【新潟】高校柔道部の「指導死」で54歳教諭を懲戒免職 3日間の厳しい叱責、学校の危機対応にも不備

新潟県庁の外観を背景に、新潟工業高校柔道部の男子生徒の自死をめぐり、54歳教諭が懲戒免職となった問題を伝える報道画像

新潟県教育委員会は10月23日、県立新潟工業高校の柔道部に所属していた男子生徒が2024年6月に自死した問題で、当時監督を務めていた小田和輝教諭(54)を懲戒免職処分とした。小田教諭は処分時、県立新発田農業高校に勤務していた。

県教委は、生徒への不適切な部活動指導が自死に至る要因となったと判断。当時の校長、副校長、教頭についても、監督による不適切な指導を把握しながら十分な是正措置を取らなかったとして、管理監督責任を認めた。

この問題では今年4月、第三者委員会が監督による権威的で過度な指導を自死の主たる要因とする「指導死」と判断していた。男子生徒が亡くなってから約2年4カ月。今回の処分によって、監督本人に加え、指導を止められなかった学校側の責任も改めて明確になった。

大会後の叱責が続いた3日間 柔道ノートの書き直しも要求

第三者委員会の調査報告書によると、当時高校3年生だった男子生徒は2024年6月2日、県総合体育大会の柔道競技に出場した。試合には敗れ、監督は自身の指示に従わなかったことや、試合後に礼を述べなかったことなどを問題視し、大きな声で厳しく叱責した。

翌3日には、大会会場から帰宅する際に監督へ挨拶をしなかったとして、学校内で再び叱責された。4日も格技場や体育館、教員室など複数の場所で指導が続き、監督は大会後に提出された柔道ノートの内容が不十分だとして書き直しを命じていた。

しかし、第三者委員会がノートを確認したところ、記載内容に問題は認められなかった。

4日の練習中、男子生徒はそれまでに見られなかった消極的な態度を示し、練習後には着替えながら泣いていたという。生徒はその日、自分のロッカーを片付けて私物を持ち帰り、翌5日には登校が確認できなくなった。

同日午後8時ごろに発見され、その後、死亡が確認された。遺書は見つかっていない。

監督の機嫌を「試練」と呼ぶ部員たち 指導は事実上1人に集中

第三者委員会が問題視したのは、自死直前の叱責だけではなかった。柔道部では監督の機嫌によって練習の厳しさが変わることがあり、部員たちは監督が突然怒り出す状況を「試練」と呼んでいた。

部員同士で監督の様子を伝え合い、機嫌を損ねないよう振る舞うことが日常的になっていたという。

一方、監督には技術指導や生活指導に熱心な側面があり、一部の生徒や保護者から高く評価されていたことも調査で明らかになっている。しかし、第三者委員会は、こうした評価があったとしても、過度な叱責や精神的負担を伴う指導が正当化されるものではないと判断した。

柔道部には監督のほかに3人の副顧問が配置されていたが、日常的な指導や部員の状況把握は事実上、監督1人が担っていた。副顧問は部員と定期的に接する機会が乏しく、個々の生徒の状況を監督と共有する体制も整っていなかった。

学校側が指導の実態を把握し、必要に応じて介入できる仕組みが十分に機能していなかったことが、調査報告書から浮かび上がる。

午前8時に部員が異変を報告 管理職が把握したのは約5時間後

男子生徒が行方不明になった6月5日、学校の対応にも問題があった。

同日午前7時45分の朝掃除に男子生徒が姿を見せなかったため、部員たちは電話やSNSで連絡を試みた。しかし、応答はなく、前日までの厳しい叱責やロッカーを片付けていた様子から、何らかの異変が起きているのではないかと不安を強めた。

午前8時ごろ、部員が監督に男子生徒が来ていないことを報告したが、監督は部員同士で連絡を取るよう指示。その後、部員たちは担任や進路指導担当の教員にも前日の様子を伝え、強い不安を訴えていた。

担任は午前8時50分すぎに保護者へ連絡を試みたものの、授業中などの事情も重なり、実際に連絡が取れたのは午後0時10分だった。教頭が男子生徒の不在について詳しい状況を把握したのは午後0時50分で、出張中の校長への報告は午後1時26分となった。

部員が最初に異変を伝えてから、教頭が状況を把握するまで約4時間50分を要していた。

第三者委員会は、生徒たちが強い危機感を抱いていたにもかかわらず、学校側が情報を迅速に集約できず、組織的な対応につなげられなかったことを問題視している。

当時の校長は戒告相当 副校長と教頭も文書訓戒

県教委は今回、小田教諭への懲戒免職とともに、当時の学校管理職3人についても管理監督責任を認定した。

当時の校長で現在は中越地方の高校に勤務する60代の男性臨時的任用職員は戒告相当、当時副校長だった現在50代の男性校長と、当時教頭だった現在50代の男性教頭は、それぞれ文書訓戒となった。

県教委は、監督による不適切な指導を把握していたにもかかわらず、是正に必要な管理監督を十分に行っていなかったと説明している。

さらに教育長についても、教育委員会事務局を統括し、職員を指揮監督する立場として責任を重く受け止め、給料月額の10分の1を1カ月減額する相当額の措置を示した。

これらの措置は、小田教諭に科された懲戒免職とは法的な位置づけが異なるものの、県教委が監督個人だけでなく、学校管理職や教育行政の責任にも対応したことになる。

第三者委は学校の責任も指摘 部活動運営の見直しへ

第三者委員会は、男子生徒の自死に至る経緯を調べる中で、監督による権威的な指導が短期間に強い心理的負荷を与えたと分析した。

ただし、遺書など本人の考えを直接示す資料は確認されておらず、報告書は自死の原因や個人の責任を最終的に特定することを目的としたものではないと明記している。

そのうえで、指導者に権限が集中する閉鎖的な部活動の運営、ほかの教員による監督機能の不足、スクールカウンセラーなど外部専門職との連携が不十分だったことを指摘した。

県教委は今年5月、県立学校の校長らを対象とする臨時研修会を開き、部活動に所属する生徒だけでなく、退部した生徒や保護者も対象とした実態調査を進める方針を示している。

今回の懲戒免職によって当時の監督への処分は決まったが、第三者委員会が指摘した組織的な問題の改善状況は、今回の処分資料だけでは確認できない。

今後は複数顧問による指導体制が実際に機能しているか、教職員が不適切な指導を把握した際に管理職へ速やかに報告できるかなど、具体的な再発防止策の実施状況が重要になる。

編集部まとめ

新潟県教委は、高校柔道部員の自死につながった不適切な指導を理由に、当時の監督を懲戒免職とし、学校管理職3人にも責任を認めた。

第三者委員会の調査では、監督への権限集中に加え、部員が異変を訴えた後の学校内の情報共有にも遅れがあったことが明らかになっている。

県教委が進める再発防止策については、研修や調査の実施だけでなく、学校現場で指導の異常を把握し、生徒を守る仕組みとして機能しているかが重要となる。

特記事項

本記事は、新潟県教育委員会の2026年10月23日付懲戒処分発表、および新潟県いじめ防止対策等に関する委員会が同年4月27日に決定した第5号案件調査報告書に基づき構成した。

Q懲戒免職となった教諭は誰ですか?
A県立新発田農業高校に勤務していた小田和輝教諭(54)です。事案発生当時は県立新潟工業高校柔道部の監督を務めていました。
Q男子生徒はいつ亡くなったのですか?
A2024年6月5日に登校が確認できなくなり、同日午後8時ごろに発見され、その後死亡が確認されました。
Q第三者委員会はどのように判断しましたか?
A監督による権威的で過度な指導が自死の主たる要因となったと分析し、いわゆる「指導死」の経緯をたどったと判断しました。
Q当時の学校管理職にも責任が認められましたか?
Aはい。当時の校長は戒告相当、副校長と教頭は文書訓戒となりました。また、教育長にも給料月額の10分の1を1カ月減額する相当額の措置が示されています。
Q県教委はどのような再発防止策を進めていますか?
A県立学校の校長らを対象とする研修や、部活動に関する実態調査などを進める方針です。具体的な改善状況については、今後の確認が必要です。

週刊TAKAPI 編集部/一条

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