【検証】16歳女子高校生ら2人が相次ぎ重体 高齢ドライバー事故と地方の車社会、免許返納だけで解決できるのか

高齢ドライバーによる重大交通事故と免許返納後の移動手段を検証する報道画像。地方の車社会と東三河の公共交通の課題を伝える

10月20日、千葉県館山市で16歳の女子高校生が軽乗用車にはねられ、意識不明の重体となった。翌21日には山口県周南市でも、登校中の女子高校生が車にはねられ、意識不明となる事故が発生した。

車を運転していたのは72歳の女と86歳の男。いずれも過失運転致傷の疑いで逮捕された。

高齢ドライバーによる重大事故が起きるたび、運転免許の自主返納が議論になる。しかし、鉄道やバスが限られる地方では、自家用車が通院や買い物に欠かせない。

高齢者の運転による事故をどう防ぎ、車を手放した後の生活を誰が支えるのか。警察庁の最新調査と愛知県東三河の交通事情から、その課題を検証する。

横断歩道で相次ぐ事故 帰宅途中と登校中の高校生が被害

千葉県館山市では20日午後8時40分ごろ、交差点を右折してきた軽乗用車が、横断歩道を渡っていた16歳の女子高校生と40代の母親をはねた。

女子高校生は頭を負傷して意識不明の重体となり、母親も首に軽いけがを負った。

逮捕された72歳の女は、前方を歩いていた別の2人に注意を向け、後ろにいた親子に気付かなかったと説明している。親子は家族で外食した帰りだったという。

翌21日午前7時40分ごろには、山口県周南市大河内の市道で、登校中の女子高校生が軽乗用車にはねられた。

現場はJR岩徳線大河内駅近くの信号機がない横断歩道。女子高校生は頭部を強く打ち、事故直後は意識不明の重体と報じられた。

警察は86歳の男を現行犯逮捕。県警の発表では、被害者がくも膜下出血などの重傷を負ったことが確認されている。

2人のその後の容体は確認できていない。また、いずれの事故も加齢による判断力や身体機能の低下が原因と断定されたわけではない。

75歳以上の死亡事故率は約1.9倍 警察庁は運転技能検査の見直しへ

内閣府の2026年版高齢社会白書などによると、2025年の75歳以上の運転者による死亡事故は、免許保有者10万人当たり4.8件だった。

75歳未満の2.5件に対して約1.9倍となる。

ただし、75歳以上の死亡事故率は2015年の9.6件から半減しており、長期的には改善している。高齢運転者による事故が増え続けているという見方は正確ではない。

一方、免許更新時の運転技能検査には課題が残る。

警察庁が今年6月に公表した追跡調査では、一定の違反歴がある75歳以上の運転者のうち、技能検査に合格した人の交通事故件数は、検査対象ではない75歳以上の運転者と比べ、免許保有者10万人当たりで約2.8倍だった。

比較対象の違反歴などに違いがあるため、この数字だけで検査の効果を判断することはできない。しかし、検査に合格した後も事故リスクが残ることは明らかになった。

9月には有識者検討会が報告書をまとめ、運転技能検査に方向変換を追加することや、安全確認の不足を減点対象に加えることなどを提言した。

今後は、実際の運転能力をどこまで正確に評価できるかが問われる。

豊橋市内でも交通事情に差 奥三河では車が生活を支える

運転に不安を感じても、簡単には免許を返納できない。地方には、そうした事情がある。

愛知県東三河でも、豊橋市の中心部と新城市、奥三河の山間部では公共交通の条件が大きく異なる。

豊橋市には鉄道、市電、路線バスがある一方、公共交通が十分に行き届かない地域では、住民主体の地域生活バス・タクシーが運行されている。

東部地区の「やまびこ号」、北部地区の「柿の里バス」、南部地区の「愛のりくん」などがその例だ。

田原市では10月1日から、ぐるりんミニバス中山線の予約型運行が本格的に始まった。

日曜から火曜は予約に応じて運行し、水曜から土曜は決まった路線を走る。予約型の運賃は1乗車200円で、電話による事前予約が必要となる。

こうした仕組みは、免許を返納した住民の移動手段になり得る。

ただし、通院先まで乗り継ぎが必要な場合や、診察終了後に帰宅できる便がない場合も考えられる。自宅から停留所まで歩くことが難しい人への対応も課題だ。

公共交通が運行されていることと、自家用車なしで生活できることは同じではない。

免許返納と移動支援を一体で 自治体に求められる対応

国土交通省は、公共交通を利用しにくい「交通空白」の解消に向け、乗合タクシーや公共ライドシェアなどの導入を進めている。

高齢ドライバー対策を進めるうえでは、こうした地域交通の整備を免許返納支援と結びつける必要がある。

例えば、通院時間に合わせた予約型交通、医療機関や商業施設との送迎連携、免許返納者へのタクシー利用補助などが考えられる。

一方、利用者が少ない地域で運行を維持するには費用がかかる。運転手不足もあり、自治体がどこまで負担できるかという問題は避けられない。

利用者数や費用だけで判断すれば、人口の少ない地域ほど交通手段が失われかねない。

移動を公共サービスとしてどの範囲まで保障するのか。これは高齢者本人だけでは解決できない行政上の課題だ。

高齢者だけの問題ではない 横断歩道の安全対策も

今回の2件で共通しているのは、歩行者が横断歩道を渡っていた際に被害に遭ったことだ。

運転者の年齢に関係なく、歩行者が優先される場所で重大事故が発生している。

交通事故を減らすには、運転技能検査や免許返納だけでなく、交差点の見通し、夜間照明、右折車両と歩行者の動線など、道路環境の改善も欠かせない。

特に通学路では、道路管理者と警察が危険箇所を把握し、具体的な事故防止策を講じる必要がある。

高齢者が運転を続ける場合の安全対策と、すべての歩行者を守る道路整備は、並行して進めるべき問題だ。

編集部まとめ

相次ぐ重大事故を受け、高齢ドライバーの運転能力を適切に確認する仕組みの重要性が改めて浮き彫りになった。

一方、東三河をはじめとする地方では、自家用車が日常生活を支えている。免許返納を促すだけでは、移動手段を失う高齢者の問題が残る。

「危険だから運転をやめるべきだ」という議論だけでは足りない。運転をやめても暮らせる地域を整備することが、事故防止と同じくらい重要になる。

免許制度の見直しと地域交通への投資をどう両立させるか。高齢ドライバー問題は、地方自治体の交通政策そのものを問い直している。

特記事項

本記事は2026年10月20日、21日の交通事故に関する確認済み報道、警察発表、内閣府の高齢社会白書、警察庁および国土交通省、東三河の自治体の公表資料に基づき構成した検証記事である。

高齢ドライバーと免許返納、地方交通の課題

Q今回の事故で逮捕された運転者は何歳ですか?
A千葉県館山市では72歳の女、山口県周南市では86歳の男が逮捕されました。
Q高齢ドライバーの死亡事故率は増加していますか?
A75歳以上の免許保有者10万人当たりの死亡事故率は長期的に低下しています。ただし、75歳未満より高い水準です。
Q75歳以上の運転免許更新にはどのような検査が必要ですか?
A認知機能検査などが必要です。一定の違反歴がある人には、実車による運転技能検査も義務付けられています。
Q東三河で免許返納後に利用できる交通手段はありますか?
A豊橋市の地域生活バス・タクシーや田原市のぐるりんバスなどがあります。利用できる地区や時間帯は異なります。
Q地方の高齢ドライバー対策で重要なことは何ですか?
A運転能力の確認、横断歩道などの安全対策に加え、通院や買い物に使える代替交通を確保することです。

週刊TAKAPI 編集部/黒木

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