拾った健康保険証を使い、他人になりすまして病院で診療を受けていたとして、55歳の住職の男が逮捕された。
警察によると、逮捕されたのは住職の廣利輝和容疑者(55)。今年2月、東京都内の路上で拾った健康保険証を使い、面識のない男性になりすまして大阪市内の医療機関を受診し、診療や薬の処方を受けた詐欺の疑いが持たれている。
問診票には、保険証に記載されていた氏名や住所、生年月日をそのまま記入していたという。
捜査関係者によると、廣利容疑者はおととし3月ごろ、東京・上野で保険証を拾得。その後、国民健康保険に加入していない無保険の状態で、東京や大阪、兵庫、岡山、京都など各地の20以上の医療機関を転々とし、約2年間で少なくとも115回にわたり同様の手口で診療を受けていたとみられている。
保険組合側が「不自然な受診履歴がある」として警察に相談したことで事件が発覚した。
調べに対し廣利容疑者は、「保険証がなく、拾ったものを使った」「同じ病院で繰り返せばばれると思い、地域を変えて使った」などと容疑を認めているという。
■何が問題か
今回のケースは、単なる不正受診にとどまらず、医療制度の根幹を揺るがす問題をはらんでいる。
まず、健康保険証の不正使用は明確な詐欺行為にあたり、本来本人が負担すべき医療費が保険財政に転嫁される。結果として、制度全体の信頼性を損なうおそれがある。
さらに深刻なのは、なりすましによる受診が医療現場の安全にも影響を及ぼす点だ。誤った個人情報や既往歴に基づいて診療が行われれば、適切な医療が提供されないリスクがあり、最悪の場合、重大な医療事故につながる可能性もある。
また、複数の地域・医療機関を渡り歩くことで発覚を遅らせていたとみられ、現行の本人確認のあり方にも課題を突きつけている。
■広がる不正利用リスク
近年、健康保険証の紛失や盗難をきっかけとした不正利用のリスクが指摘されており、マイナ保険証の普及や本人確認強化の必要性が議論されている。
今回の事件は、そうした制度的な隙を突いた形ともいえ、再発防止に向けた対策が求められる。
週刊TAKAPI
新着記事をメールで確認しませんか?

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます