マンションは「新築から年数が経つほど価値が下がる」――。一般的にはそう考えられがちだ。
しかし東京都心の中古マンション市場を見ると、築年数だけでは説明できない物件が存在する。
特に存在感を示しているのが、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産という旧財閥系デベロッパーが手掛けてきたブランドマンションだ。
三井不動産レジデンシャルの最高級「パークマンション」、三菱地所レジデンスの「ザ・パークハウス グラン」、住友不動産の「グランドヒルズ」。いずれも一般的なブランドマンションよりさらに上に位置づけられるシリーズである。三井側も「パークマンション」を最高級ブランド、住友不動産も「グランドヒルズ」を最高峰ブランドと明記している。
では、なぜ築10年、20年どころか、築50年を超えても高額で取引されるマンションがあるのか。
中古マンションの「ブランド」と「資産価値」の関係を考える。
旧財閥系マンション、中古の値上がり率にも差
興味深いデータがある。
「住まいサーフィン」を運営するスタイルアクトの売主別中古マンション値上がり率ランキングを引用したダイヤモンド不動産研究所によると、関東では三井不動産レジデンシャルが分譲時比88.3%でトップ、三菱地所レジデンスが78.0%で6位だった。
住友不動産は関東の上位10社には入らなかったものの、関西では2位だったという。
もちろん、これは各社が販売したすべてのマンションが88%、78%値上がりするという意味ではない。
分譲時期、立地、住戸、集計対象などによって結果は大きく変わる。
それでも、大手デベロッパーの「ブランド」が中古市場で一定の評価材料になっていることを考えるうえでは興味深い数字だ。
三井不動産「パークマンション」 1971年竣工でも存在感
その象徴ともいえるのが、三井不動産レジデンシャルの「パークマンション」だ。
三井不動産レジデンシャルは「パークマンション」について、都心の一等地で展開する最高級マンションブランドと位置づけている。公式サイトには、千鳥ヶ淵、麻布、白金、三田などの物件が並ぶ。
注目したいのが、
三田綱町パーク・マンション
である。
竣工は1971年。2026年現在、築55年ほどになる。
三井不動産レジデンシャルの公式サイトにも1971年竣工の供給実績として掲載されている。
さらに民間のマンション価格情報サイト「マンションマーケット」では、2026年9月更新時点で、約126㎡・2LDKの一例について参考相場価格3億5,930万円~3億7,730万円としている。あくまでサイト独自の推計価格であり実際の成約価格とは異なる可能性があるものの、築50年を大幅に超えた物件としては非常に高い水準だ。
つまり、
「築50年=資産価値がほとんどない」
とは一概に言えない。
むしろ立地や土地の希少性、建物そのものの評価などによって、時間の経過が「ヴィンテージ」という価値に転換するマンションも存在する。
なぜ「パークマンション」は古くても高いのか
重要なのは、単純に「三井だから高い」と考えないことだ。
パークマンションが供給されてきた場所を見ると、麻布、白金、千鳥ヶ淵、三田、檜町公園など、土地そのものに希少性があるエリアが目立つ。
建物は古くなっても、
「東京都心の一等地にある土地」
は新しく作ることができない。
さらに現在では同じ場所に、同じ敷地条件・規模・設計思想のマンションを新築できるとは限らない。
ここに中古マンション特有の「希少性」が生まれる。
三菱地所「ザ・パークハウス グラン」 最高水準を狙うフラッグシップ
三菱地所レジデンスの代表ブランドが「ザ・パークハウス」。
そのなかでもフラッグシップに位置づけられているのが、
「ザ・パークハウス グラン」
だ。
同社は「ザ・パークハウス」について、立地、ものづくり、サービスを追求し、「時を重ね、住む人の、街の『資産』となる高付加価値な住まい」を目指すとしている。
グランについても、都心の立地を選び、最高水準のグレードを目指すフラッグシップシリーズと説明されている。
代表的な物件が、
ザ・パークハウス グラン千鳥ヶ淵
だ。
ダイヤモンド不動産研究所によると、2013年の販売開始時は1億6,000万円~5億4,000万円台、最多価格帯は2億7,000万円だったのに対し、2026年には約127㎡の住戸が19億円で売り出された事例があるという。なお、これは売出価格であり、実際の成約価格とは区別して見る必要がある。
住友不動産「グランドヒルズ」も最高峰
住友不動産の場合は、
「グランドヒルズ」
が最高峰ブランドにあたる。
住友不動産自身も「グランドヒルズ南青山」の公式サイトで、グランドヒルズを同社の「最高峰ブランドマンション」と位置づけている。
これまで番町、白金台、松濤、西麻布、三田、南青山など、高級住宅地を中心に展開されてきた。
特徴の一つが、建物の豪華さだけではなく、コンシェルジュをはじめとする管理・サービス面まで含めて商品価値を構築している点だ。
中古マンションになれば、新築時のモデルルームや広告はなくなる。
最終的に残るのは、
立地、建物、管理状態、住環境、そしてマンションそのものの評判
である。
だからこそ、築年数が進んだときほど「ブランドの中身」が問われるともいえる。
なぜブランドマンションは中古でも値崩れしにくいのか
編集部が注目するのは、ブランドそのものよりも、ブランドマンションが最初から持っている条件だ。
第一に立地。
最高級シリーズは、都心でも特に土地取得が難しい場所に供給される傾向が強い。
第二に希少性。
パークマンションのように供給数そのものが少なければ、中古市場でも売り物件が限られる。
第三に管理。
築30年、40年、50年になるほど、購入希望者が見るのは室内の新しさだけではない。
大規模修繕、給排水設備、エレベーター、外壁、防水、耐震性、修繕積立金など、マンション全体の維持管理が重要になる。
そして第四がブランドの認知度だ。
中古住宅は新築以上に物件ごとの差が大きい。そのなかで「あのシリーズのマンション」という認知は、買い手にとって物件を比較する際の一つの材料になる。
「旧財閥系を買えば値上がりする」は危険
一方で注意したい。
今回のデータから、
「三井・三菱・住友ならどのマンションでも値上がりする」
と結論づけることはできない。
同じブランドでも駅距離、地域、築年数、眺望、階数、管理状態、修繕積立金、総戸数などによって中古価格は変わる。
さらに2020年代のマンション価格上昇には、都心部の地価上昇、新築マンション供給減、建築費・人件費上昇など、ブランドとは別の市場要因も存在する。
値上がり率だけを見て「ブランド力によって上昇した」と断定するのは適切ではないだろう。
