SNSで「報酬を支払う」と持ちかけか 本物の受験生が現れ発覚、警視庁が指示役の有無を捜査
日本大学の入学試験で他人になりすまして受験しようとしたとして、警視庁世田谷署は5月21日までに、中国籍の塾講師、李彬容疑者(39)を建造物侵入と有印私文書偽造の疑いで再逮捕した。
入試会場に持ち込まれたのは、偽の受験票だけではなかった。李容疑者は袖口に小型カメラを仕込んでいたとみられ、警視庁は、外部に試験問題を送信し、解答を得る目的があった可能性を調べている。
単なる替え玉受験ではなく、外部の人物が関与した組織的な入試不正だった疑いが浮上している。
李容疑者は今年3月4日、東京都世田谷区の日本大学の試験会場に、10代の中国籍男性になりすまして入った疑いが持たれている。さらに、解答用紙の氏名欄に本人ではない受験生の名前を記入した疑いもある。
警視庁によると、李容疑者はSNSで知り合った人物から「大学入試を受けてくれたら報酬を支払う」と持ちかけられたという趣旨の説明をしている。
李容疑者は、偽の受験票や小型カメラなどを受け取ったうえで、試験会場に入ったとみられる。
事件が発覚したのは、試験開始直前だった。
李容疑者が席に着いた後、成り済まされていた本来の受験生が会場に現れた。会場内に同じ受験生として扱われる人物が重なったことで、不正が発覚したとみられる。
本来の受験生は、李容疑者に替え玉受験を依頼していないと説明しているという。
警視庁は、李容疑者の関係先を家宅捜索し、小型カメラや小型イヤホンなど複数の電子機器を押収した。試験中に問題を外部へ伝え、外部から解答を受け取る仕組みが準備されていた可能性がある。
李容疑者は取り調べに対し、容疑を認めているという。
今回の事件で注目されるのは、替え玉受験と電子機器を使ったカンニングが組み合わさっていた疑いがある点だ。
従来の替え玉受験は、本人以外の人物が受験会場に入り、解答用紙に名前を書いて受験する手口だった。しかし、今回押収された小型カメラやイヤホンの存在は、試験問題を外部へ送信し、別の人物から解答を得る計画があった可能性を示している。
つまり、会場内の替え玉役、外部で問題を受け取る人物、解答を作る人物、報酬を支払う人物が分かれていた疑いがある。
警視庁は、李容疑者に接触した人物、報酬の流れ、偽の受験票や小型カメラを用意した人物の特定を進めている。
日本大学は入試の不正行為について、本人以外の氏名を解答用紙に記入すること、カンニング行為、電子機器類の使用などを不正行為として明記している。不正行為があった場合、受験の中止や退室、成績無効、状況によっては警察への被害届提出などの対応を取るとしている。
今回の事案は、大学入試の公平性を揺るがす事件といえる。
入試は、受験生本人の学力や努力を判定する制度である。替え玉受験や外部通信を使ったカンニングが行われれば、他の受験生の機会を奪うだけでなく、大学側の試験運営にも大きな負担を与える。
さらに、SNS上で「報酬」を条件に受験代行を持ちかける流れがあったとすれば、入試不正が個人の思いつきではなく、金銭目的の仲介行為として広がる危険がある。
今回の事件は、大学側の本人確認や持ち物確認の難しさも浮き彫りにした。
小型カメラやイヤホンは年々小型化しており、衣服や身体に隠して持ち込まれると、試験監督だけで完全に見抜くことは難しい。本人確認書類、受験票、顔写真、席順、入室時の確認、試験中の動作確認をどこまで強化できるかが、今後の課題になる。
ただし、過度な監視を強めれば、正当に受験する多くの受験生に負担がかかる。入試の公平性を守りながら、受験生のプライバシーや試験環境をどう保つか。大学側には難しい判断が求められる。
警視庁は、李容疑者単独の犯行ではなく、外部の指示役や協力者がいた可能性も視野に入れている。
今後の焦点は、誰が李容疑者に替え玉受験を持ちかけたのか、偽の受験票や電子機器を誰が準備したのか、報酬は実際に約束されていたのか、他の大学入試でも同様の行為がなかったのかという点だ。
大学入試を狙った不正は、受験生本人だけの問題では終わらない。SNSで人を集め、電子機器を使い、外部とつながる手口が確認されれば、入試制度そのものを守るための対策が急務となる。
警視庁は、押収した機器の解析や通信履歴の確認を進め、組織的な替え玉・カンニング行為の実態解明を進める方針だ。

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