政府の災害対応を担う司令塔「防災庁」が2026年11月2日に発足した。初代防災大臣に就任した細野豪志氏は同日、全国民に対する「事前防災徹底のための緊急要請」を正式に発出し、最低3日間、できれば1週間分の水や食料の備蓄、住宅の耐震化、避難経路の確認などを求めた。
緊急要請は国民だけでなく、都道府県や中央省庁にも出された。政府は年末に防災対策の進捗状況を確認し、必要に応じて再要請や勧告権の行使、予算執行への反映を行う方針だ。
国民に5項目の対策を要請 水は1人1日3リットル
防災庁が公表した要請文では、南海トラフ地震や首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺の地震、富士山噴火など、国難級の災害への備えが必要だとしている。
大規模災害では行政による救援が直ちに行き届くとは限らないことから、政府は各家庭に対し、水や食料を最低3日間、できれば1週間分備蓄するよう求めた。
飲料水は調理用を含めて1人1日3リットルが目安とされ、1週間では1人21リットルとなる。断水時に使用する携帯用トイレやトイレットペーパーなども備えておく必要がある。
このほか、住宅の耐震診断・耐震化と家具の固定、ハザードマップによる危険箇所の確認、非常持ち出し品の準備、地域の防災訓練への参加を呼びかけた。
住宅については、昭和56年以前に建てられた家屋の耐震診断を促している。新耐震基準は1981年6月1日から適用されており、個々の建物の適用基準は建築確認の時期などによって異なる。
自治体には8分野の点検を要求 避難所の生活環境も対象
今回の緊急要請では、都道府県に対して市町村を含む防災対策の実施状況を点検し、必要な支援を行うよう求めた。
対象は、防災人材の育成、災害時の応援受け入れ体制、避難所の生活環境、災害協定の実効性、災害中間支援組織、個別避難計画、帰宅困難者対策、応急仮設住宅用地の事前選定の8分野となっている。
避難所の生活環境については、備蓄品のほか、トイレ、キッチン、ベッド、入浴設備の整備状況も重視される。
また、高齢者や障害者など、自力での避難が難しい住民の個別避難計画についても、作成状況を確認するよう求めている。
中央省庁にはBCPの見直し 年末に進捗を確認
中央省庁に対しては、災害時の業務継続計画(BCP)の点検・見直し、南海トラフ地震などに備えた施策の推進、所管する企業・団体への防災対策の徹底を要請した。
企業・団体については、建物の耐震化や設備の転倒防止、従業員の安否確認、災害時の指揮命令体制、備蓄品の確保などが挙げられている。
防災庁は都道府県と各府省庁に年末の進捗報告を求め、点検結果を踏まえて必要な対応を検討する。各府省庁に対する勧告権の行使も選択肢としているが、現時点で行使が決定したわけではない。
南海トラフ地震に備える東三河 地域の防災体制も焦点に
愛知県東三河地域でも、今回の要請を受けた防災対策の確認が重要になる。
豊橋市、豊川市、蒲郡市、田原市などでは津波や浸水への備えに加え、災害時の避難所運営、物資の備蓄・輸送体制が課題となる。新城市や北設楽郡を含む山間部では、道路の寸断による集落の孤立を想定した対応も欠かせない。
今回の要請に基づく東三河各自治体の新たな点検結果や改善計画については、現時点で確認できていない。
自治体ごとの備蓄量や避難所設備を検証する際には、既存の防災計画と、今回の要請を受けて新たに実施する対策を区別する必要がある。
「緊急要請」は地震の予知情報ではない
細野大臣は10月29日、今回の緊急要請について、地震などの災害予知情報が入ったことを契機とするものではないと説明している。
防災庁の発足に合わせ、国民や自治体、中央省庁の事前防災を徹底することが目的であり、特定の地震の発生が近づいていると警告するものではない。
編集部まとめ
今回の緊急要請は、国民に備蓄や耐震化を促すと同時に、自治体と中央省庁の防災対策が実際に機能する状態にあるかを確認するものだ。
防災庁の発足によって国の司令塔機能が強化されても、災害時に住民の避難や生活支援を直接担う自治体の役割が小さくなるわけではない。
年末の進捗点検で何が明らかになり、どの対策が改善されるのか。国の要請を地域の防災体制の強化につなげられるかが問われる。
特記事項
本記事は2026年11月2日に正式発出された防災庁の緊急要請に基づいています。緊急要請の方針自体は発足前から公表されており、同日に突発的な災害情報が示されたものではありません。
都道府県・各府省庁の年末の進捗報告について、具体的な提出日は公表資料の概要から確認できていません。
週刊TAKAPI編集部/成田
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