週刊TAKAPI編集部/担当記者:成田
「返してくれれば納得する、それだけです」
これは判決への感想ではない。学校の授業中に9歳の息子を失った母親の、戻らない時間への叫びだった。
2024年7月5日、高知市立長浜小学校4年の松本凰汰君、当時9歳が水泳授業中に溺れて死亡した。2026年6月17日、高知地裁は、当時の校長・中村仁也被告(56)に対し、禁錮2年、執行猶予4年の判決を言い渡した。
だが、遺族の心はそこで区切られなかった。父親は「執行猶予4年はいらないと思いました。納得はいっていない」と語り、母親は「何に納得するって言われたら分からない。返してくれれば納得する、それだけ」と涙ながらに訴えた。
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凰汰君の身長は113センチ。授業で使われていた南海中学校のプールは、水深114〜132センチだった。場所によっては、足が底に届かない。しかも凰汰君は水泳が苦手だったとされる。
長浜小学校のプールが故障していたため、児童たちは中学校のプールを使用していた。だが、小学生にとって中学校のプールは別物だ。大人には数センチの差に見えても、身長113センチの子どもには命を分ける深さになる。
判決では、校長が水深や凰汰君の泳力を認識しながら、担任らに人数確認、浮具の使用、泳力別指導、安全管理の徹底を十分に指示しなかった点が認定された。過去に同じプールで児童がおぼれかけた報告があったにもかかわらず、その危険は事故当日に生かされなかった。
事故当日、凰汰君は「けのび」やバタ足の練習中に溺れ、急性呼吸不全で死亡した。校長は現場にいなかった。
家族の記憶に残るのは、事故の数字ではない。大好きなバイクに乗って笑っていた9歳の姿だ。学校に行き、授業を受け、家に帰ってくるはずだった普通の一日。その当たり前が、足の届かないプールで奪われた。
「去年も大丈夫だった」
「先生が見ているから大丈夫」
「中学校のプールでも何とかなる」
そうした慣れと油断が、学校現場に残っていなかったか。水泳授業は、体育である前に命を預かる時間だ。水深、身長、泳力、監視、浮具、人数確認。どれか一つでも軽く見れば、プールは教育の場ではなく、命を奪う場所になり得る。
全国で水泳授業が本格化する時期だからこそ、保護者は確認すべきだ。わが子の学校は、児童の身長とプールの水深を照合しているのか。泳げない子を深い場所に入れていないか。浮具は使われるのか。監視役は本当に水面を見ているのか。
凰汰君は、教訓になるために生まれてきたのではない。ただ生きて、笑って、帰ってくるはずだった。この事故を「判決が出た」で終わらせてはいけない。
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編集部まとめ
今回の記事で最も重いのは、判決の数字ではなく、遺族の「返してくれれば納得する」という言葉だ。
身長113センチの9歳児が、水深114〜132センチのプールに入った。水泳が苦手だった。過去におぼれかけた報告もあった。それでも命は守られなかった。
学校安全は、事故後に反省するものではない。事故の前に、最悪を想定して徹底されるべきものだ。水泳授業が始まる季節に、全国の学校と保護者がこの事故を自分事として受け止める必要がある。
高知・9歳男児プール溺死事故と遺族の声Q&A
Q1. 今回の記事の焦点は何ですか?
元校長への判決そのものではなく、身長113cmの児童が足の届かない深さのプールに入った経緯と、遺族の「返してくれれば」という無念です。
Q2. 遺族は判決後に何と語りましたか?
父親は「納得はいっていない」と語り、母親は「返してくれれば納得する、それだけ」と涙ながらに訴えました。
Q3. なぜ水深が問題になっていますか?
凰汰君の身長は113cmで、授業で使われたプールの水深は114〜132cmでした。場所によって足が届かない深さだったためです。
Q4. 学校側の安全管理では何が問われていますか?
人数確認、浮具の使用、泳力別指導、監視体制、水深と児童の身長の確認が十分だったのかが問われています。
Q5. 保護者が確認すべきことは何ですか?
水泳授業で、子どもの身長と水深、泳力別対応、浮具、監視人数、緊急時対応が具体的に整っているかを学校に確認することです。
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