愛知県蒲郡市で、市立学校の体育館への空調整備が進んでいる。
週刊TAKAPIが2026年9月2日、蒲郡市教育委員会教育政策課とゼロカーボンシティ推進室に独自取材したところ、現在は中学校6校、小学校10校、義務教育学校1校の計17校で体育館空調が整備されていることが分かった。
このうち中学校6校と小学校10校の計16校は、体育館空調だけを単独で整備したものではない。太陽光発電、蓄電池、V2X、LED照明などと組み合わせた事業として導入されている。
体育館空調にはLPガスを活用。市側は、停電時でも自立運転できる点を採用理由の一つに挙げ、児童生徒の熱中症対策に加え、災害時の避難所利用も想定している。
ゼロカーボンシティ推進室は週刊TAKAPIの取材に、太陽光発電や蓄電池、空調などを含む関連事業全体について約49.7億円と説明した。一方、体育館空調だけの事業費については、設備を一体的に導入しているため切り分けることは難しいとしている。
中学校6校、小学校10校、義務教育学校1校の計17校
教育政策課によると、現在、体育館空調が整備されているのは中学校6校、小学校10校、義務教育学校1校の計17校。
ただし、現時点で「市内すべての学校で整備完了」とするのは正確ではない。
蒲郡市では学校再編や施設建設が並行して進んでいる。
蒲郡西部小学校と蒲郡北部小学校は2027年4月に統合し、「たちばな小学校」として開校する予定。新しい学校施設が完成するまでは現在の北部小学校の校舎を利用する計画で、北部小学校の体育館にはすでに空調が整備されている。
塩津小学校でも複合施設の建設が進められている。
教育政策課は取材に、こうした学校再編や施設整備を経て、2027年4月には市内の小中学校、義務教育学校について体育館空調の「整備が整う」見通しを示した。
市側の説明を踏まえ、本記事では現時点で「全校整備率100%」とはせず、2027年4月に整備環境が整う見通しとしている。
16校は「体育館エアコンだけ」の事業ではない
今回の取材で明確になったのが、中学校6校と小学校10校の計16校について、体育館空調が単独事業として整備されたわけではないことだ。
市はゼロカーボン関連事業の中で、学校などに太陽光発電設備や蓄電池を導入している。
学校では体育館空調に加え、
太陽光発電設備、蓄電池、V2X、体育館の高天井LED照明などを組み合わせて整備した。
太陽光で発電した電力を蓄電池にため、災害時には避難所機能の維持に使う。V2Xでは電気自動車への充電だけでなく、EV側から建物へ電力を供給する運用も想定されている。
教育政策課は、16校の体育館空調についてゼロカーボンシティ推進部門が進める避難所機能向上の事業で整備したと説明した。
このため「17校にエアコンを設置した」というだけでは、蒲郡市の事業全体を捉えきれない。
なぜLPガスなのか 停電時の利用を想定
週刊TAKAPIは教育政策課に、体育館空調でLPガスを採用した理由についても聞いた。
市側が挙げたのは、災害時の運用だ。
担当者によると、自立運転が可能な空調機器を採用しており、通常の電力供給が途絶えた場合でもLPガスを燃料として空調を稼働できる。
体育館は平時には授業や部活動に使われる一方、災害発生時には避難所となる。
市側は取材に、夏場の児童生徒の熱中症対策に加え、「電気が通らなくなっても使える」ことがLPガスを採用した理由の一つだと説明した。
学校施設の日常利用と災害時の避難所利用の双方を想定した設備となっている。
関連事業全体は約49.7億円 空調単独の金額は出せず
今回の取材で確認した事業費については、数字の意味を分ける必要がある。
ゼロカーボンシティ推進室は週刊TAKAPIに、太陽光発電、蓄電池、V2X、LED照明、体育館空調などを含む関連事業全体について、約49.7億円と説明した。
ただし、これは17校の体育館空調だけに49.7億円を投じたという意味ではない。
担当者は、複数設備をまとめて国の補助制度を活用して事業を実施しているため、「空調だけでいくらというのが出ない」と説明した。
中学校6校と小学校10校の16校についてはリース方式が採用されている。
義務教育学校1校についても、新築施設の建設事業の中に体育館空調が組み込まれていることから、空調部分だけの費用を抜き出すことは難しいという。
そのため、約49.7億円は体育館空調単独の整備費ではなく、市担当者が今回の取材で示した関連事業全体の金額となる。
2026年度は5億1841万4千円 約5億円が設備賃借料
市の2026年度当初予算では、ゼロカーボンシティ推進事業費として5億1841万4千円が計上されている。
このうち公共施設太陽光発電設備等賃借料は5億27万7千円となっている。
数字を整理すると、
約49.7億円は今回、市担当者が関連事業全体について示した金額。
5億1841万4千円は2026年度当初予算のゼロカーボンシティ推進事業費。
5億27万7千円は、その中の公共施設太陽光発電設備等賃借料となる。
対象期間や対象経費が異なるため、これらを単純に比較することはできない。
また、今回の取材では国の補助金と市の負担についても確認したが、体育館空調だけに対応する国費、市負担額を切り分けた数字までは確認できなかった。
年間の電気代・ガス代はまだ不明
設備導入後のランニングコストについても確認した。
教育政策課によると、小学校では2026年度が本格運用の1年目になる。
このため、年間の電気代やLPガス代などが実際にどの程度になるのかについては、まだ1年間の実績が出ていない。
ゼロカーボンシティ推進室も、実際の費用はリース料のほか、太陽光発電では賄えない購入電力やガス料金などで構成されると説明している。
年間の維持費については、2026年度の運用実績を確認した後に数字が見えてくることになる。
部活動だけでなく夏休みの児童クラブでも利用
空調設備はすでに学校現場で使われている。
教育政策課によると、中学校では夏場の部活動などで体育館空調を利用している。
小学校では、夏休み中の放課後児童クラブでも活用した。
猛暑で運動場に出て活動することが難しい日には、空調のある体育館を使って子どもたちが活動しているという。
担当者は、体育館空調について「熱中症対策にはなっている」と説明した。
今回の取材では、設備を設置したという事実だけではなく、猛暑時の学校生活や児童クラブで実際に利用されている状況も確認できた。
東三河では豊橋も39校まで整備 5月調査から状況変化
蒲郡市の現在地を見るため、東三河の状況も確認する必要がある。
文部科学省の2026年5月1日時点の調査では、蒲郡市の公立小中学校等の体育館・武道場は30棟中16棟に空調が設置され、設置率は53.3%だった。避難所指定施設では20棟中16棟で80.0%となっていた。
同じ5月調査では豊橋市、豊川市、新城市は0%だった。
ただし、その後、豊橋市では整備が急速に進み、9月1日時点で小学校22校、中学校17校の計39校で整備を終え、試験運用に入っている。
このため、文部科学省の5月時点の数字をそのまま現在の東三河の整備状況として扱うことはできない。
今回の蒲郡市への取材では、すでに17校で利用が始まり、2027年4月には学校再編や施設整備を含め、体育館空調の整備環境が整う見通しが示された。
編集部まとめ
蒲郡市では現在、中学校6校、小学校10校、義務教育学校1校の計17校で体育館空調が整備されている。
このうち16校では、体育館空調と太陽光発電、蓄電池、V2X、LED照明などを一体的に導入。LPガスを活用することで、児童生徒の熱中症対策に加え、停電を伴う災害時の避難所利用にも備えている。
関連事業全体について、ゼロカーボンシティ推進室は週刊TAKAPIの取材に約49.7億円と説明した。一方、体育館空調だけの事業費や、空調部分だけに対応する国費、市負担額は切り分けられていない。
また、小学校は2026年度が本格運用初年度で、年間の電気代やLPガス代などもまだ確定していない。
蒲郡市では、体育館空調の「整備数」を追う段階から、今後は年間維持費、学校での利用実績、災害時の運用実効性を検証する段階に入る。
週刊TAKAPI 編集部/成田
特記事項
本記事は2026年9月2日、蒲郡市教育委員会教育政策課とゼロカーボンシティ推進室への独自取材と公開資料を基に構成した。約49.7億円は体育館空調単独の費用ではなく、太陽光発電、蓄電池、V2X、LED照明、空調などを含む関連事業全体について市担当者が取材で示した金額。年間ランニングコストや体育館空調部分だけの国費・市負担額は現時点で確定していない。
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