブが9億529万2000円、ハートフルスタッフが2億3381万1600円。11億3910万3600円は契約額や予定価格ではなく、2027年度から2031年度までの各年度に設定された提案上限額を合計した数字だ。

前編では、2024年10月の民間委託開始から約2年間の運用を検証し、人材募集の難しさが続く一方、欠員による事業縮小はなく、2事業間の人材融通や研修機会の増加といった変化を確認した。

後編では、なぜ次期契約を5年間とするのか、約11.39億円の上限額をどう設定したのか、直営時代とのコスト比較、事業者選定、現スタッフの雇用・処遇まで掘り下げる。

初回は2年半 「問題があれば直営へ戻す」判断も想定

新城市が包括委託を始めたのは2024年10月。現行契約は2027年3月31日までの2年半となっている。

市担当者は週刊TAKAPIの取材に、初めて導入する方式だったため、運用上の問題が生じた場合には直営へ戻す判断も想定していたと説明した。

その後、人材を2事業間で活用できるようになったことや研修機会の増加などがあり、民間委託へ変わったことを理由とする目立ったサービス悪化の声も把握していないという。

こうした運用状況を踏まえ、市は「安定的にこの方式でいける」と判断。第2期は2027年4月1日から2032年3月31日までの5年間とした。

11億3910万円は「契約額」ではない

次期委託では、年度ごとに提案上限額が設定されている。

放課後児童クラブは2027年度の1億6868万6000円から、2031年度には1億9342万8000円へ増加。ハートフルスタッフも4296万9300円から5055万8200円へ段階的に上がる。

5年間を合計した提案上限額は11億3910万3600円となる。

市担当者によると、金額の設定では民間事業者から得た積算などを参考にしたという。

ただし、市の実施要領では、これらの金額は契約時の予定価格ではなく、事業者が提案できる金額の上限として設定されている。

直営時代より安いのか 市「金額だけでは比較しにくい」

民間委託導入時、新城市は正規職員の効率的な配置や経費削減などを目的として掲げていた。

週刊TAKAPIは、直営時代と比べて実際に経費が削減されたのかを市に確認した。

市担当者は、委託料だけを取り出して「安くなった」と単純に比較することは難しいと説明する。

直営時代には、児童クラブとハートフルスタッフを合わせて100人を超える現場スタッフについて、本庁の正規職員が募集や雇用、労務管理などを担っていたという。

民間委託後はこうした事務の多くを直接担う必要がなくなり、担当する正規職員の労働時間は「相当減った」としている。

つまり、市が示す効果は委託料そのものの削減額だけではなく、正規職員が人材募集や労務管理に費やしていた時間を、別の行政業務へ振り向けられるようになった点にもある。

価格は300点中15点 「内容を見て選ぶ」

現在の受託事業者がそのまま第2期も継続することが決まっているわけではない。

次期事業者は公募型プロポーザルで選定する。

市の評価基準では総合300点のうち、見積価格の配点は15点。価格が占める割合は5%で、業務遂行力、事業内容、運営体制、安全対策、独自サービス、質疑応答などを含めて総合的に評価する。

市担当者も取材に対し、価格だけで事業者を決めるのではなく「内容を見て選ぶ」と説明した。

次期5年間を担う事業者の選定では、価格競争だけではなく、児童クラブと学校教育支援を安定して運営できる体制が大きな判断材料となる。

事業者変更時のスタッフ移行を想定 給与は市が直接決められず

次期契約では、現場で働くスタッフの雇用も重要な論点となる。

2024年に直営から民間委託へ切り替えた際、市はそれまで市で勤務していた職員が民間事業者へ移ることを踏まえ、月給や賞与などが市在籍時の水準を下回らないよう条件を設けていたという。

一方、第2期では状況が異なる。

市担当者は、次期選定で受託事業者が変わった場合、現在のスタッフが新たな事業者へ移ることを想定する認識を示した。

ただし、現在のスタッフがその後どのような昇給を受け、現在いくらで雇用されているのかまでは市側で把握していない。

実際の転籍や給与などの雇用条件は民間事業者間の調整となるため、賃金水準が上がるか下がるかを市が直接決められるものではないという。

市は、人件費を下げれば現在の雇用環境では人材確保が難しくなるとして、次期事業でも安定的なスタッフ確保を重視している。

「民間に譲渡したわけではない」 事業主体は新城市

市が取材の最後に強調したのが、民間委託そのものの位置付けだ。

担当者は児童クラブとハートフルスタッフについて、「すべて民間に委譲してしまっているわけではない。あくまで市の事業」と説明した。

民間事業者が実際の運営を担っていても、新城市が事業そのものを民間へ譲渡したわけではない。

受託事業者の運営について利用者や市民から意見がある場合は、市へ直接伝えることができるとしている。

編集部まとめ

次期委託は5年間、提案上限額は計11億3910万3600円に及ぶ。一方、価格の評価は300点中15点にとどまり、市は第1期の運用実績を踏まえ、価格だけでなく安定運営や事業内容を重視して第2期の受託者を選ぶ。

週刊TAKAPI編集部/成田

特記事項

本記事は、新城市企画部秘書人事課への週刊TAKAPIの直接取材と、市が2026年9月2日に公開した次期プロポーザルの実施要領、仕様書、評価基準などを照合して構成しています。11億3910万3600円は契約額や予定価格ではなく、5年間の提案上限額の合計です。

Q次期委託は総額11億3910万円で契約するのですか?
Aいいえ。11億3910万3600円は5年間の提案上限額の合計で、契約額や予定価格ではありません。
Qなぜ2年半から5年間へ延長するのですか?
A市は第1期の運用状況を踏まえ、「安定的にこの方式でいける」と判断したと説明しています。
Q民間委託によって市の経費は削減されたのですか?
A市は金額だけでの単純比較は難しいとしています。一方、正規職員が担っていた人材募集や労務管理に必要な時間は相当減ったと説明しています。
Q次期事業者は価格の安さで決まりますか?
A価格だけではありません。評価300点のうち価格は15点で、事業内容、運営体制、安全対策などを含めて選定されます。
Q民間委託後は市に意見を伝えられないのですか?
Aいいえ。市は「あくまで市の事業」と説明しており、受託事業者の運営に関する意見も市へ伝えることができます。

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