【独自】豊橋市民病院のカルテ不適切閲覧、8月6日に本人申告で発覚 全職員の閲覧目的確認に難しさ

豊橋市民病院の外観写真を背景に、看護師が興味本位で知人の電子カルテを閲覧し、手術情報を別の知人に伝えた問題を報じるアイキャッチ

愛知県豊橋市民病院の20代女性看護師が知人の電子カルテを不適切に閲覧し、手術情報を別の知人に伝えた問題で、病院が事案を把握したのは2026年8月6日だったことが分かった。看護師が別件の面談中に自ら申し出たことが発覚のきっかけで、病院はその後、電子カルテのアクセス記録を調べ、閲覧の事実を確認していた。

豊橋市人事課が週刊TAKAPIの取材に対し、明らかにした。

市は患者への連絡と謝罪を行い、当該看護師にほかの不適切な閲覧がなかったかも確認したという。一方、全職員の電子カルテ閲覧について、業務上の必要性を個別に判別することは難しいと説明。再発防止では、院長名の通知や情報セキュリティ研修、看護師長らを通じた指導を中心に取り組む方針を示した。

知人のSNS投稿からカルテを閲覧 約2カ月後に本人が申告

豊橋市が10月14日に公表した懲戒処分資料によると、看護師は6月初旬、知人のSNS投稿を見て、その人物が豊橋市民病院を受診したと推測した。

その後、業務上の必要がないにもかかわらず知人の電子カルテを閲覧し、手術を受けた事実や内容を別の知人に口頭で伝えていた。

市人事課によると、閲覧の動機は知人への興味本位で、情報を伝えた相手は1人だったという。

病院が事案を把握したのは約2カ月後の8月6日。看護師が別件の面談を受けていた際、自ら行為を申し出た。

患者からの苦情や第三者からの通報がきっかけではなく、アクセス記録の点検によって発見されたものでもなかった。

市は本人への聞き取りと電子カルテのアクセス履歴を確認し、問題となった閲覧の事実を裏付けたと説明した。具体的な閲覧回数については、担当者が把握しておらず、回答は得られなかった。

患者には発覚後2〜3日程度で謝罪 処分までは勤務継続

患者への対応について、市人事課は、8月6日の発覚後、2〜3日程度で患者側に連絡し、謝罪したと説明した。

患者本人からの苦情によって発覚した事案ではなかったが、病院側から連絡して対応を進めたという。ただし、電子カルテで閲覧された情報の範囲や、第三者へ伝えられた内容について、患者にどこまで説明したかは確認できていない。

また、看護師は事案の発覚後も勤務を続けていた。

市は本人への聞き取りやアクセス記録の確認、患者への対応を進めたうえで、審査会を開いて処分を決定したと説明した。

10月14日付で看護師を戒告処分とし、地方公務員法第33条の信用失墜行為の禁止に違反したと判断。同法第29条第1項第1号と第3号の懲戒事由に該当するとした。

看護局の50代女性参与と50代女性参事についても、管理監督上の責任として厳重注意とした。看護師に対する戒告は懲戒処分だが、管理監督職2人への厳重注意はこれとは異なる措置となる。

他の不適切閲覧は本人への聞き取りで確認 全職員の個別判別は困難

当該看護師が今回の知人以外のカルテも業務上必要なく閲覧していなかったかについて、人事課は、本人への聞き取りを行い、ほかにはなかったと確認したと説明した。

ただし、過去のアクセス履歴をどの期間まで調べたのか、ほかの患者のカルテについて担当業務との照合をどこまで行ったかは明らかになっていない。

市は他の職員にも同様の事案がないか確認したというが、対象人数や具体的な確認方法、アクセス記録との照合範囲については回答が得られなかった。

電子カルテは職員ごとの認証情報を使って利用し、閲覧履歴が残る仕組みとなっている。

一方、人事課は、全職員のアクセスについて、担当患者の情報だったのか、業務上の必要性があったのかを一件ずつ判別することは現実的に難しいとの認識を示した。

担当者は電子カルテのシステムの詳細までは把握していないとも説明しており、病院が通常どの程度の頻度でアクセス履歴を点検し、不適切な閲覧をどのように検知しているのか、具体的な運用方法は確認できなかった。

院長名で通知、看護師長会でも周知 再発防止は研修と指導が中心

再発防止策として、病院は院長名の通知を発出し、患者情報の適正な取り扱いを改めて周知した。

業務上必要のない電子カルテの閲覧を禁止することに加え、知人や友人、家族を含む第三者に患者の個人情報を伝えないことを再徹底したという。

看護師長会などでも今回の問題を取り上げ、各部署の指導的な立場にある看護師長らを通じて注意喚起を行っている。

看護職員全員を一度に集めることは難しく、会議などの機会を利用して繰り返し指導していると説明した。

人事課は、今回の処分公表も職員が情報管理の重要性を再認識する機会になるとの考えを示した。

厳重注意を受けた管理監督職2人については、今後、法令順守の徹底と職員への指導・監督に努める意向を示しているという。

一方、問題が発生する前の日常的な情報管理や監督の具体的な方法については、詳細な説明は得られなかった。

AIによるアクセス監視など、近い将来の導入計画はなし

今後の再発防止について、人事課は、情報セキュリティ研修や看護師長らによる日常的な指導に重点を置く考えを示した。

AIを活用したアクセス履歴の分析や監視体制について尋ねたところ、将来的な可能性は否定しなかったものの、近い将来に導入する具体的な計画はないと説明した。

豊橋市民病院が公表する個人情報保護方針では、個人情報を利用目的の範囲内で取り扱うことや、個人情報保護責任者の設置、全職員への継続的な教育などを定めている。

また、技術的動向を踏まえた不正アクセス防止策も掲げている。

今回のように、正規の認証情報を持つ職員が業務上必要のない電子カルテを閲覧した場合、どのように把握するのか。その具体的な点検・検知方法については、今回の取材では明らかにならなかった。

個人情報保護委員会への報告、担当課への確認が必要と回答

今回の問題では、電子カルテの不適切閲覧だけでなく、患者の手術情報が第三者に口頭で伝えられている。

個人情報保護委員会のガイドラインでは、診療情報は要配慮個人情報に該当し、これを含む個人データの漏えいなどについては、法令上の要件に該当した場合、委員会への報告が必要となる。

この点について人事課に報告状況や判断を尋ねたところ、担当者は個人情報保護を所管する部署への確認が必要だと説明した。

担当者は、今回の事案が法令上の漏えいに該当するかどうかについても、その場では判断を示さなかった。

そのため、委員会への報告の有無や、報告の必要性について市がどのように判断したかは確認できていない。

市「信頼回復には時間がかかる」 記者会見の予定なし

豊橋市民病院は、東三河地域の救急医療や高度医療を担う公立の基幹病院だ。

全国の医療機関で患者情報の不適切な取り扱いが問題となっていることについて、人事課は、患者情報は厳格に守るべきものであり、医師や看護師を含む病院関係者には高い情報管理意識が求められるとの認識を示した。

今年度に病院職員を巡る不祥事が続いたことについても、地域の中核病院として信頼回復に努める必要があると説明した。

担当者は、多くの医師や看護師が市民のために勤務している一方、一つの不祥事によって病院全体への信頼が損なわれることになるとし、その回復には長い時間がかかる可能性があるとの考えを示した。

今後も職員教育や法令順守の徹底を進め、再発防止に取り組むという。今回の問題について、記者会見を開く予定はないとしている。

電子カルテのアクセス履歴は残る仕組みになっていた。それでも今回の不適切閲覧が発覚したきっかけは、看護師本人の申し出だった。院長名の通知や研修に加え、日常的に閲覧記録をどう点検し、目的外利用の早期発見につなげるのか。患者情報を守るため、具体的な管理方法の説明が求められる。

編集部まとめ

週刊TAKAPIの独自取材で、豊橋市民病院の電子カルテ不適切閲覧は8月6日に看護師本人の申し出で発覚し、その後、アクセス記録で閲覧の事実が確認されていたことが分かった。

市は患者への連絡と謝罪を行い、本人への聞き取りで、ほかの目的外閲覧はなかったと確認したと説明した。再発防止では院長名の通知や研修、看護師長らを通じた指導を進めるとしている。

週刊TAKAPI 編集部/成田

特記事項

本記事は、豊橋市が2026年10月14日に公表した懲戒処分資料、豊橋市民病院の個人情報保護方針、週刊TAKAPIによる豊橋市人事課への独自取材に基づく。

発覚日、本人申告の経緯、患者への対応、アクセス記録による確認、ほかの目的外閲覧に関する調査、処分までの勤務状況、管理監督責任、再発防止策、関係機関への報告状況、記者会見の予定について取材結果を反映した。

他の目的外閲覧の有無は、市が本人への聞き取りで確認したと説明するものであり、全患者・全職員のアクセス履歴を網羅的に調査したと認定したものではない。

Q豊橋市民病院のカルテ不適切閲覧は、いつ発覚しましたか?
A2026年8月6日です。看護師が別件の面談中に自ら申し出たことで発覚しました。電子カルテのアクセス記録は、その後の調査で確認されました。
Q患者への説明や謝罪は行われましたか?
A市人事課は、発覚後2〜3日程度で患者側に連絡し、謝罪したと説明しています。ただし、閲覧された情報や第三者への伝達内容をどこまで説明したかは確認できていません。
Qほかの患者のカルテも不適切に閲覧されていなかったのですか?
A市は当該看護師への聞き取りで、ほかの目的外閲覧はなかったと確認したと説明しています。ただし、アクセス履歴の調査対象期間や照合範囲については、具体的な回答を得られていません。
Q病院はどのような再発防止策を取っていますか?
A院長名の通知、看護師長会での周知、情報セキュリティ研修、管理職による指導を中心に進めています。AIを活用した新たな監視体制について、近い将来の具体的な導入計画はないと説明しています。
Q個人情報保護委員会への報告は行われましたか?
A今回の取材では確認できていません。市人事課の担当者は、個人情報保護を所管する部署への確認が必要と説明し、報告の要否や実施状況について、その場では回答できませんでした。

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