【愛知・奥三河】救急出動2,422件、市民病院への照会は約6割 病院収容まで平均62.8分、広域搬送の課題を検証

新城市消防署作手出張所の消防車と救急車。2024年度の救急出動2,422件、新城市民病院への受入照会1,449件、病院収容まで平均62.8分の実態を検証する報道画像

愛知県奥三河の救急医療で、地域の中核病院が受け入れる患者と、専門的な治療を担うほかの医療機関へ搬送される患者の役割分担が重要になっている。新城市民病院が2026年3月に策定した新病院建設基本構想によると、2024年度の新城市消防署管内の救急出動2,422件に対し、同病院への受入照会は1,449件だった。実際に受け入れたのは1,243件で、出動件数全体の約51.3%に相当する。

一方、総務省消防庁が公表した2024年の統計では、新城市消防本部の119番入電から病院収容までの平均所要時間は62.8分。愛知県全体の34.0分に対し、約29分長かった。ただし、こちらは消防本部全体を対象とする暦年統計で、病院が示す消防署管内の年度集計とは対象範囲が異なる。

山間部を抱え、専門的な治療を東三河南部の医療機関にも依存する奥三河で、救急患者はどのような判断に基づいて搬送されているのか。週刊TAKAPIは新城市民病院の基本構想、経営強化プラン評価資料、愛知県の合同会議資料、消防庁の統計を照合した。

救急出動の約6割が市民病院へ照会 受入実績は1,243件

新城市民病院の基本構想では、2024年度の新城市消防署管内の救急出動件数を2,422件としている。このうち約59.8%に当たる1,449件について同病院へ受入照会があり、1,243件が受け入れられた。

照会件数に対する受入割合は約85.8%。照会件数と受入件数の差は206件となる。

ただし、これを206人の患者が病院から受け入れを拒否されたと表現することは適切ではない。患者の状態や診療科の対応状況などによって搬送先は選定されるため、受け入れに至らなかった個別の理由を確認する必要がある。

同様に、救急出動2,422件と市民病院への照会1,449件との差である973件についても、すべてが東三河南部へ搬送されたとは判断できない。救急出動には医療機関への搬送に至らない事例も含まれるためだ。

救急搬送の実態を明らかにするには、救急隊がどの病院を選定し、実際にどこへ患者を運んだのか、搬送先別の統計が必要になる。

病院側は約4割を他院へ搬送と説明 背景に医師不足

新城市民病院は2024年8月8日の東三河医療圏合同会議で、地域の救急医療について説明している。

病院側は当時、新城圏内の救急搬送の約4割について、救急隊の判断で新城市民病院以外の医療機関へ搬送していると報告した。残る約6割が同病院に照会され、そのうち約9割を受け入れているという説明だった。

病院は、医師や看護師の不足によって受入能力に限界があることも明らかにしている。当直医の専門分野や経験によって対応できる症例が異なり、心疾患や頭蓋内疾患などは同病院で処置することが難しい場合が多いという。

この説明は2024年8月時点のものであり、現在の搬送割合が同じであるとは断定できない。

一方、2026年3月に策定された基本構想でも、高度な治療を必要とする脳血管疾患や心疾患の患者について、東三河南部の医療機関との連携が必要であると位置付けている。専門的な治療を行う病院との役割分担は、現在の医療体制でも重要な課題となっている。

2023年度には261件を他院へ搬送 疾患ごとに異なる対応

愛知県の合同会議資料によると、2023年度に新城市民病院から他院へ搬送された事例は261件だった。

内訳を見ると、頭蓋内疾患が55件、整形外科疾患や交通外傷が47件、病床満床によるものが30件、心筋梗塞や狭心症が18件などとなっている。

ただし、これは新城市民病院から別の病院へ搬送された実績だ。救急隊が現場から新城市民病院を経由せず直接ほかの医療機関へ搬送した件数とは異なる。

同病院で対応できない専門的な治療が必要な場合には、初期診療の後に転院することもあれば、救急隊が最初から専門医療機関を選ぶこともある。どちらが適切かは患者の病状や緊急性、病院の受入状況によって変わる。

地域内の病院に患者を多く受け入れることだけが、救急医療の目的ではない。病状に応じて、適切な治療へ迅速につなぐことが求められる。

病院収容まで平均62.8分 県全体の34.0分と差

奥三河の救急医療を考えるうえで、搬送に必要な時間も重要な指標となる。

消防庁の2024年統計では、新城市消防本部の119番入電から現場到着までの平均は15.5分、病院収容までの平均は62.8分だった。愛知県全体では、それぞれ8.1分、34.0分となっている。

消防庁が示す病院収容所要時間は、119番通報を受けてから傷病者を医師へ引き継ぐまでの時間であり、救急車が現場から走行した時間だけを意味するものではない。

また、新城市消防本部全体の2024年の出動件数は2,925件で、先に示した新城市消防署管内の2024年度2,422件とは集計範囲も期間も異なる。

山間地域では、出動場所や医療機関までの距離が所要時間に影響する可能性がある。しかし、62.8分という数字だけでは、実際の走行時間、搬送先の選定、医療機関との連絡調整などに、それぞれ何分を要したのかまでは分からない。

県全体との時間差が、患者の治療結果にどのような影響を与えているかについても、今回の統計からは判断できない。疾患別の搬送時間や搬送先、受入調整の実態を確認することが必要だ。

市民病院の受入率51.32% 目標62%には届かず

新城市民病院の2024年度経営強化プラン取組状況報告書では、救急車受入率の目標を62.0%としていたが、実績は51.32%だった。

一方、受入照会があった事例に限った割合は85.78%で、目標の95.0%には届かなかった。

病院は今後の対策として、医師の業務分担を見直すタスクシフト・タスクシェアを進め、診療体制を充実させる方針を示している。また、医療従事者間で病床の空き状況を迅速に共有し、受け入れが難しくなる事例を減らす考えだ。

ただし、受入率の改善を評価する際には、どの患者を対象にしているのかを確認しなければならない。

高度な専門治療が必要な患者を最初から対応可能な病院へ搬送した場合、新城市民病院の出動件数に対する受入割合は上がらない。しかし、それだけで患者にとって不適切な搬送だったとはいえない。

病院の診療機能を維持することと、適切な搬送先を選定することは、互いに関連しながらも異なる課題である。

救急統計の過年度数値に不一致 同じ条件での確認が必要

今回の資料照合では、公表統計の過年度数値にも確認すべき点が見つかった。

新城市民病院が2026年3月に策定した基本構想では、新城市消防署管内の2023年度救急出動件数を2,450件、2024年度を2,422件としている。

一方、2024年度の経営強化プラン取組状況報告書には、救急出動件数が2,226件から2,422件へ増加したとの説明がある。

資料上の前年比較に用いられた2,226件と、基本構想に示された2023年度の2,450件は一致していない。

集計範囲や数値の訂正によるものなのか、記載上の誤りなのかは、現時点で確認できていない。そのため、本記事では2024年度の実績を中心に扱い、過年度の増減については判断を保留した。

救急医療の受入能力を正確に評価するためには、公表される統計の対象範囲や算出方法が明確であることも欠かせない。

南部へ搬送した後、患者は地元へ戻れるのか

奥三河の救急医療は、新城市民病院だけで完結するものではない。高度な専門治療を東三河南部の病院が担う一方、治療後の回復期医療や在宅療養を北部で支えることも重要になる。

新城市民病院の基本構想でも、急性期から回復期、在宅医療までをつなぐ体制の充実が示されている。

特に高齢の患者では、専門的な治療を終えた後もリハビリテーションや継続的な医療が必要となる場合がある。南部の病院から北部へ転院し、家族や地域の支援を受けながら療養できるかどうかは、患者の生活にも関わる。

しかし、今回確認した資料では、南部の医療機関から新城市民病院へ戻った患者数や転院までの所要期間、受入調整の状況を同じ条件で把握することはできなかった。

新病院の整備を考える際にも、建物や病床数だけでなく、救急搬送から治療後の療養までを地域全体でどう支えるかという視点が欠かせない。

編集部まとめ

新城市民病院の2024年度の受入実績では、新城市消防署管内の救急出動2,422件に対し、病院への照会は1,449件、受入は1,243件だった。

一方、消防庁の2024年統計では、新城市消防本部の病院収容までの平均所要時間が62.8分となり、愛知県全体の34.0分を上回っている。両者は対象範囲と期間の異なる数字であり、直接結び付けて搬送先や所要時間を判断することはできない。

公表資料には過年度の出動件数に不一致もあり、統計の整合性について確認が必要となった。

奥三河の救急医療では、地域内で対応できる患者を確実に受け入れながら、専門的な治療が必要な患者を南部へ迅速につなぐ体制が重要になる。今後は搬送先別・疾患別の実績を確認し、地域の医療連携が実際にどう機能しているのかを検証する必要がある。

特記事項

本記事は新城市民病院の2026年3月策定「新病院建設基本構想」、2024年度経営強化プラン取組状況報告書、愛知県の2024年8月8日開催「東三河医療圏合同会議」資料、総務省消防庁の2024年救急業務統計を照合して構成した。

新城市消防署管内の2024年度実績と、新城市消防本部全体の2024年暦年統計は対象が異なる。過年度の救急出動件数に見られる資料間の相違について、病院側への追加回答は得ていない。

Q新城市民病院は救急車を年間何件受け入れていますか?
A2024年度の院内統計では1,243件でした。同年度の新城市消防署管内の救急出動は2,422件で、同病院への受入照会は1,449件です。
Q救急出動の約4割が南部へ搬送されているのですか?
A病院は2024年8月の会議で、約4割を同病院以外へ搬送していると説明しました。ただし、すべてが南部への搬送とは確認されておらず、現在の割合も未確認です。
Q病院収容まで平均62.8分という数字は何を意味しますか?
A消防庁の2024年統計における新城市消防本部全体の数値で、119番入電から医師への引き継ぎまでの平均所要時間です。救急車の走行時間だけを示すものではありません。
Q新城市民病院の受入率51.32%は、約半数の患者を断ったという意味ですか?
Aいいえ。51.32%は救急出動件数に対する同病院の受入割合です。実際に同病院へ照会された事例に限ると、受入割合は85.78%でした。
Q救急医療の今後の課題は何ですか?
A疾患別・搬送先別の受入実績、搬送時間の内訳、新城市民病院と南部の病院との役割分担、治療後に地元へ戻る転院体制などの検証が必要です。

週刊TAKAPI 編集部/成田

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