起訴内容は約600万円 会社口座を1人で管理していた経理担当者に何があったのか
大阪市西区の産業機器メーカーで経理を担当していた元社員の女が、勤務先の会社口座から現金を不正に引き出したとして、業務上横領の疑いで大阪府警西署に逮捕された。大阪地検は、北沢真貴被告(51)を業務上横領の罪で起訴している。
起訴内容は、2021年に勤務先だった会社の口座から現金約600万円を横領したとされるもの。大阪府警はさらに、2020年から2021年にかけて、会社口座から現金が繰り返し引き出された疑いについて捜査を進めてきた。
府警は、2年間で75回にわたり、総額約5000万円が不正に引き出された疑いがあるとして裏付けを進め、5月20日に関連する容疑を最終送致した。
北沢被告は、会社の経理業務を担当し、会社口座を1人で管理する立場にあったとみられる。社長から預かっていたキャッシュカードを使い、ATMなどで現金を引き出していた疑いがある。
捜査関係者によると、北沢被告は調べに対し、容疑を認めているという。引き出された現金は、特定のアイドルグループのコンサートチケット購入、ライブ遠征費、グッズ購入など、いわゆる「推し活」に使われていたとみられている。
今回の事件で注意すべき点は、「約5000万円で起訴された」という話ではないことだ。現時点で起訴されているのは、2021年の約600万円分とされる。一方で、大阪府警は75回分、総額約5000万円に上る疑いについて捜査し、最終送致した。
報道で「約5000万円か」と大きく伝えられる一方、刑事手続き上は、起訴された金額と、警察が捜査した総額を分けて読む必要がある。
ただ、会社側から見れば、問題は金額だけではない。会社口座を1人の経理担当者が管理し、キャッシュカードも預かっていたとされる点が大きい。
会社の金を扱う業務では、現金出金、通帳管理、キャッシュカード管理、振込、領収書確認を1人に集中させないことが基本になる。担当者を信頼することと、会社として確認することは別の話だ。
少額の出金でも、確認されないまま回数が重なれば、被害は大きくなる。今回も、75回にわたって現金が引き出された疑いがある。1回ごとの出金が見過ごされれば、数百万円、数千万円単位まで膨らむおそれがある。
推し活は、アイドル、俳優、アニメ、配信者などを応援する趣味として広く定着している。コンサート、遠征、グッズ購入、ファンクラブ、配信イベントなど、支出の場面も多い。自分の収入の範囲で楽しむ限り、日々の励みになる人もいる。
しかし、勤務先の資金に手を付ければ、趣味では済まない。チケット代であっても、遠征費であっても、グッズ購入費であっても、会社口座から不正に現金を引き出せば、業務上横領の疑いが生じる。
北沢被告は、会社の資金を扱う立場にありながら、私的な支出のために会社口座を利用した疑いが持たれている。大阪府警は、現金の流れや使途について確認を進めている。
この事件は、「推し活に金を使いすぎた人の事件」だけでは終わらない。会社口座を1人で扱える状態が続いていたこと、出金を複数人で確認する仕組みが十分ではなかった可能性があることが、企業側にも重い課題として残る。
中小企業では、経理担当者が長年同じ業務を任され、社長や役員が「この人なら大丈夫」と判断することがある。だが、会社の資金を守るためには、信頼だけでは足りない。通帳と帳簿の照合、キャッシュカードの保管ルール、出金時の承認記録、月次の残高確認を複数人で行う必要がある。
今回の事件で示されたのは、推し活という言葉の軽さと、会社資金約5000万円という疑いの重さの差だ。好きな相手を応援する支出であっても、会社の金を使えば刑事事件になる。企業にとっては、経理担当者を疑うためではなく、会社と担当者の双方を守るための確認体制が求められる。
編集部まとめ
大阪市西区の産業機器メーカーで経理を担当していた北沢真貴被告(51)が、勤務先の会社口座から現金を不正に引き出したとして、業務上横領の疑いで逮捕され、大阪地検に起訴された。
起訴内容は、2021年に会社口座から現金約600万円を横領したとされるもの。一方、大阪府警は2020年から2021年にかけて75回にわたり、総額約5000万円が不正に引き出された疑いがあるとして、5月20日に関連容疑を最終送致した。
現金は、アイドルグループのコンサートチケット、ライブ遠征、グッズ購入など、推し活に使われていたとみられている。事件は、推し活の問題にとどまらず、会社口座を1人で管理していた経理体制の危うさも示している。

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