東三河で16億円超の未償還 元市議会議長の会社は代理店契約を認める
京都市の合同会社クリアースカイを巡り、全国約5,000人、約250億円規模の未償還が生じたとされるサーバー投資トラブル。愛知県東三河地域でも16億円を超える未償還残高が報じられ、地域の企業や団体、元市議会議長との関係にも関心が集まっている。
こうしたなか、2026年6月8日の豊橋市議会6月定例会で、菅谷竜市議(新しい豊橋)がクリアースカイを具体名で挙げ、豊橋市の認識や関係者との接点を質問していた。
市側は、同社に関連すると認識している市民相談はないと説明。一方、市との関係を尋ねた質問には、当初「質問の対象とする範囲が広すぎるためお答えができません」と回答した。
その後、菅谷市議が2024年に市が後援したWEB3イベントへと質問を絞ると、産業部長は後援手続き以外の接点は確認していないと答弁した。
週刊TAKAPIは、議会でのやり取りに加え、公開されたイベント資料、関係企業の声明、被害者弁護団による法的手続きを整理した。
250億円規模の投資トラブル 東三河でも16億7,370万円の未償還
クリアースカイは、分散型ファイルシステム「IPFS」を活用したサーバー関連事業を展開していたとされる企業だ。
顧客にサーバー機器を購入させ、第三者へのレンタル・運用によって収益を得ると説明。一定期間後に購入金額を上回る金額で買い戻す仕組みをうたい、資金を集めていたという。
しかし、2026年2月ごろから会社側との連絡が困難になり、顧客への支払いを巡る問題が表面化した。
4月7日には債権者が京都地方裁判所に破産を申し立てた。東京商工リサーチによると、申立時点で判明していた債権は205人に対する約28億1,806万円。被害者弁護団は、全国の未償還残高が約250億円、関係する債権者が約5,000人に及ぶ可能性があると説明している。
東三河でも影響が広がった。
東愛知新聞は4月30日、豊橋市の株式会社ミキコーポレーションなどがクリアースカイの勧誘に関係していたと報じ、同社に関連する未償還残高が16億7,370万円と推計されることを伝えた。
ただし、この金額はミキコーポレーション自身の債務を示すものではなく、クリアースカイが返還すべき債務とされる金額だ。同紙も後にこの点を補足している。
被害者弁護団は資金の集め方やサーバー事業の実態について問題を指摘しているが、刑事責任が確定したわけではない。
菅谷竜市議が質問「本市にクリアースカイ関連の相談はあったか」
6月8日、豊橋市議会の本会議。
菅谷市議は一般質問の冒頭で、市内で発生した投資詐欺や特殊詐欺被害について取り上げた。
質問では、SNS型ロマンス詐欺や警察官をかたる特殊詐欺など、豊橋市内で報じられた被害事例にも触れ、手口が巧妙化していることへの懸念を示した。
そのうえで、東愛知新聞が報じたクリアースカイ問題を紹介。
東三河で多額の未償還が生じているとの報道を踏まえ、豊橋市に関連する相談が寄せられているかを確認した。
菅谷市議は次のように質問した。
「本市にこのクリアースカイ関連の相談があったか伺います」
これに対し、市民協創部長は、
「現時点ではクリアスカイ関連と認識しているご相談はございません」
と答弁した。
さらに菅谷市議は、市内でクリアースカイの投資勧誘が行われていたとの情報を、市が把握していたのかを質問。
市民協創部長は、
「そのような報道があることは確認をしています」
と述べた。
つまり、市は報道を把握していた一方、少なくとも当時は、クリアースカイ関連として認識している相談はないと説明していたことになる。
ただし、市の相談窓口が把握していないことは、市内に契約者や未償還を抱える市民が存在しないことを意味しない。
市と関係者の接点は? 最初の質問に「範囲が広すぎる」
続いて菅谷市議が取り上げたのは、クリアースカイの関係者と豊橋市との接点だった。
菅谷市議は、SNSなどでも多くの情報が出回っているとしたうえで、市と関係者との関わりについて質問した。
「本市がですね、クリアスカイの関係者と本市は関わりはあったか伺います」
これに対し、市民協創部長は、
「質問の対象とする範囲が広すぎるためお答えができません」
と回答した。
菅谷市議は、質問の範囲を絞ったつもりだったとしながら、2024年に開催されたイベントを具体例として挙げた。
焦点となったのは、一般社団法人JAPAN WEB3協会が主催し、豊橋市が後援したイベントだった。
豊橋市が後援したWEB3イベント 関係者が登壇
2024年8月9日、豊橋市松葉町の豊橋市民センター・カリオンビルで、「豊橋から世界へ ビジネスの未来について考える」と題するイベントが開催された。
イベントの告知チラシには、主催者として一般社団法人JAPAN WEB3協会、後援団体として豊橋市が明記されている。
当日はNFT、AI、メタバースなどの技術を地域やビジネスに活用する可能性について、講演や意見交換が行われた。
東愛知新聞の2024年8月11日付記事によると、協会代表理事の辻大輝氏や、前豊橋市議会議長の近藤喜典氏らが登壇し、豊橋の将来やWEB3技術について意見を交わした。
その後、2026年5月1日に近藤氏が公表した説明では、辻氏がクリアースカイの役員を務めていることが明かされている。
ただし、近藤氏はイベントについて、クリアースカイの事業への言及や投資・出資への勧誘は行われていないと説明している。
イベントへの参加や登壇、市の後援という事実と、投資勧誘への関与は区別して考える必要がある。
産業部長「後援手続き以外に市との接点は確認しておりません」
菅谷市議は、2024年のイベントにクリアースカイ関係者とみられる人物が参加していたことを写真や参加者から確認したと説明。
市がイベントを後援した際に、関係者との接点があったのではないかと尋ねた。
これに対し産業部長は、
「一般社団法人ジャパンウェブ3協会からの後援手続き以外において市との接点は確認しておりません」
と答弁した。
菅谷市議はさらに、後援を依頼した際に接点があったのではないかと質問を重ねた。
産業部長は、産業部として後援手続きを行ったものだと説明し、市との関わりはないとの趣旨を述べた。
菅谷市議は答弁を受け、後に問題とならないことを願うとしたうえで、今後も経過を見ながら質問していく考えを示した。
このやり取りで重要なのは、市がイベントの後援手続きを行ったことを認めている点だ。
一方、市側の説明は、後援手続き以外の接点を確認していないというものであり、クリアースカイの投資事業を市が承認していたことを示すものではない。
後援申請時、市は何を審査していたのか
豊橋市の公式ホームページによると、市は市民福祉の増進などに寄与すると認める事業について、後援や共催などを行う制度を設けている。
後援は、市が事業を奨励するものと位置付けられ、共催とは区別されている。
現在の手続きでは、申請者に開催要領やイベント内容が分かる資料などの提出を求め、初めて申請する団体には会則・規約、役員名簿なども求めている。
ただし、申請書の様式は2026年7月1日に変更されており、2024年当時の申請内容を調べるには、当時の書類と審査基準の確認が必要となる。
今回のWEB3イベントについて、実際に誰が後援を申請し、どのような団体資料が提出され、何を根拠に承認されたのかは、確認できた公開資料だけでは明らかになっていない。
また、イベントの後援審査段階で、市が辻氏とクリアースカイとの関係を把握していたかどうかも確認できていない。
元豊橋市議会議長・近藤喜典氏の会社が代理店契約を認める
クリアースカイ問題では、2024年のWEB3イベントに登壇した元豊橋市議会議長の近藤喜典氏も、関係について説明を公表している。
近藤氏は2026年5月1日、自身が理事長を務める一般社団法人東三河kids未来クラブが、クリアースカイから20万円の寄付を受けていたことを明らかにした。
近藤氏は、寄付は適切に処理され違法な点はないとの認識を示す一方、仮に問題のある資金であれば道義的な問題が生じ得るとして、事実関係に応じた返還などを検討する考えを示した。
さらに5月21日には、近藤氏が代表取締役を務める株式会社たくとカンパニーが声明を公表した。
同社は、クリアースカイのIPFSサーバー構築事業に関して代理店契約を結び、顧客への紹介や契約に関与していたことを認めた。
声明では、代理店契約の前に事業資料や外部信用調査機関の情報を確認し、事業の継続性などについて判断したと説明している。
一方、2026年2月以降はクリアースカイとの連絡が取りづらくなったとし、紹介した契約者への支援対応を自主的に進めてきたという。
5月21日時点で対象者への対応はおおむね完了したとする一方、同社がクリアースカイの債務や法的責任を引き継ぐものではないとも説明している。
この声明は、近藤氏側の企業が代理店として契約に関わっていた事実を明らかにしたものだ。
ただし、紹介人数、契約総額、代理店報酬や支援金額などの詳細は、今回確認した声明では示されていない。
三遠ネオフェニックスは2社との契約を解除
クリアースカイ問題は、地元のプロスポーツにも影響した。
バスケットボールBリーグの三遠ネオフェニックスを運営する株式会社フェニックスは、2026年4月30日、クリアースカイとミキコーポレーションの2社とのパートナー契約解除を発表した。
クラブによると、クリアースカイとは2025年10月、ミキコーポレーションとは2026年1月に契約を開始していた。
その後、クリアースカイとの契約を4月21日に解除。ミキコーポレーションとは4月22日に合意解除したという。
クラブは、両社から受領したパートナー料について、法的義務の有無にかかわらず返金対応を行う方針も示した。
一方、受領額や返金完了額などについては、今回確認した発表では明らかになっていない。
7月には東京地検特捜部へ刑事告訴 破産事件は東京地裁へ
菅谷市議が豊橋市議会で質問した後も、クリアースカイを巡る法的手続きは進んだ。
7月8日、顧客らの弁護団は、6人から2億円超を詐取されたなどとして、詐欺罪などで東京地方検察庁特別捜査部に告訴状を提出した。
また、4月に京都地方裁判所へ申し立てられた破産事件については、7月17日付の決定で東京地方裁判所への移送が決まったと報じられている。
ただし、刑事告訴は犯罪の成立や刑事責任を認定するものではない。また、破産事件の移送も破産手続開始決定とは異なる。
2026年10月20日時点で、公開情報から破産手続開始決定や関係者の起訴などを確認できていないため、その後の司法手続きは引き続き確認が必要だ。
Q&A|クリアースカイ問題と豊橋市の関係
問われる市の後援審査と、被害の実態把握
全国規模の投資トラブルが東三河にも広がったとされるクリアースカイ問題。
豊橋市議会では菅谷竜市議が、市民相談の有無、市側の認識、関係者との接点を具体的に質問した。
市側は報道を把握していると説明し、2024年のWEB3イベントについても後援手続きを行ったことを認めた。
その一方、後援申請の際に何を確認したのか、イベント主催者の関係先をどの程度把握していたのか、その後の調査や相談対応に変化があったのかは、なお明らかではない。
行政が民間イベントを後援することと、主催者や登壇者に関係する企業の事業に責任を負うことは同じではない。
しかし、後援名義が与えられる過程で、どのような資料に基づき何を審査したのかは、行政手続きの透明性を考えるうえで確認すべき事項だ。
週刊TAKAPIは今後も、2024年の後援申請・決裁記録、東三河の未償還状況、関係者側の説明と司法手続きの進展について検証を続ける。
資料確認日:2026年10月20日
記事更新日:2026年10月20日(公開時に確認)
担当記者:週刊TAKAPI編集部(記者名要記入)
主な参照資料
- 豊橋市議会・2026年6月8日 菅谷竜市議一般質問
- 東京商工リサーチ・クリアースカイ破産申立て
- 東愛知新聞・東三河の未償還問題
- 近藤喜典氏・2026年5月21日の声明
- 豊橋市・後援申請制度
- 東愛知新聞・2024年WEB3シンポジウム
- 三遠ネオフェニックス・契約解除について
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