豊橋の中2女子生徒、柔軟剤などの「香害」で教室に入れず 市は給食エプロン共用を廃止

豊橋市役所の外観を背景に、「香害で教室に入れず」「豊橋市は給食エプロン共用を廃止」と大きく表示した、豊橋の教育問題を伝える報道アイキャッチ

愛知県豊橋市に住む中学2年生の女子生徒が、柔軟剤や制汗スプレーなどの香りで体調を崩し、教室に入れない状態が続いている。

CBCテレビの報道によると、あおいさん(仮名・14歳)は化学物質過敏症と診断され、現在は部活動や屋外で行われる体育などを除き、自宅からオンラインで授業を受けている。

学校そのものを嫌がっているわけではない。通いたいという気持ちはありながら、教室内に残る香りによって学校生活が制限されている。

改修工事のにおいを境に頭痛が始まった

症状が表れ始めたのは、小学3年生のころだった。

学校の改修工事で石油系の強いにおいを感じた後、激しい頭痛を訴えるようになり、その後は柔軟剤や芳香剤など、身の回りにある複数のにおいに反応するようになったという。

学校では、衣服に残った柔軟剤の香りだけでなく、生徒が使用する制汗スプレーや香料入りのハンドクリームでも気分が悪くなることがある。

外出時にはマスクを着け、体調を崩さないよう周囲の環境を確認しながら生活している。

「香害」と化学物質過敏症は同じ意味ではない

柔軟剤、洗剤、芳香剤、香水などの香りによって頭痛や吐き気などの体調不良を訴える問題は、一般に「香害」と呼ばれている。

ただし、「香害」は社会問題を示す通称であり、医学的な診断名ではない。

環境省の調査研究では、いわゆる化学物質過敏症について、少量の化学物質への接触で複数の症状が表れる例がある一方、原因物質と症状との客観的な因果関係や病態には未解明な点が残るとされている。症状の背景に別の疾患が併存する可能性もあり、慎重な診断が必要になる。

医学的な仕組みに未解明な部分があることと、学校生活に支障を訴える子どもが存在することは、分けて考える必要がある。

9都道県の調査で8.3%が体調不良を経験

日本臨床環境医学会と室内環境学会の研究者らによる調査では、9都道県に住む中学生以下の子ども約1万人について保護者に尋ねた結果、856人、全体の8.3%が人工的な香りによる体調不良を経験したと回答した。

頭痛や吐き気などを訴える例があり、体調不良を経験した場所としては、園や学校を挙げた回答が多かったとされる。

この割合を全国の子どもの人口へ当てはめた場合、約70万人に相当するとの推計も示されている。ただし、これは調査結果を人口へ換算した推計であり、全国の患者数を直接集計した数字ではない。

豊橋市は2023年度から給食エプロン共用を廃止

学校生活で問題となったものの一つが、給食当番が着用するエプロンや三角巾だった。

共用のエプロンを家庭へ持ち帰って洗濯する方式では、家庭ごとに異なる洗剤や柔軟剤の香りが衣類へ残ることがある。次に使用する児童生徒が、その香りで体調を崩すケースが指摘されていた。

豊橋市は2023年度から、特別支援学校を除く市立小中学校で給食エプロンの共用を廃止し、児童生徒が各自でエプロンと三角巾を持参する方式へ変更した。

個人持ちへの変更には、香りへの配慮だけでなく、自分の体格に合ったエプロンを使えることや、衛生面での利点もある。

豊橋市議会でも学校の化学物質対策が論点に

香りや化学物質による体調不良への対応は、給食エプロンだけで完結する問題ではない。

2026年6月の豊橋市議会定例会では、学校施設の改修工事に伴う配慮に加え、香害に関する学校、保護者、児童生徒への周知や、化学物質に由来する体調不良の実態把握が質問項目として挙げられた。

教室では、柔軟剤、制汗スプレー、香水、ハンドクリーム、消臭剤など、複数の香り付き製品が同時に使用される可能性がある。

症状を訴える児童生徒だけを別室やオンライン学習へ移す対応では、本人が学校生活へ参加する機会を失いかねない。学校側には、本人や保護者と相談しながら、使用場所、換気、座席、授業参加方法などを個別に調整する視点が求められる。

香りの使用禁止ではなく、量と場所への配慮を

消費者庁は、柔軟仕上げ剤、衣類用洗剤、衣類用消臭剤、香水などの香りによって、頭痛や吐き気などの体調不良を訴える人がいるとして、香り付き製品を使用する際は周囲へ配慮するよう呼びかけている。

学校や家庭で考えられる対応には、製品の使用量を守ること、香りを重ねすぎないこと、人が集まる教室や更衣室でスプレーを使用しないこと、必要に応じて無香料の製品を選ぶことなどがある。

すべての香り付き製品を一律に排除するのではなく、香りによって体調を崩す人がいることを知り、避けられる接触を減らすことが現実的な対応となる。

編集部まとめ

豊橋市が給食エプロンの共用を廃止したのは、学校内からすべての香りを排除するためではなく、共用品を介した香りへの接触を減らす取り組みだ。

化学物質過敏症には医学的に未解明な点が残る一方、香りによって教室へ入れず、学習や友人との時間を失っている子どもがいる。症状を訴える本人だけを教室から離すのではなく、学校、家庭、地域が使用する製品と使い方を見直せるかが問われている。

週刊TAKAPI編集部/松本

特記事項:本記事はCBCテレビの報道、消費者庁と環境省の公表資料、豊橋市議会資料、子どもの香りによる体調不良に関する調査報告を基に再構成しています。「香害」は一般的な呼称であり、医学的な診断名ではありません。化学物質過敏症の症状や原因、反応の程度には個人差があり、病態には未解明な点があります。

Q「香害」とは何ですか?
A柔軟剤、洗剤、芳香剤、香水、制汗スプレーなどの香りによって、頭痛や吐き気などの体調不良を訴える問題を示す一般的な呼称です。医学的な診断名ではありません。
Q豊橋市の女子生徒は現在どのように学んでいますか?
ACBCテレビの報道によると、部活動や屋外での体育などを除いて教室に入れず、自宅からオンラインで授業を受けています。
Q豊橋市は給食エプロンをどのように変更しましたか?
A2023年度から、特別支援学校を除く市立小中学校で共用を廃止し、児童生徒が各自のエプロンと三角巾を持参する方式へ変更しました。
Q子どもの8.3%が香害を経験したという数字は何ですか?
A9都道県の中学生以下約1万人について保護者へ尋ねた調査で、856人が人工的な香りによる体調不良を経験したと回答した割合です。全国の患者数を直接集計した数字ではありません。
Q学校や家庭でできる配慮はありますか?
A香り付き製品の使用量を守る、複数の香りを重ねない、人が集まる場所でスプレーを使用しない、必要に応じて無香料製品を選ぶなどの対応が考えられます。
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