「立ち入り禁止」と「撮影機会提供」を両立
豊橋鉄道の対応を見ると、鉄道撮影への考え方は単純な禁止ではない。
通常時には軌道敷や私有地への無断侵入を禁止する。
一方、鉄道会社が管理できる環境では、線路や車庫を利用した公式撮影会を実施する。
これは、
自由な撮影をすべて認める
でも、
鉄道撮影を全面的に禁止する
でもない。
鉄道会社が安全を管理できる範囲を明確に区切った上で、撮影需要に対応する方法だ。
フォトコンテストも無断侵入作品は失格
豊橋鉄道は、写真コンテストでも撮影方法にルールを設けている。
列車の運行を妨げる行為や私有地への無断侵入を避けるよう求めているほか、鉄道事業者が立ち入りを禁止している場所、土地所有者や管理者の許可を得ていない場所から撮影された作品については、失格とする規定を設けている。
つまり、
写真そのものの出来栄えだけでなく、どこから、どのように撮影したか
まで審査対象としていることになる。
鉄道撮影における安全や権利関係を、作品の評価から切り離していない。
愛知では名鉄乗務員室への侵入が2026年に発覚
愛知県内では、一般の沿線撮影とは性質が異なるものの、鉄道施設への不適切な立ち入りと動画撮影を巡る事案も明らかになっている。
名古屋鉄道は2026年5月、業務時間外の従業員らが列車の乗務員室へ侵入するなどの不適切な行為をしていたとして謝罪した。
重要なのは時系列だ。
問題となった行為自体は2021年夏ごろに行われたもので、2026年に動画が注目されたことをきっかけとして事案が明らかになった。
2026年に新たに乗務員室へ侵入した事件ではない。
動画では、通常の利用客が入ることのできない乗務員室内で設備を操作する様子などが確認され、名鉄が事実関係を調べた。
名鉄では別に10代少年の乗務員室侵入も
名鉄では、この件とは別に10代少年が乗務員室へ侵入した事案もあった。
少年は2022年夏、愛知県内を走行する特急列車の乗務員室へ入り、鉄道ファンに知られる設備を操作したとされる。
この事案では少年が鉄道営業法違反の疑いで書類送検され、その後不起訴となったと報じられている。
2021年夏の従業員らの行為と、少年の事案は別件だ。
いずれも一般的な鉄道写真の撮影とは異なるが、通常立ち入ることのできない鉄道施設へ入って撮影・記録する行為が、施設管理や法的責任の問題へ発展した事例として位置付けられる。
岐阜では撮影目的の鉄道敷地侵入で5人を書類送検
東海地方では、より直接的に列車撮影を目的とした立ち入りが刑事手続きに発展した事例もある。
岐阜県内では2016年、貨物列車を撮影するために柵を越えて鉄道敷地内へ入ったとして、5人が書類送検されるなどした事案が確認されている。
鉄道撮影では、限定列車や貨物列車などを狙い、複数の撮影者が同じ場所へ集まる場合がある。
しかし、撮影対象が珍しいことは、立ち入り禁止区域へ入る理由にはならない。
撮影場所の選択そのものが刑事手続きにつながる場合があることを示した事例だ。