【新潟】部活動で不適切指導259人、103人が相談せず 高校柔道部「指導死」受け管理体制見直し、知事は私学にも対応求める

新潟県立新潟工業高校の柔道部に所属していた男子生徒が2024年6月に自死した問題を受け、県教育委員会が実施した部活動指導の実態調査で、生徒259人が不適切な指導を受けた経験があると回答した。このうち103人は誰にも相談していなかった。

相談した156人のうち、学校の先生を相談相手として選んだのは30.8%にとどまり、家族や友人に相談する割合が高かった。

県教委は10月23日、男子生徒への不適切な指導が自死に至る要因となったとして、当時の柔道部監督を懲戒免職処分とした。学校の管理体制や相談体制を見直す再発防止策も公表している。

10月29日には花角英世知事が問題に言及し、私立学校にも再発防止策を共有し、適切な対応を働きかける考えを示した。

不適切な指導259人が経験 391人は見聞き

県教委は2026年5月20日から6月10日まで、県立高校と県立中等教育学校後期課程の部活動経験者、その保護者を対象に無記名のオンライン調査を実施した。

回答した生徒は1万7251人で、回答率は73.4%。保護者は1万3554人で、回答率57.7%だった。

生徒のうち、不適切な指導を受けたことがあると答えたのは259人で、回答者全体の1.5%。別に391人が、不適切な指導を見たり聞いたりした経験があると回答した。

受けた指導の内容は、執拗な叱責が45.6%で最も多く、暴言41.7%、無視・排除28.6%と続いた。

不適切な指導を受けた影響については、65.6%が部活動に行きたくなくなったと回答。心が不安定になった生徒は42.1%、強い不安や恐怖を感じた生徒は30.9%に上った。

ただし、259人という数字は生徒の自己申告に基づくものであり、県教委が個別に259件の不適切指導を認定したものではない。

103人が相談せず 学校教員への相談は30.8%

今回の調査では、生徒が不適切な指導について誰に相談したかも明らかになった。

不適切な指導を経験した259人のうち、誰かに相談したのは156人で60.2%。残る103人、39.8%は誰にも相談していなかった。

相談した生徒156人に複数回答で相手を尋ねたところ、家族が77.6%、友人が76.9%だった。一方、学校の先生は30.8%、スクールカウンセラーは5.8%となっている。

相談しなかった理由には、相談する必要を感じなかったという回答のほか、相談しても改善につながらないと思った、相談しづらかったといった回答があった。

相談しなかった生徒全員が、相談したくてもできなかったわけではない。

しかし、学校に相談しても改善が期待できないと感じる生徒が存在することは、相談窓口の設置だけでは解決できない課題を示している。

28.6%が「勝つためには我慢」 指導への認識にも課題

県教委の調査では、競技力の向上と不適切な指導の関係についても尋ねている。

試合に勝ったり記録を伸ばしたりするためには、不適切と感じる指導でも我慢すべき、またはどちらかといえば我慢すべきと回答した生徒は28.6%だった。

保護者でも10.5%が同様の回答をしている。

県教委は、不適切な指導を受けても、それを不適切だと認識していない生徒が存在する可能性にも言及した。

競技力向上のための厳しい練習と、人格を傷つける言動は区別されなければならない。

指導する側だけでなく、生徒や保護者も、どのような指導が許されないのかを理解する必要がある。

元監督は「怒鳴った認識はない」 県教委は懲戒免職

県教委は10月23日、県立新発田農業高校に勤務していた小田和輝教諭(54)を懲戒免職処分とした。

小田教諭は2024年当時、新潟工業高校柔道部の監督を務めていた。

県教委の説明によると、本人は男子生徒に複数回指導したことを認めた一方、怒鳴ったという認識はなかったという。

次の大会に向けて気を引き締めてほしいという意図があり、地声が大きかったため、生徒には厳しい叱責として受け止められた可能性があると説明した。

一方、関係者への聞き取りを踏まえ、自身の言動が叱責と判断されたことを重く受け止め、指導者としての配慮が不足していたとの認識も示している。

この事案について第三者委員会は2026年4月、監督による権威的かつ過度な指導が短期間に強い心理的負荷を与え、教員の指導を主たる契機とする死亡事案、いわゆる「指導死」に当たると判断した。

県教委も不適切な部活動指導が自死に至る要因となったと認め、最も重い懲戒処分である免職を決定した。

当時の管理職3人にも措置 教育長も減給相当

県教委は、元監督だけでなく、当時の学校管理職にも管理監督責任があったと判断した。

当時の校長には戒告相当、副校長と教頭にはそれぞれ文書訓戒の措置を行った。

さらに教育長についても、教育委員会事務局を統括する立場として責任を重く受け止め、給料月額の10分の1を1か月減額する相当額の措置を示している。

第三者委員会は、柔道部に監督以外の副顧問が3人配置されていたものの、実際の指導は監督に集中し、組織的な監督機能が十分に働いていなかったと指摘している。

問題は一人の指導者の言動だけではなく、周囲の教職員や管理職が不適切な指導を把握し、是正できる体制だったかという点にも及ぶ。

県教委が再発防止策 副顧問の関与や管理職への報告を徹底

県教委は10月23日、再発防止策を県立学校へ通知した。

管理職が部活動の状況を定期的に把握し、副顧問も生徒との面談などに関与する、実効性のある複数顧問制を求めている。

不適切な指導に気づいた教職員が管理職に報告できる仕組みを設け、深刻化する恐れがある案件については県教委が速やかに学校を訪問する方針も示した。

相談体制では、スクールカウンセラーを含むすべての教職員が相談を受け止め、必要な支援につなぐことを求めている。

さらに、不適切な指導の具体例や相談先を示す資料の周知、指導者向け研修、定期的な自己点検などにも取り組む。

ただし、こうした対策が各学校でどこまで実施され、実際に指導の改善につながったかについて、11月3日時点で新たな集計結果は確認できていない。

知事も再発防止に言及 私立学校への働きかけも

10月29日の定例記者会見で、花角英世知事は今回の指導死について、教員による不適切な指導が自死の要因となったことを深刻に受け止めていると説明した。

元監督や学校管理職に対する措置については県教委の判断を尊重し、同様の事案が再び起こらないよう再発防止策を進めてほしいとの考えを示した。

さらに、私立学校にも事案の内容と再発防止策が共有されていると説明。私立学校の自主性を尊重しつつ、適切な対応を働きかけていく方針を明らかにした。

今回の実態調査は県立学校を対象としたものであり、調査結果をそのまま私立学校の状況に当てはめることはできない。

一方、部活動における指導者への権限集中や、生徒が相談しにくい環境をどう改善するかは、公立・私立を問わず検討すべき問題となっている。

編集部まとめ

新潟県教委の調査では、部活動で不適切な指導を経験した259人のうち、103人が誰にも相談していなかった。

相談した生徒についても、学校の先生より家族や友人を相談相手に選んだ割合が高かった。

柔道部の指導死を巡っては、元監督への懲戒免職に加え、学校管理職の管理監督責任も認められている。

県教委は複数顧問制の実質化や管理職への報告体制の整備を進める方針だが、制度を設けるだけでは不十分だ。

生徒が相談した際に適切な対応が取られるのか、不適切な指導を把握した教職員が問題を放置せず報告できるのか。

県が示した再発防止策を実際に学校現場で機能させ、その結果を検証できるかが、今後の重要な課題となる。

特記事項

本記事は、新潟県教育委員会の2026年10月23日付懲戒処分発表、部活動指導に関する実態調査結果、再発防止策の通知、同年10月29日の知事定例記者会見記録などに基づいて作成した。

11月3日の報道は、10月23日に公表された処分や調査結果を詳報したものであり、同日に新たな懲戒処分や調査結果が発表されたと確認されたわけではない。

259人は不適切な指導を受けたと回答した生徒数であり、県教委が259件の事案を個別認定したものではない。

相談先の割合は、誰かに相談した156人を母数とする複数回答の結果である。元監督の説明については県教委を通じて報じられた内容を使用している。

Q新潟県の調査で不適切な指導を経験した生徒は何人ですか?
A部活動経験者1万7251人のうち、259人が経験したと回答しました。回答者全体の1.5%に当たります。
Q誰にも相談しなかった生徒は何人ですか?
A不適切な指導を経験した259人のうち103人、39.8%です。相談しなかった理由には、相談する必要を感じなかった、改善につながらないと思ったなどの回答がありました。
Q学校の先生に相談した割合は何%ですか?
A誰かに相談した156人のうち30.8%です。家族は77.6%、友人は76.9%でした。
Q柔道部の指導死では誰が処分されましたか?
A当時の監督だった54歳の教諭が懲戒免職となりました。当時の校長には戒告相当、副校長と教頭には文書訓戒の措置が取られています。
Q11月3日時点で新たな対応は判明していますか?
A10月29日に知事が再発防止と私立学校への働きかけに言及しました。一方、県教委が10月23日以降に新たな処分や調査結果を発表したことは確認できていません。

週刊TAKAPI編集部/一条

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