【大阪】別患者の点滴から鎮静剤を抜き取り80代に無断投与 岸和田徳洲会病院、20代看護師を懲戒解雇 府警が捜査

大阪府岸和田市の岸和田徳洲会病院で20代看護師が別患者に投与中のプロポフォールを抜き取り80代男性へ無断投与し懲戒解雇された問題

大阪府岸和田市の岸和田徳洲会病院で、20代の男性看護師が、別の入院患者に投与中だった鎮静剤「プロポフォール」を点滴のチューブから抜き取り、医師の指示なく80代の男性患者に投与していたことが分かった。

元看護師は2026年7月7日未明の夜勤中、集中治療室(ICU)で、別患者に投与されていたプロポフォール2~3ミリリットルを注射器で抜き取り、そのうち1ミリリットルを隣のベッドにいた80代男性の静脈へ投与したとされる。残りは廃棄し、その後の日勤への引き継ぎでも投与したことを伝えていなかった。

大阪府岸和田保健所は病院に立ち入り検査を行い、9月8日付で行政指導。病院は14日付で元看護師を懲戒解雇した。

さらに、病院から相談を受けた大阪府警が捜査を進めていることも明らかになった。現時点で逮捕、書類送検、起訴・不起訴などは確認されていない。

別患者に投与中のプロポフォールを抜き取る

元看護師は救急病棟に勤務していた。

7月7日未明、夜勤中のICUで、認知機能が低下していた80代男性患者に対し、医師から指示を受けないままプロポフォールを投与したとされる。

使用した薬剤は新たに薬品庫から持ち出したものではなかった。

別の入院患者に点滴で投与されていたプロポフォール2~3ミリリットルをチューブの栓から注射器で抜き取り、1ミリリットルを80代男性へ静脈投与。残った薬剤は捨てたという。

投与後に眠る 日勤には伝えず

80代男性は投与前、ベッドの柵から足を出すなど落ち着かない状態だったとされる。

元看護師は病院の聞き取りに対し、患者を落ち着かせる目的だったとの趣旨の説明をしている。

プロポフォール投与後、男性は静かになり眠ったという。

しかし元看護師は、その後の日勤スタッフへの引き継ぎで、医師の指示なく薬剤を投与したことを伝えていなかった。

7日朝、担当医が回診した際には男性の容体に異常は確認されなかった。男性は事案が発覚する前に別の施設へ移っており、現在も体調に問題はないとされている。

同僚看護師が目撃して発覚

問題が明らかになったきっかけは、別の看護師による目撃だった。

投与の様子を見ていた同僚看護師が病院側へ相談し、病院は8月下旬、元看護師への聞き取りなど院内調査を実施した。

元看護師は行為を認めたという。

一方、行為があった7月7日から病院による調査が行われた8月下旬までには一定の期間がある。

目撃した看護師が最初にいつ、誰へ報告したのか、その情報が院内でどのように共有され、正式な調査開始までどのような経過をたどったのかは、現時点では明らかになっていない。

8月31日に保健所へ報告 9月8日に行政指導

岸和田保健所によると、病院から今回の事案について報告を受けたのは8月31日だった。

保健所は9月2日、病院へ立ち入り検査を実施。

医薬品の投与が不適切だったと判断し、9月8日付で病院に是正を求める行政指導を行った。

病院による元看護師の懲戒解雇は、その6日後となる9月14日付だった。

ここでは、元看護師本人への懲戒処分と、医療機関である病院に対する行政指導を明確に分ける必要がある。

現時点では、行政指導で病院に具体的に何を改善するよう求めたのか、改善報告書の提出期限や履行確認方法などの詳細は明らかになっていない。

本来、プロポフォールは「医師のみが投与」

岸和田徳洲会病院では、本来、プロポフォールを投与するのは医師のみとする運用だった。

薬剤は救急病棟の薬品庫で保管し、数量や無断で持ち出された薬剤がないかについても毎日確認していたという。

今回、元看護師は薬品庫から新たな薬剤を持ち出したのではなく、すでに別患者へ投与されていたチューブ内から薬剤を抜き取ったとされる。

そのため、薬品庫での在庫確認や持ち出し管理とは別に、患者への投与が始まった後の薬剤を誰がどのように管理し、投与ラインからの抜き取りを防止・把握する仕組みがあったのかが医療安全上の確認点となる。

薬剤を抜き取られた患者への影響は不明

今回、無断投与を受けた80代男性については、健康被害や容体上の問題は確認されていない。

一方で、元看護師が薬剤を抜き取ったのは、別の患者に実際にプロポフォールを投与していたチューブだった。

この患者について、2~3ミリリットルが抜き取られたことで予定された投与量に影響がなかったのか、治療内容の変更や追加処置が必要にならなかったのかについては、現時点で確認できていない。

今回の事案では、無断投与された側だけでなく、薬剤を抜き取られた側の患者への影響についても確認が必要となる。

医師の指示なしの医薬品使用 法律にも規定

保健師助産師看護師法37条は、原則として主治医などの指示がある場合を除き、看護師が医薬品を使用するなど、医師でなければ衛生上危害を生じるおそれのある行為を行うことを禁じている。

同法44条の3では、37条などへの違反について、6カ月以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその併科を定めている。

ただし、今回の元看護師に具体的にどの法令違反が成立するかは、警察の捜査やその後の刑事手続きで判断される。

病院が患者親族に謝罪 大阪府警が捜査

病院は9月、無断投与された男性患者の親族に事案を説明し、謝罪した。

大阪府警岸和田署にも報告している。

その後、病院から相談を受けた大阪府警が捜査を進めていることが明らかになった。

現段階で確認できる刑事手続きは「捜査中」というところまでだ。

元看護師への事情聴取の有無、患者や家族から被害届や告訴が提出されているか、府警がどの法令違反を視野に捜査しているのか、書類送検などに至っているかは確認できていない。

「府警が捜査している」ことと、「立件」「送検」「起訴」は区別する必要がある。

病院側も「管理監督・職員教育」に課題

病院側は今回の問題について、元看護師個人の行為だけでなく、病院の管理監督や職員教育にも不足があったとの認識を示している。

これまでの院内調査では、元看護師によるほかの不適切な薬剤投与は確認されていないという。

病院側は再発防止として、管理監督や職員教育、医療安全管理体制を強化するとしている。

ただし、具体的にどの院内ルールを変更したのか、夜間の医師への連絡手順、投与中薬剤の管理、看護師間の相互確認などをどう見直したのかについては、現時点では明らかになっていない。

7月7日から府警捜査判明までの経過

  • 7月7日未明 元看護師が夜勤中のICUで、別患者に投与中のプロポフォールを抜き取り、80代男性に1ミリリットルを無断投与。日勤への引き継ぎでは投与を伝えず。
  • 7月7日朝 担当医が回診。患者の容体に異常は確認されず。
  • 8月下旬 目撃した同僚看護師からの相談を受け、病院が元看護師への聞き取りなどを実施。本人が行為を認める。
  • 8月31日 病院が岸和田保健所へ報告。
  • 9月2日 岸和田保健所が病院へ立ち入り検査。
  • 9月8日 保健所が病院に是正を求める行政指導。
  • 9月中 病院が患者の親族に説明して謝罪し、岸和田署にも報告。
  • 9月14日 病院が元看護師を懲戒解雇。
  • 9月19日 病院から相談を受けた大阪府警が捜査を進めていることが判明。

編集部まとめ

今回の問題は「看護師が医師の指示なく薬剤を投与した」という事実だけでは終わらない。

確認すべき点は、①夜間に患者の状態が不安定になった場合、医師へ連絡・相談する院内手順がどう定められ、実際に機能していたのか、②薬品庫の数量・持ち出し管理とは別に、投与開始後の薬剤を誰が管理し、投与ラインからの抜き取りを防止する仕組みがあったのか、③薬剤を抜き取られた側の患者に治療上の影響がなかったのか、④岸和田保健所が行政指導で病院に求めた具体的な改善内容と履行期限、⑤大阪府警による捜査の現在地だ。

元看護師は病院側の調査で無断投与を認め、病院側も管理監督や職員教育の不足を認めている。

個人による独断投与の責任と、それを防止・早期発見する病院の医療安全管理体制は、分けて検証する必要がある。

週刊TAKAPI編集部/成田

特記事項

本記事は2026年9月19日時点で確認できる複数の公開報道、関係機関の公開情報、保健師助産師看護師法を基に構成しています。

無断投与を受けた80代男性について、現時点で健康被害や容体上の問題は確認されていません。

一方、プロポフォールを抜き取られた別患者への治療上の影響については、現時点で確認できる公開情報では明らかになっていません。

岸和田保健所による行政指導、病院による懲戒解雇、大阪府警による刑事捜査は、それぞれ性質の異なる手続きです。

大阪府警について現時点で確認できるのは捜査を進めているという段階で、逮捕、書類送検、起訴・不起訴は確認されていません。

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