岩手県の教職員不祥事を追っていると、2026年は「また1件起きた」で片付けられる段階をすでに超えている。
9月14日、県立学校に勤務する20代の女性教職員が、18歳未満の人に複数回わいせつな行為をしたとして懲戒免職となった。管理監督責任を問われた校長も戒告となり、岩手県教育委員会によると、2026年度の学校職員の懲戒処分はこれで11人となった。年度開始からまだ半年に届かない時点での数字だ。
しかし、今年の岩手を象徴する事案を1つ挙げるなら、別にある。
県立宮古水産高校の36歳男性職員を巡る動物愛護法違反事件だ。
7月、ハムスター25匹を殺したとして逮捕され、その後起訴。さらに8月31日には、別の女性と共謀してハムスター約30匹を殺した疑いで再逮捕された。捜査段階の事案を含むため刑事責任は確定していないが、県教委自身が、動物愛護法違反で職員が逮捕されたケースについて「経験がないと思う」と説明するほど異例だった。
問題は、この異例の事件が起きた時期にある。
県教委は、不祥事防止策を抜本的に見直し、「これから変わる」と県民に示そうとしている、その最中だった。
9月14日、また懲戒免職 年度累計は11人に
最新の処分は9月14日。
県教委によると、県立学校の20代女性教職員は2026年4月から5月にかけ、18歳未満の人に対して校外で複数回、身体的接触を伴うわいせつな行為をした。
被害者関係者からの情報提供で発覚し、教職員本人も県教委の聞き取りに行為を認めたという。
県教委は女性教職員を懲戒免職とし、所属校の50代女性校長も管理監督責任を理由に戒告とした。
これにより、2026年度の学校職員の懲戒処分は11人となった。
数字だけなら「11」。
しかし、岩手の問題を11という数字だけで捉えると、本質を見誤る。
処分された時期と、問題行為が起きた時期は必ずしも一致しない。過年度に発生した事案が2026年度になって発覚し、処分されたケースもある。
だから見るべきなのは、「半年で11件も起きた」という単純な読み方ではない。
何が起き、いつ発覚し、どの段階で県教委が把握し、再発防止策を講じた後にも重大事案が続いているのか。その時系列である。
今年最も異例の不祥事 ハムスター25匹で起訴、さらに約30匹で再逮捕
その時系列の中で、異例さが際立つのが宮古水産高校職員の事件だ。
7月10日、県立宮古水産高校に勤務する36歳の男性職員が、19歳の女性と共謀し、2月中旬ごろ、滝沢市内の宿泊施設でハムスターを殺したとして動物愛護法違反の疑いで逮捕された。
その後の報道では、対象は25匹とされ、虐待の様子を動画で撮影していたとされる。男性職員はこの事件で起訴された。
それだけでは終わらなかった。
8月31日、男性職員は再び動物愛護法違反の疑いで逮捕された。
今度は別の20歳女性と共謀し、3月下旬ごろ、同じく滝沢市内の宿泊施設でハムスター約30匹を殺した疑いだった。警察は2人の認否を明らかにしていない。捜査では、男性職員のスマートフォンから虐待の様子を撮影した動画が確認されたと報じられている。
最初の事件で25匹、再逮捕された別事件で約30匹。
同じ県立高校職員について、2つの事件で計55匹前後のハムスターが対象となった疑いが浮上したことになる。
県教育長は7月の会見で、動物愛護法違反による職員の逮捕について、これまで「経験がないと思う」と説明した。性暴力や飲酒運転など、県教委が重点的に想定してきた不祥事とは性質が異なる事案だった。
岩手県教委が抱える問題が、特定の不祥事類型だけでは説明できなくなっていることを象徴する事件でもある。
その4日後、今度は不同意わいせつ容疑
さらに重いのは、7月10日の逮捕からわずか4日後だった。
7月14日、県立盛岡第四高校に勤務する48歳の男性職員が、5月下旬ごろ、県央部の教育施設で女性にわいせつな行為をした疑いで逮捕された。
県教委は翌15日の会見で、宮古水産高校職員と盛岡第四高校職員の逮捕を続けて報告した。いずれも当時は捜査中で、刑事責任は確定していない。
問題は、この7月15日が何の日だったのかだ。
県教委はこの日、不祥事防止対策検討会議の結果をまとめ、新たな防止策を公表する予定だった。
教育長自身が、不祥事根絶へ向けた姿勢を示そうとしていた「矢先」に職員が相次いで逮捕されたと説明している。
対策を発表した後に問題が起きた、というだけではない。
対策をまとめ、県民に示そうとした、その直前に重大事案が2件続いた。
ここに2026年の岩手県教委が置かれた状況の深刻さがある。
教育長自身が「異常事態」と表現
県教委は7月、これまでの不祥事防止策について厳しい自己検証を行った。
教育長は、従来の取組が服務規律の周知や注意喚起にとどまり、職場環境や心理的要因の分析が十分でなかったこと、「なぜ起きるのか」より「起こさないよう気をつける」ことが中心となり、職員の意識や行動の変化につながらなかったと説明した。
そして、重大事案が続発している状況について、教育長は会見で「まさに異常事態」との認識を示した。
県教委は犯罪社会学の知見などを取り入れた研修用動画、管理職の面談力向上、性暴力や飲酒運転防止研修の強化など、新たな対策を導入している。公式サイトでも7月に不祥事防止策を取りまとめ、その後、学校現場を含む組織全体で研修動画を使った研修を実施しているとしている。
しかし評価すべきなのは、対策メニューの数ではない。
対策後に重大事案が減ったのか。
ここしかない。
そもそも前年度から「6件逮捕、飲酒4件」
岩手の問題は2026年度になって突然始まったわけではない。
県教育長は4月15日の会見で、前年度について、盗撮や不同意わいせつなどによる逮捕事案が6件、飲酒事案が4件発生したと説明している。
3月27日の段階でも、逮捕事案6件、飲酒運転事案3件が発生し、体罰やセクシュアルハラスメントによる懲戒処分も続いているとして、教育への信頼を根底から揺るがす状況だと説明していた。
前年度に重大事案が続いた。
県教委が対策を強化した。
それでも2026年度に入り、酒気帯び運転、動物愛護法違反事件、不同意わいせつ容疑、さらに18歳未満へのわいせつ行為による懲戒免職が続いた。
単発事案の羅列ではなく、この連続性こそ検証すべき部分だ。
本誌が9月に確認した「注意喚起だけでは十分ではなかった」
週刊TAKAPIは9月4日、岩手県教委への質問に対する文書回答を基に、不祥事防止策の実効性を検証した。
県教委は、従来の対策について服務規律の周知や注意喚起にとどまる面があり、十分ではなかったとの認識を示した。
一方、当時すでに2026年度の懲戒処分が9人に達していたものの、それぞれの「問題行為発生時期」「県教委が把握した時期」「処分決定時期」を横断して比較できる一覧は示されなかった。
その10日後、新たに20代女性教職員の懲戒免職が公表され、管理監督責任による校長の戒告も加わった。
9人だった数字は11人になった。
「対策をした」という行政側の説明と、「実際に減ったのか」という結果は分けて確認する必要がある。
ただし「岩手県庁全体」の問題とは別だ
一方で、岩手県全体を「公務員不祥事が多い県」とひとまとめにするのは正確ではない。
県人事課が公表した2026年度第1四半期、4月1日から6月30日までの一般職員について、地方公務員法に基づく懲戒処分は0人だった。県の公式資料にも「該当がありません」と明記されている。
つまり、現在際立って見えるのは県庁一般職ではなく、教育委員会が所管する教職員・学校職員の問題だ。
ここを混同すると、岩手県全体の評価を誤る。
「また岩手か」という言葉を検証するなら、正確には「また岩手県教委か」という焦点で見なければならない。
11人という数字より重いもの
年度途中で11人という懲戒処分数は目を引く。
だが、より重いのは、数字が増え続けた過程だ。
前年度に逮捕6件、飲酒4件。
県教委が不祥事防止策の見直しに着手。
その最中に酒気帯び運転。
7月にはハムスター25匹を巡る動物愛護法違反事件で逮捕。
4日後には別の職員が不同意わいせつ容疑で逮捕。
不祥事対策を発表。
その後、宮古水産高校職員は別のハムスター約30匹を巡る事件で再逮捕。
そして9月、18歳未満へのわいせつ行為で新たな懲戒免職。
一連の経過を見ると、焦点はもはや「岩手は全国何位か」ではない。
県教委が自ら認めた「異常事態」を、実際に終わらせることができるのか。
そこが次の検証点になる。
編集部まとめ
2026年度、岩手県の学校職員の懲戒処分は9月14日時点で11人となった。
その中で今年最も異例なのは、宮古水産高校職員がハムスター25匹を殺した事件で起訴され、さらに別の約30匹を殺した疑いで再逮捕された事案だ。県教育長自身、動物愛護法違反による逮捕は経験がないとの認識を示している。
ただ、本当に問われるべきなのは事件の異例さではない。
前年度から重大事案が続き、県教委が従来の対策の限界まで認め、新たな再発防止策を始めた後に、処分や逮捕がどう変化するのか。
週刊TAKAPIは、処分件数だけではなく、発生時期、把握時期、処分時期、再発防止策実施後の推移まで引き続き確認する。
「また岩手か」という言葉が消えるのは、対策を発表した時ではない。
重大事案が実際に減った時だ。
週刊TAKAPI 編集部
特記事項
本稿は2026年9月21日時点で確認できる岩手県、岩手県教育委員会の公式公表資料及び報道を基に構成した。
「2026年度の懲戒処分11人」は、9月14日時点で県教育委員会が公表している学校職員の処分人数。問題行為そのものの発生時期が2026年度とは限らないため、「2026年度に11件の不祥事が新たに発生した」という意味ではない。
宮古水産高校職員について、ハムスター25匹を巡る事件では起訴されているが、有罪判決は確定していない。約30匹を巡る再逮捕事件についても捜査段階であり、認否は公表されていない。刑事責任については推定無罪の原則が適用される。
県人事課が公表した2026年度第1四半期の懲戒処分0人は、同資料の対象となる県一般職員についての数字であり、教育委員会所管の学校職員を含む岩手県内すべての地方公務員を意味しない。

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