文科省最新調査でいじめ認知件数が過去最多 令和6年度は76万9022件に

週刊TAKAPI編集部
担当記者:黒木哲也

文部科学省がまとめた「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」の概要で、令和6年度のいじめ認知件数が過去最多となったことが示された。

文科省が公表した最新の令和6年度調査

調査は、児童生徒の問題行動や不登校などについて全国の状況を調査・分析し、教育現場における生徒指導上の取組の充実や、問題行動の未然防止、早期発見・早期対応、不登校児童生徒への支援につなげることを目的としている。

対象期間は令和6年度間。調査項目には、暴力行為、いじめ、出席停止、小中学校の長期欠席、高等学校の長期欠席、高等学校中途退学、自殺、教育相談などが含まれている。

いじめ認知件数は76万9022件、4年連続で増加

調査結果によると、小・中・高等学校および特別支援学校におけるいじめの認知件数は76万9022件だった。前年度の73万2568件から3万6454件増加し、増加率は5.0%。過去最多となった。

児童生徒1000人当たりの認知件数は61.3件で、前年度の57.9件から増加した。

いじめの認知件数は、令和2年度に一度減少したものの、その後は4年連続で増加している。

文科省は増加の背景として、いじめ防止対策推進法におけるいじめの定義や、いじめを積極的に認知する姿勢への理解が広がったことを挙げている。

また、一人一台端末を活用した心の健康観察の導入、アンケートや教育相談の充実、児童生徒に対する見取りの精緻化、SNSなどネット上のいじめの積極的な認知が進んだことなども要因として示されている。

「増えた」だけではなく「見えるようになった」側面も

いじめ認知件数の増加は、単純に「学校でいじめが増えた」とだけ見るべきではない。

文科省の資料では、いじめの定義への理解や積極的な認知が進んだことが背景として挙げられている。つまり、これまで見逃されていた、または表面化しにくかった事案が、学校や教育委員会の把握に乗るようになった側面もある。

特にSNS上のいじめや、子ども同士の閉じた関係性の中で起きるトラブルは、教員の目だけでは把握しにくい。アンケート、教育相談、一人一台端末を使った心の健康観察など、複数の仕組みで子どもの変化を拾うことが重要になっている。

一方で、認知件数が増えたからといって、支援が十分に届いているとは限らない。早期に把握した後、学校がどう対応し、被害を訴えた児童生徒をどう守るのかが問われる。

年度末時点の解消率は76.1%、前年度から低下

年度末時点で解消していたいじめは58万5349件だった。前年度の56万7710件から件数としては増えているが、解消率は76.1%で、前年度の77.5%からやや低下した。

資料では、初期段階でいじめを認知し、早期対応を行ったことや、学校いじめ対策組織などによる組織的な対応の結果、一定数のいじめが解消できていると説明されている。

一方で、SNS上のいじめなど、見えづらく解消の確認が難しい事案があること、1月以降に発生したため解消の定義である「3か月」を経過していない事案が増えたこと、安易に解消とせず丁寧に取り組む傾向があることなども示されている。

いじめ対応では、件数を減らすことだけではなく、解消の判断を慎重に行うことも重要になる。形式的に「解消」とするのではなく、被害を受けた児童生徒が安心して学校生活を送れているかどうかを確認する必要がある。

いじめ重大事態は1404件、過去最多に

いじめの重大事態の発生件数は1404件だった。前年度の1306件から98件増加し、こちらも過去最多となった。

増加率は7.5%で、前年度の42.1%からは低下している。

文科省は、いじめ防止対策推進法の理解が進んだことや、いじめの重大事態の調査に関するガイドラインの改訂によって、重大事態の積極的な認定が進んだこと、保護者の意向を尊重した対応がなされるようになったことなどを背景として挙げている。

重大事態とは、いじめにより児童生徒の生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いがある場合や、いじめにより相当期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合などに認定されるものだ。

重大事態の増加は、深刻ないじめが表面化していることを示すと同時に、これまで重大事態として扱われにくかった事案が、制度上きちんと認定されるようになってきた可能性もある。

重大事態の34.9%は、把握前にいじめとして認知されず

今回の調査で特に重く受け止めるべき点は、重大事態のうち490件、割合にして34.9%が、重大事態として把握される前にはいじめとして認知されていなかったことだ。

前年度も490件、37.5%が同様の状況だった。

これは、深刻化するまで学校側がいじめとして把握できていなかった事案が一定数あることを示している。

文科省の資料でも、学校としていじめの兆候を見逃してしまうなどの早期発見・早期対応への課題や、個々の教員が一人で抱え込んでしまうなどの組織的対応への課題があったことが考えられるとしている。

いじめ問題で繰り返し問われてきたのは、初動対応の遅れ、情報共有の不足、被害を訴えた子どもや保護者への説明不足、学校組織としての対応の弱さである。

重大事態になる前に、どれだけ早くサインを拾い、学校全体で対応できるかが、今後の大きな課題となる。

認知件数の増加を「悪い数字」とだけ見ない

いじめ認知件数が過去最多となったことは、学校現場にとって重い数字である。

ただし、認知件数の増加そのものを単純に否定的に見るのではなく、学校が小さなトラブルや初期段階のいじめを把握しやすくなった結果として捉える必要もある。

むしろ問題は、認知した後の対応だ。

被害を訴えた子どもが守られているか。加害側とされる児童生徒への指導や支援が適切に行われているか。保護者への説明は十分か。学校いじめ対策組織が形だけでなく実際に機能しているか。

認知件数の増加は、学校現場がいじめを見つける入口に立ったことを示している。そこから先、解決と再発防止につなげられるかどうかが問われている。

SNSいじめと「見えないいじめ」への対応が課題に

今回の資料では、SNSなどネット上のいじめの積極的な認知が進んだことも、認知件数増加の背景として挙げられている。

SNSやメッセージアプリ上のいじめは、学校内で目に見える形で起きるとは限らない。投稿、拡散、グループ外し、匿名の書き込み、画像や動画の共有など、子ども同士のオンライン空間で進行することがある。

こうしたいじめは、被害を受けた子どもが相談しなければ、学校や保護者が気づきにくい。

一人一台端末を活用した心の健康観察や、定期的なアンケート、教育相談の充実は、見えにくいいじめを早期に把握するための手段となる。

ただし、端末やアンケートを導入するだけでは十分ではない。子どもが安心して相談できる関係性、相談後に不利益を受けない仕組み、学校側が迅速に動く体制が必要だ。

学校だけで抱え込まない体制づくりを

いじめ重大事態の中には、個々の教員が一人で抱え込んでしまい、組織的対応が十分に機能しなかった可能性がある事案も示されている。

いじめ対応は、担任だけで抱える問題ではない。管理職、学年団、生徒指導担当、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、教育委員会、必要に応じて外部専門家が連携する必要がある。

特に重大事態が疑われる場合には、学校内部だけで判断せず、法令やガイドラインに沿って迅速に対応することが求められる。

保護者の意向を尊重した対応が進んでいることは重要だが、その一方で、学校が保護者対応を恐れて問題を先送りすることがあってはならない。

子どもの安全を最優先にし、事実確認、支援、説明、再発防止を同時に進める体制が求められる。

問われるのは「早く見つけた後」の支援

今回の文科省調査では、いじめ認知件数と重大事態のいずれも過去最多となった。

これは、学校現場がいじめをより積極的に認知するようになった一方で、深刻化する前に対応しきれていない事案がなお存在することを示している。

重要なのは、認知件数の多さを学校の失点として扱うことではない。いじめを早く見つけ、早く支援につなげることができているかどうかである。

学校が「いじめはなかった」とするのではなく、小さなサインを見逃さず、被害を訴えた児童生徒を守り、組織として対応する。その姿勢こそが、今後のいじめ対策で最も問われる。

文科省の調査結果は、学校現場に対し、いじめの積極的な認知だけでなく、その後の支援と解消確認の質を高める必要性を突きつけている。

※本記事は、文部科学省が公表した「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」の概要資料・データをもとに構成しています。調査対象期間は令和6年度間であり、今後、追加資料や関係機関の発表により内容が更新される可能性があります。続報や詳細資料が公表され次第、追記・更新します。

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この記事のポイントQ&A

Q. 令和6年度のいじめ認知件数は何件ですか?
A. 小・中・高等学校および特別支援学校におけるいじめ認知件数は76万9022件です。前年度から3万6454件増加し、過去最多となりました。

Q. いじめ認知件数はなぜ増加したのですか?
A. 文科省は、いじめの定義や積極的な認知への理解が広がったこと、一人一台端末を活用した心の健康観察、アンケートや教育相談の充実、SNS上のいじめの積極的な認知などを背景として挙げています。

Q. いじめの解消率はどうなっていますか?
A. 年度末時点で解消していたいじめは58万5349件で、解消率は76.1%でした。前年度の77.5%からやや低下しています。

Q. いじめ重大事態は何件でしたか?
A. いじめ重大事態の発生件数は1404件で、前年度から98件増加し、過去最多となりました。

Q. 重大事態のうち、事前にいじめとして認知されていなかった件数は?
A. 重大事態のうち490件、34.9%は、重大事態として把握される前にはいじめとして認知されていませんでした。

Q. 今回の調査で見えた学校現場の課題は何ですか?
A. いじめの早期発見・早期対応、SNS上のいじめへの対応、教員が一人で抱え込まない組織的対応、被害児童生徒への継続的な支援が課題として見えています。

Q. いじめ認知件数が多いことは悪いことですか?
A. 必ずしもそうとは限りません。小さな段階でいじめを認知できている可能性もあります。重要なのは、認知した後に適切な支援と再発防止につなげられるかどうかです。

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