愛知県豊橋市が運航する「牛川の渡船」の運航委託業務をめぐり、一般競争入札で落札決定を受けた豊橋市の株式会社アクティーが、その7日後に契約を辞退していたことが分かった。
豊橋市は、落札したにもかかわらず契約を締結しなかったことが市の入札参加停止措置要領上の「不正又は不誠実な行為」に該当するとして、同社を1カ月間の入札参加停止とした。
牛川渡船をめぐっては、約3年前の市監査でも、運航委託業務の仕様書や緊急時の対応について改善を求める意見が出されていた。
落札からわずか7日で契約辞退
豊橋市が公表した入札参加停止措置によると、株式会社アクティーは2026年4月15日、「牛川渡船運航委託業務」の契約に係る一般競争入札で落札決定を受けた。
ところが、同社は4月22日付で契約を辞退する申し出を行い、市との契約を締結しなかった。
落札決定から辞退まで、わずか7日だった。
これを受け豊橋市は、同社に対して5月14日から6月13日までの1カ月間、入札参加停止措置を実施した。
市の資料では、停止理由を「不正又は不誠実な行為」としている。
適用されたのは「豊橋市工事請負契約等に係る入札参加停止措置要領」の別表第12項と、その運用基準第9条③。運用基準では「落札したにもかかわらず契約を締結しない行為」が「不正又は不誠実な行為」に該当すると定められている。
したがって今回の「不正又は不誠実な行為」という表現は、市の入札参加停止制度上の分類であり、別の違法行為が認定されたという意味ではない点には注意が必要だ。
平安時代からの歴史を持つとされる「牛川の渡船」
牛川の渡船は、一級河川・豊川の牛川町側と大村町側を結ぶ渡し船で、市道「牛川町・大村町244号線」の一部に位置付けられている。
航路は約70メートル。豊橋市によると正確な起源を裏付ける資料は残っていないものの、平安時代ごろから存在した可能性があるとされ、1932年から豊橋市営となった。
1994年から運航業務が民間事業者へ委託され、2024年には三代目となる「ちぎり丸」が就航している。
現在も無料で利用できる、豊橋の歴史を伝える地域色の強い交通手段だ。
3年前の監査では「詳細な点検項目が示されていなかった」
今回とは別に、牛川渡船の運航委託業務については過去の豊橋市監査でも改善を求める意見が出されている。
2023年2月28日に公表された「豊橋市監査公表第19号」によると、監査は2022年10月20日から12月27日にかけて実施された。
監査結果全体については「おおむね適正に処理されている」とした一方、建設部土木管理課が所管する牛川渡船運航委託業務について、監査委員は仕様書に詳細な点検項目が示されていなかったと指摘した。
監査委員は、安全運航を確保するため仕様書を見直すなど、適切な事務処理に努めるよう求めた。
さらに当時、緊急時における対応マニュアルについても「整備されていない」とし、利用者の安全確保の観点から整備するよう求めていた。
なお、この記載は監査結果上の「指摘事項」ではなく「意見」に分類されている。
監査から約3年、今度は運航業務の契約を落札者が辞退
2023年の監査意見と、今回のアクティーによる契約辞退は別の事案である。
現時点で確認できた公表資料からは、監査で示された問題とアクティーの契約辞退との間に因果関係があるとは確認できない。
一方で、同じ「牛川渡船運航委託業務」をめぐり、過去には安全運航のため仕様書や緊急時対応について改善を求められ、その約3年後には新年度の運航業務を落札した事業者が契約締結前に辞退したことになる。
現在、市が公開している牛川渡船の利用案内では、大雨・洪水・暴風などの警報が発表された場合のほか、豊川石田水位観測所の水位が1.0メートルを超えた場合など、複数の運休条件が明示されている。また、乗船中は救命胴衣を常時着用するなど、利用者向けの安全上の遵守事項も示されている。
ただし、これらが2023年の監査意見を受けて整備されたものかどうかは、公表資料だけでは確認できていない。
なぜ落札後7日で辞退したのか
今回、市が公表している入札参加停止資料に記載されているのは、アクティーが落札後に契約辞退を申し出て契約を締結しなかったという事実までだ。
なぜ同社が落札から7日後に辞退したのか、辞退によって牛川渡船の運航に影響が生じたのか、その後どの事業者が運航業務を担うことになったのかなどについては、今回確認した公表資料からは明らかになっていない。
また、2023年の監査後に仕様書の点検項目や緊急時対応マニュアルが具体的にどう改善されたのかについても確認が必要となる。
週刊TAKAPIでは、牛川渡船の運航委託をめぐる契約経緯と、監査後の安全対策について引き続き確認する。
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